第9話 天界力と神器
フィリアから思いもよらないことを聞いてしまった。
俺はびっくりして、フィリアにもう一度確認する。
「天界力の練り方がわからない?」
「出来ないわよ、そんなの。だって先生から習って無いもん!」
もん……じゃねーよ。
え、もしかしてコイツ、天界力を練らずに、今まで神器発動させてたのか?
ば、ば、バカなのか?意味ねーだろ、それ!
通りでフィリアの神器を、天界力上げてない生身でくらっても、体がバラバラにならないわけだ。
「それじゃ、ただの強い雨水だろうが。神器ってレベルじゃねーぞ」
「えっ、そうなの?」
本当に知らないのか。天界の常識ってどうなってるんだ?
俺は自分が知ってる『天界力』と『神器』について、フィリアに話すことにした。
まず先に話すべきは、天界力の方だろう。
天界力というのは、天使がみんな持ってる能力で、上げれば上げるほど基本的には強くなって行くものだ。
さっき戦ったシラサギ村のヤツらも、この天界力を使って身体能力を向上させてたんだ。
身体能力を上げる以外にも使い方はあるらしいが、戦闘するなら基本的にはこの使い方をする。
というか、これが天使の中では初歩中の初歩だと思ってだぞ。
ボンゴ村のヤツらもみんな使えるしな。
やっぱ天国にいると教えられることも違うのだろうか?
次に神器の話だ。
神器とは、神から与えられた、選ばれた者だけが使える、特殊能力のことである。
俺のように何も無いところから装備を出現させたり、フィリアのように雨の魔法を生み出したりするのが神器だ。
神器持ちは絶大な力を持つ。
フィリアがちゃんと使いこなせていれば、ただの猪なんて、追い払うどころか、肉も残らず消し飛んでるはずだ。
天界力も、神器も、自分の力を向上するためのものではあるが、大まかに言えば違う点が2つある。
1つは羽を展開する必要があるかどうか。
天界力を使うだけであれば羽を開かなくても大丈夫なのだが、神器を使う際だけは羽を展開する必要があるのだ。
特に羽を出すからどうというのは無いと思う。
ただ、羽を展開しないと神器は発動できない、というのが決まっていることなだけ。
理由は特に知らないけど、決まりだからしょうがないのだ。
もう1つの違いは系統と属性について。
羽を展開するしないの違いより、こっちの方がかなり違いがあると思う。
天界力に属性というものはない。強いて言うのであれば、無属性とは言えるのかな。
系統もほとんどが身体強化で、たまに治癒などができる人もいるってのは母さんから聞いたことがあるぐらい。
逆に神器は様々な系統、属性に別れている。
系統は俺のような装備型、フィリアのような攻撃魔法型、あとは付与魔術型や従魔召喚型など。
神器を持つ人の数だけ多種多様に存在する。
属性は天使であれば雨、雷、風、光の4種類が基本形で存在する。
また、悪魔であれば火、土、水、闇の4種類が基本形だ。
悪魔の使う『魔界力』や基本形でない属性、あとは雨と水という類似した属性があることについても詳しく教えてやりたかったが、これはまたいつか暇な時に教えてやろう。
それよりもフィリアには早く、天界力と神器の関係について、教えてやる必要があると思ったのだ。
また襲撃されても、神器の使い方を知っていれば、もし俺が居ない状況になったとしても大丈夫だろ。
「お前さ。神器出す時って、どうやって出してるんだ?」
俺は神器と天界力の関係について話す前に、フィリアが神器を出せる理由を聞いておきたかった。
「どうやってって、どういう意味よ?」
「どういうって。なんか、力入れたらーとか、頭で想像したらー、とかあるだろ?」
「うーん……ほい」
フィリアは何の説明も無く羽を展開。
手のひらに水の塊を生成する。
……いや、だからどうやってんだよ。
ほいって出されても、どうやってるかなんてわからねーよ。
「やっぱ何にも考えてねーのか?」
「考えてる……とは思うけど。出るものは出るんだからしょーがないじゃない!」
フィリアは自分がやってることを説明するなんて無理だと宣言。
仕方ないのでとりあえず、俺の知ってる神器の使い方を基礎からレクチャーすることにする。
「えっとな、フィリア。天界力を練って力を高める。その上に神器を掛け合わせるから、神器使いは神器を持たない人より強い力を出せるんだぞ」
「先生から聞いたことないわよ、そんなの」
「先生ってのは学校のか?」
「学校なんて行くわけ無いでしょ。王女だって、私。アデルってやっぱバカなの?」
バカはテメーだよ。先生に何習ってんだよ。
俺よりもフィリアの方が常識無いのか?
天界力無しで神器を発動させるなんて、聞いたこと無いし、その先生ってのに注意されなかったのか?
もしかしたら、王女ってのは甘やかされて育てられてるのかもしれない。
ただ神器を発動しただけで、すごーいとか言われてるのかもな。
どれ、俺がお手本を見せてやるか。
「よし、わかった。見てろよ、これが天界力を練った、本物の神器の力だ!」
天界力を練り、そして神器『矛盾』を発動。
俺は右拳を思い切り握りしめ、目の前の大木に向けて、放つ!
しかし、これが大失敗だと気づいたのは打ち終わった後だった。
目の前にある大木1本を倒すつもりが、加減がわからなくて、俺の想像を遥かに超えた、凄まじい威力を出してしまった。
目の前に広がる森の木々は、一直線にバタバタと薙ぎ倒されていく。
「アデルってやっぱりバカ!こんな目立つことして。他に追っ手がいたらどうするのよ!」
「悪い、考えてなかった」
俺はフィリアを抱え、急いでその場から離れることになった。
これは言い返す余地ないな、トホホ。
はじめましてゴシといいます。
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