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桜咲く国の姫君~神様の気まぐれで異世界に召された少女は王子と騎士見習いに溺愛される~  作者: 咲来青
第3章 ザックス王国ー森の城ー

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第2話 お着替えしましょ?

 衣装部屋には、メイドさんっぽい女の人が二人――五十歳くらいの人と、私とあまり変わらないんじゃないかと思えるくらい若い人――が立っていて、私を見ると、ゆっくりと一礼した。

 そして顔を上げ、


「おかえりなさいませ、姫様。ご無事で何よりでございました」


 年配の方のメイドさんがにっこり笑う。


「……あ、えーと……ただいま、です。心配掛けてごめんなさい」


 ぺこりと私も頭を下げると、二人はびっくりしたように目をまんまるくして、


「ひ、姫様!? おやめください、そんな――もったいのうございます」


 困ったように、二人で目配せし合っている。



 ……あれ? なんかまずかったかな?

 心配してくれてたみたいだから、素直に謝っただけなんだけど。



「姫様、この者達は姫様の身の回りのお世話をしております。年配の者がメイド頭のアンナ、隣がエレンでございます」

「……セバス様……?」


 今日初めて会うかのように紹介され、戸惑っているんだろう。

 二人は不思議そうに鳥さんを見た。



 ……ってか、今、『セバス様』って言わなかった?

 セバス……って、もしかして鳥さんの名前?



「鳥さん、セバス……って?」

「はい。私めの名でございます。セバスティアンとお呼びください、姫様」


「せ……セバス……? セバス……セバスチャン」

「セバス()()()ではございません、姫様。セバス()()()()でございます」


「セバスティアン……。いや、やっぱピンと来ないから、セバスチャンにしない?」

「ひ――っ、姫様……! 名を変えろとは、そんなご無体(むたい)な……」


 漫画にしたら、『ガビーン』とかって文字が横に出そう……。

 鳥さ――セバスチャンは、ショックを受けたように目をうるうるさせている。



 えー。やっぱ()()()()()()()ったら、()()()()()()だよねぇ?

 ティアンとチャンなんてそんな変わらないし、チャンのが呼びやすいし、いいと思うんだけどなぁ……。



「セバス様、姫様はもしや……どこか、お加減を悪くなさっているのですか?」


 私の様子が変だと気付いたのか、メイド頭のアンナさんが、不安げに顔を曇らせた。


「うむ……。それについては、後で詳しく説明するゆえ、今は姫様のお支度を急ぎ終わらせるように。――では姫様、私は外で控えております。後はこの者達に任せておけば、何ら問題ございませんので」

「あ――、うん。わかった。ありがとう」


 鳥さ――じゃなかった。セバスチャンは、一礼して部屋から出て行った。



 ……すごいな。

 あの翼で、ドアノブをどうやってつかんでるんだろう?


 ……不思議……。



「姫様、こちらにお着替え願います」


 ぼけーっと鳥――いや、セバスチャンを見送ってたら、メイド頭のアンナさんに声を掛けられて。


「あ……はい。えっと……これに着替えればいいんですね?」


 服を受け取ろうと手を伸ばしたら、横で大人しく控えていたエレンさんが、いきなり私の服に手を掛け、


「姫様、こちらのドレスは……あの、珍しい形でございますね。……それに、その……何と申しますか、おみ足が……」


 何故か、顔を赤らめながら訊いて来た。


「へ?……ああ、スカートの丈が短いってこと?」



 最初は、どうして顔を赤らめる必要があるんだろう?――って不思議だったんだけど、考えてみれば、お姫様は、あんまりこーゆーのは着ないよね。


 ……ん?

 姫様どころか、この世界の人達、みんな着ないか……。



「姫様、お可哀そうに……。そのような、はしたない格好をさせられて……。いったい、何があったのでございますか? セバス様の前では、言いにくいこともおありだろうと黙っておりましたが……。どうかこのアンナに、全てお話しくださいませ!」


 いきなり何を勘違いしたのか、アンナさんがうっすら涙を浮かべながら、私に詰め寄って来た。


「え、はしたない格好?……これが?……この程度で?」


「この程度!? 何をおっしゃいます、姫様!? 姫様ともあろうお方が、このように肌をお(さら)しになって外をお歩きになられるなど……前代未聞(ぜんだいみもん)でございますよ!? さあ、お早く! そのはしたないお召し物を、お脱ぎあそばしませ!――エレン!」

「は、はいっ」


「えっ?――っちょ、ちょっとちょっと、何を――!?」


 二人は寄ってたかって、私の制服を脱がせようとして来る。

 私は自分を抱き締めるようにして体を丸め、手伝おうとする彼女達の手を(こば)んだ。


「ちょっ、やめ……っ! 着替えなんて一人で出来るからっ!」

「何をおっしゃいます? 姫様のお着替えは、エレンの仕事でございますよ? 今までずっと、そうして来たではございませんか」


「それは――っ、そーなのかも知れない、けどっ!……でももう、これからは大丈夫だからっ!」


 私は二人の手からどうにか逃れ、アンナさんからドレスを奪い取った。


「着替えは一人でします! 今、そう決めました! だから二人は、着替えるまで外に出ててっ?」


 きっぱりと宣言した私に、それでもアンナさんは、『これが私達の仕事でございます』だの、『セバス様にお叱りを受けます』などと訴えて来たけど、セバスチャンには後で私から説明しておくから――と説得し、ようやく部屋から出て行ってもらえた。


 お姫様にとっては日常的なことでも、私にとっては未知のことだ。



 人に着替えさせてもらうなんて、恥ずかし過ぎるってば!

 誰が何と言おうと、これだけは、断固拒否してやるんだからっ!



 そんなことを思いながら、私は制服を脱ぎ捨てた。そしてブラに手を掛けた時、ふと、疑問が頭をかすめた。



 そう言えば……この世界に『ブラジャー』なんてものは、存在するんだろうか?

 存在しないとしたら、このブラ、どーしたらいーんだろう?



 これから着替える服を広げて、確認してみる。


 お姫様ってゆーから、レースやリボンがこれでもか!――ってくらい付いてるような、ひらひらふわふわしたドレスを想像してたんだけど……思ったよりシンプルだった。


 レースやリボンは、胸元にちょこっと付いてる程度。袖は上の方が(ふく)らんでて、あとは袖口まで細くなってる。腕にぴったり沿()う感じかな?

 丈は結構長め。くるぶし辺りまではありそう。


 簡単に言えば、ちょっと飾りのついた、長めのワンピース。

 このくらいなら、まあ……着るのに抵抗はないけど、でも……ブラは外せそうにないな……。



 ……仕方ない。この世界の下着のことは、あとでアンナさんかエレンさんに訊くとして。

 今は、自分のつけてる下着のまま、着ちゃうしかないみたい。


 外でセバスチャンもアンナさん達も待ってることだし、悩んでる暇はないよね。


 私は慌てて『姫様のドレス』に着替え、その場でくるりと回ってみた。

 ……へえ? 思ったより動きやすい。


 よーっし!

 これでようやく、国王様とやらに会いに行ける。



 私は大きく深呼吸してから、衣装部屋のドアを開けた。

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