第3話 王子様登場!
「カイルの姿も見えなくなりましたな。では、城へ戻――」
「私、もうちょっと探したい物があるの!」
セバスチャンの言葉をさえぎるように、早口で言った。
「ピャッ!?――っさ、サクラ様!?」
「ごめんね、セバスチャン。もうちょっとだけ付き合って?」
「つ、付き合ってと申されましても……」
「お願い! 私のが見つかったんだもん。姫様失踪の手掛かりだって、ここに落ちてるかも知れないし――」
「姫様の? 何故、姫様失踪の手掛かりが、神様のお側近くに……?」
「何故って、私が神様の奇跡が原因で、ここに来たとするなら、姫様だって、神様の奇跡で向こ――……っ、あ――」
……ヤバイ。
「姫様が、神様の奇跡で……? それはいったい――」
「あ、いやっ、そーじゃなくてっ! 今のはちょっと、口がすべっ――いや! そーでもなくてっ!」
うわわわわ……。
何言っちゃってんの私っ?
「まさか……。もしや姫様は、神様の奇跡によって……サクラ様のいらした世界に、行ってしまわれた……と?」
――って、なんでそんなに察しがいいのよ?
セバスチャンらしくないじゃない!
私はいよいよ焦って、どうにかしてごまかせないものかと、言葉を重ねた。
「いやいやっ、そうと決まったワケじゃないしっ! わっ、私が勝手に……ただなんとなく、そーなんじゃないかな~なんて、思っちゃっただけだしっ!」
「……姫様が……サクラ様の……。そしてサクラ様が……こちらに……」
「いや、だからっ!――ねえ、聞いてる? セバスチャンっ!」
「ピ……ピィイイイーーーッ!……どっ、ど、どどどっ、どぉおーーーしたらよいのだーーーッ!? ひっ、姫様が、姫様が姫様が姫様がぁああああーーーーーッ!」
……あぁ……。
セバスチャンが壊れちゃった……。
「お……落ち着いてセバスチャン! まだそうと決まったワケじゃないんだってば! 私の勝手な想像! 想像でしかないんだから、壊れないでーーーッ⁉」
あーもうっ!
どーして私はこう、うっかり者なのよーーーっ!?
確信持てるまでは、言うつもりなかったのに……。
確信持てるような物を探すために、わざわざここに来たってのに……。
……はぁ。
ホントにもう、どーしよー……。
まだパニクってるセバスチャンを横目に、私は大きなため息をついた。
すると、遠くから、どこかで聞いたことがあるような音が響いて来て……。
それがだんだん、だんだん……大きくなって……。
振り向いた私の目に、それはいきなり飛び込んで来た。
「ひゃあ…ッ!?」
私の視界を覆ったのは、大きな黒い影。
その影を避けようとした私は、思い切り横に跳び、地面に手をついて側転――しようとしたんだけど。
(――ダメ! この格好で側転なんかしたら……!)
一瞬の迷いが災いした。
私は体勢を崩し、そのまま横向きに倒れ込んだ。
「……ッ!」
……痛ったぁ……。
腕を、ちょこっと擦りむいちゃったみたい……。
「サクラ様っ!? サクラ様お怪我はっ!?」
セバスチャンが大慌てで寄って来て、おろおろと私を囲むように回り出す。
「お……落ち着いて、セバスチャン。ちょっと擦りむいただけ。大したことないから」
私は体を起こし、まずはセバスチャンを落ち着かせようと声を掛けた。
それからキッと上方を睨みつけ、
「ちょっとそこの人ッ! 真っ暗の中、いきなり背後から現れるなんてどーゆーつもりッ!? 危ないじゃない! しかも馬って……。あんまりびっくりして、転んじゃったでしょ! どーしてくれるのっ!?」
いきなり現れた黒い影。
それは、大きな黒い馬だった。
そして馬上には、当然、またがった誰かが――。
「何黙ってるのよ!? こーゆー場合、まず謝るのが、筋ってもんじゃないの!?」
馬から降りもせず、いつまでも頭上から見下ろしてる態度にも腹が立って、私はその誰かに向かって怒りをぶつけた。
それでもまだ、馬上の誰かは一言も発することなく、こちらをじっと見つめている様子だった。
あーもーっ!
さっさと降りて来て謝りなさいよ!
どこの誰だか知らないけどっ!
「――ッピ!?……あ……貴方様は、もしや……」
ひたすらムカついてる私の横で、突如、セバスチャンがわなわなと震え出した。
「……え? もしかしてこの人……セバスチャンの知り合い?」
だったらマズかったかな……あんな言い方しちゃって。
……で、でもっ。
セバスチャンの知り合いだろーと誰だろーと、どー考えたって、いきなり突っ込んで来た方が悪いんだしっ!
私、間違ったこと言ってない……よね?
内心ドキドキしていると、ようやく馬上の人が口を開いた。
「ああ、やはりセバスか。こんな時間に、こんな場所で……。いったい、どうしたというんだ?」
「そっ、それはこちらがお聞きしたいことでございます! このような時間に、このような場所で……供も連れずに、たったお一人でなどと……! まったくもって、前代未聞でございますぞ、ギルフォード様!?」
……え?
ぎる……、ぎるふぉー……ど?
「……ええっ!? この人がギルフォード王子ぃっ!?」
私は心底驚いて、大声を上げてしまった。
するとその人――ギルフォード王子は、馬からひらりと降り立って、
「久し振りだね、リア。こんな場所に君がいるなんて驚いたよ。こちらも、急なことで驚かせてしまったようで、すまなかったね」
ポカンとしている私の前に右手を差し出すと、申し訳なさそうに微笑した。




