【第10話】試練の向こうで
「それでは、再レベル分けを始めましょう」
別室では零とトレーナー陣が審査を始めようとしていた。
「誰が最初に出てきますかね?」
「まぁ、Fクラスは二極化してたからな」
「皆さんはFクラスの有望株は誰だと思いますか」
「私は――」
「……出てきた」
JINの一言で、全員がモニターへ視線を向けた。
画面にはトップバッターとして白琉がステージに向かう姿が映し出されていた。
「……彼ですか」
「零はレベル分け審査と振り入れしか見てないからあれだけど、とっても良くなったのよ」
「ふーん」
白琉のパフォーマンスを見ながら、トレーナー陣は評価をし始める。
「だいぶ成長したわね」
「ダンスはいいけど、歌はね……」
「まだ粗いが、魅力はあるな」
「だが実力はCクラスだな」
「でも成長速度を考えるとSでもいいのでは」
「……いったん保留で」
そう提案した零の視線の先には、笑顔の白琉と、白琉を見つめている璃桜の姿があった。
Fクラスのパフォーマンスが次々と披露されていく。
半数ほど見終わったところで、LUNAが口を開いた。
「努力した子と、ふてくされた子の差がすさまじいわね」
「ほんとにな」
「……練習すらまじめにやってない者もいた」
「JINさんの時もですか?私が担当したときも、私が入るまでずっと座っていた子が多かったわ」
「こりゃ半数以上はFクラスのままだな」
「……アイドルとしての心構えがなっていない」
零も眉をひそめながらモニターを見つめる。
その後も次々とパフォーマンスが進んでいった。
「あまりぱっとしませんね」
「少し疲れてきますね」
「FクラスもCクラスも努力の差が出ましたね」
「……基礎が固まっていないからな。努力量がそのまま結果に出てる」
「なるほど。だから差が大きく見えるのか」
「松田さんが惹かれる子はいましたか」
「今のところは白琉ですかね」
「彼の目はいい目をしてました」
「確かに」
「零さんはいましたか」
「……まだです」
「そろそろ昼食のようです」
「私たちもお弁当をいただきましょうか」
そして――審査が再開された。
Sクラスのパフォーマンスから始まる。
最初に出てきたのは光輝だった。
「あぁ、あいつか」
「練習でも余裕がなさそうだったが、今の顔を見るとさらにだな……」
「追い詰められてるな」
「レッスン中も直した方がいいと言っても直さないのよねぇ」
「あ、始まりそうです」
視線がモニターに集中する。
「基礎はできてるのよねぇ」
「だが曲を理解できてない」
「見てるこっちまで苦しくなってくる」
「多分、今この子の中には楽しむ感情はないわ」
「殻が剥ければ、よくなりそうな気もするが」
「でも失敗して止まるようだと落とすしかないわね」
「問題はどこまで落とすかだ」
「FクラスかCクラスか」
「途中までは間違いもなかったしCでは」
「でも曲の理解は足りてなかった」
「零さんはどう思います?」
「私はアイドルとしては足りてなさすぎると思います」
「Fでは」
「でも、Cクラスに振り分けた中にもっとできてない子たちもいるのよねぇ」
「多数決を取りましょうか」
そしてトレーナー陣と零含めて6人で多数決を取った。
その結果2人対4人でCクラスになった。
「これで、吹っ切れて彼がさらに伸びてくれれば」
「もともと基礎はできてるし」
光輝のことを話しているとモニターからパンっという音が響いた。
パッと振り返ってモニターを見ると頬を赤くした晴希がステージに上がってきた。
「今の音……晴希か?」
「レベル分け審査の時はまだまだだったな」
「でも、レッスンでだいぶ良くなってきたのよね」
「そろそろ始まるぞ」
モニターでは晴希が片手をあげて合図を出していた。
「……変わったな」
「そうですね、以前よりいろいろ考えてますね」
「ただ、ダンスは引き込まれるものがありますが、歌が……」
「このくらいなら教えればもっとうまくなる」
「見てみろ、他の奴らの顔を」
「一緒になって楽しんでるだろう」
「いったん晴希はGクラス候補にしておこう」
「次は緋凪か」
「Sクラスでは晴希と緋凪の2人が別格でしたね」
レッスンでの印象を話しているとパフォーマンスが始まる。
「歌もダンスももっとよくできそうだが目を惹くな」
「アイドルには大事だな」
「こいつも候補に入れておこう」
「Sクラス最後ね」
「出てないのは翠か」
「翠は危機感が薄いのよね」
「実力はそんなにないんだよな」
トレーナー陣が話していると翠がステージに向かってくる。
「ただ、天性のアイドルだな」
「えぇ、魅せ方をわかっている」
そしてステージが始まった。
「もう少し実力が付けば完璧なんだけどな」
「……練習はどうなんです?」
「やってはいるんだけどさっきの晴希や緋凪みたいな必死さはない」
「なんか必死ではあると思うんですけど、すでにあきらめがあるようにも感じられるんですよね」
「惜しいな」
「実力はCクラスだがアイドルとしてはSクラスなんだよな」
「また多数決を取りましょう」
再び多数決が行われた。
結果は1人対5人によりSクラスになった。
「ただ、結果を伝えるときギリギリだったと発破をかけろ」
「それで死ぬ気になって努力しなければそれまでの器ってことだ」
「そうですね」
「自覚させた方がいいでしょう」
「やっとGクラスね」
「レッスンの時もよかったから楽しみだわ」
「最初は碧斗のようね」
「唯一私の感想を聞きに来た子ですね」
「私のとこにも個人レッスンを受けに来たのよ」
「やる気があるのはいいことだわ」
そして曲がかかった。
「やっぱり安定感があるわね」
「ダンスもよくなってきた」
「まだ完全ではないけど、アドバイスも形にし始めてるわ」
「碧斗はGクラス維持で決定に異論はあるか」
誰も口を開かない。
「文句なしね」
「碧斗はGクラスで」
和やかに進んでたのと一転して、次にステージに上がった北尾がパフォーマンスを始めると皆の顔が険しくなった。
「彼はダメね」
「自分しか見えてないな」
「笑顔もなくなってる」
「スランプに入ったか」
「自分でも反応が違うことに気づいてるようだな」
「Gクラスは厳しいな」
「そうね」
「この後のMV撮影で一番前は荷が重いわ」
「Sクラスだな」
「……次は斎藤か」
「葵はそつないのよね」
「彼が蓮と悠太二人と一緒に練習してたのも見たわ」
「グループには縁の下の力持ちも必要ですしね」
そして葵はすぐにステージを始める。
「安定感があるな」
「変な癖がないからフラットに見れる」
「……実力は十分だな」
「あぁ、Gクラスだな」
「残り二人か」
「先に西ヶ谷が行くようだな」
「余裕はなさそうね」
トレーナー陣が心配そうに見ている中パフォーマンスが始まった。
「今のところはいいな」
「歌もダンスもバランスがいいな」
その時、西ヶ谷がミスをし顔色が変わったのがモニター越しにも分かった。
「頑張って立て直せれば」
「いや、無理だな」
「顔に余裕がない」
「ただ、踊り切ったのは良かった」
「テクニックはあったし、途中まではよかった」
「Sクラス……か」
「そうですね」
「実力はありますし」
「とうとう最後か」
「璃桜の実力はいうことなしだから、安心して楽しめるわ」
そして璃桜の合図が出た。
「……すごいわね」
「レッスンの時より引力が強くなってる」
「まだ気持ちまでは伝わってこないけど、世界観は伝わってくるようになった」
「技術に関してはいうことなしだね」
「でも以前より感情が豊かになった気がするわ」
「文句なしでGクラスね」
「緋凪と晴希はGクラスに昇格ということで大丈夫ですか」
「そうだな」
「そして保留にしてた白琉はどうしますか」
「Sクラスでいい気がする」
「成功体験を積ませた方が伸びると思うわ」
「実力もSクラスからはるかに劣ってるわけでもないし」
「じゃあ白琉はSクラスということで」
練習生たちだけでなくトレーナ陣や零にとっても長い一日が終わった。




