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桜咲く国の姫君~神様の気まぐれで異世界に召された少女は王子と騎士見習いに溺愛される~  作者: 咲来青
第3章 ザックス王国ー森の城ー

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第12話 孤独な姫様

「カイルさん。あなた、家族はいる?」

「は?……は、はい。おりますが――」


「じゃあその、お父さんでもお母さんでも、お兄さんお姉さん弟さん妹さん、家族なら誰でもいいから、やっかいな病気にかかったってことにすれば、お見舞いとか看病とかって理由で、休暇取れるんじゃない?」


「休暇……ですか?」

「うん。ご家族を病人にしちゃうのは気が引けるだろうけど、この際、そこは我慢してもらって。……ダメ?」



 考えに考え抜いたにしては、あまりにもショボイ案だけど……。

 サラリーマンが会社ズル休みする時に、勝手に親戚を死んだことにして、ムリヤリ休暇取っちゃう……みたいな?


 ……しょ、しょーがないじゃない!

 他に何にも、思い浮かばなかったんだもん!



「ほっ、ほらっ、姫様って優しいんでしょ? だったら、カイルさんのご家族がご病気に……なんて話を聞いたら、『すぐ家に戻ってあげて』ってことになるんじゃない?……ねっ? ねっ? そーだよねっセバスチャン!?」


「ピッ!?」


 名指しで同意を求められたのが、意外だったんだろうか。

 セバスチャンは、焦ったように私とカイルさんを見比べてから、こくこくと頭を縦に振った。


「さ、さようでございますな! 姫様ならば、きっと、そのようにおっしゃると思います!」

「だよねっ?――うん、じゃあ、それで決まりっ! ご家族がご病気ってことで、休暇取っちゃってください!」


「……は、はぁ……。ですが、休暇願を出してましても、許可が下りるまでには、時間が――」


「そのようなものは、私が全て手配しておく! おまえは、急ぎ部屋に行き、数日分の旅支度をして参れ!」

「は、はいっ! 承知いたしました!」


 カイルさんは私達に向かって一礼すると、慌ただしく部屋を出て行った。


「……ねえ、セバスチャン。騎士見習いの人達も、この城に住んでるの?」


 城の周囲は森ばっかりで、ここへ来る途中にも、城以外には、建物らしき物は見なかった気がするから、それしかないだろうな……と思いつつ、一応訊ねてみる。


「はい。この城――と申しましても、城の敷地内という意味ですが」

「え?……それって……?」


「城門横に、騎士と騎士見習いが寄宿する場があるのですよ。……まあ、妻子のある者は、皆、城外に家を持っており、そこから城へ通っておる訳ですが……その者達は、本城勤めが主ですからな。ここにおる者達は、若いか、独り身の者が多いのです」

「本城……?」


「……おお! そうでしたそうでした。サクラ様には、説明をしておりませんでしたな。――実を申しますと、この城は本城ではないのです。国の中心にございますのが、本城でございまして。この城の全ては、姫様のためにあるようなものなのでございますよ」


「姫様の、ため……?」



 え……。それって、つまり……。

 この城は、姫様のための……姫様だけの城、ってこと!?



「ほぇえ~~~っ! 姫様って、やっぱり、すっごいんだねぇ……」



 あんまりびっくりして、変な声出ちゃった……。



 ……姫様のための城……か。


 この大きな城も、広い庭(と言うか敷地)も、たくさんのメイドさんや、騎士さんや騎士見習いさんも、あと、コックさんとか庭師さんとか、まだ見掛けてはいない、いろんな職業の人達がいて、姫様の生活をサポートしてるってワケかぁ……。



「でも、この城が姫様のためにあるんだとしたら、国王様は、本城の方に住んでるの?」

「はい。その通りでございます。姫様がお部屋から消えてしまわれたことを、書状でお伝えいたしましたところ、すぐにこちらの方へおいでくださったのです」


「そっか……。じゃあ、姫様のお母様も、そっちに住んでるんだ?」

「あ、いえ――。お(きさき)様は、姫様がお生まれになられてから間もなく、ご病気で……」


「え!?……そっか。そうだったんだ……。あ。じゃあ、兄弟は? お兄さんとかお姉さんとか」


「ご兄弟はいらっしゃいません。国王陛下は、お后様を大変深く愛しておられましたので、側室もお迎えにならず……」

「……そう……なんだ……」



 それじゃあ、姫様は寂しかったろうなぁ……。


 いくら、セバスチャンやカイルさん、アンナさんやエレンさん達がいてくれたって言っても、血の繋がった人が国王様だけ、なんて……。


 しかも、国王様は本城ってとこに住んでて、別々に生活してるんじゃなぁ……。



「本城ってとこに、姫様も住んじゃえばいいのに。国王様と離れて暮らしてるなんて、親子なのに不自然だよ」



 もう結婚してる――ってんなら別だけど。



「不自然……。そう、なのでございましょうが……」


 セバスチャンは返答に詰まり、うつむいてしまった。

 それからしばらく、言うか言うまいか迷ってるみたいに、視線をあちこちさまよわせていた。


「セバスチャン?……言いにくいことなら、無理に言わなくてもいいよ? べつに、姫様のこと、あれこれ詮索(せんさく)したいワケじゃないし」

「……いえ。サクラ様には、知っておいていただいた方が、良ろしいやも知れません」


 セバスチャンは、私を正面から見据えると、重い口を開いた。

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