その仲間は頼りになるかもしれないし、ならないかもしれない
MHWにアルバトリオン?オイオイオイ、死ぬわ俺。早く日本に戻りた過ぎて爆発四散して死ぬわ。
「私、黄色なんです。だから、この森のボスが倒せなくて。レベルをあげたくても、ここのモンスターは緑ばっかりで……。でも、森の外だと経験値が全然もらえないし……」
隠れるように被ったローブのフードからチラチラとこちらを窺うように事情を話し出す『あんず』。小動物的といおうか全体的にちんまいので、成人男性の平均身長くらいはある俺と並ぶと犯罪臭がヤバい。
アバターだから大丈夫と心で唱えながら聞いてみた感じだと、彼女は俺と同じ状況に陥ってしまっているらしい。赤使いが青で止まるなら黄色使いは緑、つまりこの森で止まるのが道理。しかも黄使いがレベリングをするための狩場がよりによってここを越えた先にあるとは、ご愁傷さまとしか言いようがないな。
トレント討伐を手伝う。それはまあいい。なにせ今やってることがまさにトレント狩りだし、同じ苦境に立たされている身としては手を差し伸べてあげたいと思う。黄色使いなら直接の攻撃が通らなくてもバフがあるから俺にメリットがないわけでもない。
でも、だ。
「……ひとつ。なんで、俺なんだ?」
その辺をちょいと探せば他に赤使いはゴロゴロいるし、既に複数人がいるパーティに入れてもらえばレベリングはより捗るはず。ぶつくさ言いながらひたすらトレントを燃やし続ける俺を、わざわざ戦いが終わるのを待ってまで選ぶ理由があるのか?
理由を聞けたらそれでいい。本当にそうだというのなら、なんとなくでも構わない。直感は大事だからな。なんとなくだって立派な理由さ。
「私ビビりで、人がたくさんいるパーティは苦手なんです。それに、アカシンさんは赤使いだから、この森を越えても次の町まで大変かなって……」
そういうことか。すでに複数人いるパーティは人見知りで怖いし、助けてもらってもその恩に自分が返せるものがない。だから、次のエリアで詰まってそうな赤使いのソロプレイヤーである俺に目をつけたってわけだな。
「……ご迷惑、ですか?」
迷惑か迷惑じゃないかの二択なら間違いなく迷惑だ。初対面の人と連携を取りながら戦うのは他のプレイヤーならいざ知れず、俺にとっては半端ない負担になる。
だけど遠回しな言い方ではあるものの、あんずは『黄色使いとして次の町までの道をひらく』という俺へのメリットも提示している。自分がどれだけ困っていてもギブ&テイクを守ろうとする心がけは好ましい。
それに人見知りで多人数が怖いというのにはシンパシーを感じるし、妹がいる兄としても困っている年下の女の子には弱い。ウチの場合は妹の方が兄よりしっかりしているけどね。
「今のレベルは?黄系統は何画使える?」
「え?……あ、レベルは13です。黄は、ちょっと前に二画使えるようになりました」
俺がこの森に入ってきた時が12だっけか。森までの道中も白黒系統と緑系統のモンスターが中心だったことを考えると、できる限りのレベリングをしてきたのは間違いない。ちゃんと自分なりに頑張ってきたんだろう、やっぱり寄生目的で近づいてきたわけじゃなさそうだ。
「レベル16までトレントを狩って、ここのボスを倒す。パーティは次の町まで。それでいいか」
がんばれ俺、超がんばれ。誰の紹介でもない完全な赤の他人と顔を合わせて喋るのは誰以来だろうか。思い返せば、いつだって俺は友達や家族に守られてきていたんだな。ありがとうマイフレンズ、ありがとうマイファミリー。
若干カタコトなこちらの提案を受け入れてくれたのか、おどおどと様子を窺っていたあんずの顔がぱぁっと晴れた。フードの影で良く見えなかったけど、やはりというべきか顔立ちも体格相当の幼さ。ゲームの中じゃなければ話しかけただけで事案になりそうだ。
「ありがとうございます!やった、これで先に進めるよぅ。がんばって話しかけてよかったぁ……!」
喜んでくれるのはいいけど、この子と一緒にパーティを組んでいるところは妹には見せられない。グーパンならまだマシだけど、下手をするとリアルで近寄ってくれなくなるぞ。
さっさとあんずのレベルを上げて次の町まで行くのが上策だな。それじゃパーティ登録して……登録って、どうやるんだ?
「パーティ登録の仕方、知ってる?」
「えっ。えーっと、多分インターフェースの……ここかな?ちがった、こっちかな?……ごめんなさい、わかりませぇん……」
インターフェースをいじくるものの、見つけられずに半泣きになりながら謝るあんず。薄々気づいてたけど、君もパーティを組んだ経験がないソロプレイヤーだな?類は友を呼ぶとはこのことか。
まあ安心しろ、この程度は歴戦のゲーマーである俺にかかれば朝飯前よ。ちゃっちゃと見つけてトレント焼こうぜ?
「こういうのは多分……んん?えーっと、んーっと……あーはいはいなるほどね、完全に理解したわ。……よし、ディグリに戻って協会の人に聞こう」
「……はい」
思い返せば俺自身のトレント討伐クエスト終わってるし、ここで時間を無駄遣いするより町に戻った方が効率的だよな。……だからそんな悲しそうな目で俺を見るなぁ!他のゲームでパーティを組む時は、そういうのだいたい青とかきーちゃんにやってもらってたんだよ!俺はメッセージウィンドウのYESを押すだけだったんだよぉ!!
そんなわけで町に戻り諸々の手続きを終わらせ、無事にあんずとパーティ登録をして森へととんぼ返り。ありがとうヘルプ係のNPCお兄さん、協会に寄る度に誰も話しかけてなくて暇そうだなとか思っててスンマセンした。あなたのような縁の下の力持ちが世界を支えてくれてるんだなって……。
「いっぱい出てきたな、やろうか」
「ひゃいっ!がんばりますっ!」
何度も何度も討伐を繰り返したおかげで、トレントが出やすい場所などとうの昔に把握している。自分の攻撃が通らないあんずにとってトレントがぞろぞろ現れるのは地獄絵図だが、俺からしたらカモがネギしょってドリンク飲み放題付きでやってきたようにしか見えない。
俺が一人で倒すだけで経験値の半分と同じ量が入るから、極端な話あんずは死なないように逃げているだけでいい。だけど本人から役に立てなくてもできる限り戦いたいという意思表明を貰った以上はそれを尊重する。
俺はそういうのが大好きだし、黄色魔法も見れるとあっては断る必要がない。それに戦闘にきちんと参加すれば貰える経験値の量が増えるらしいので、レベリングとしても効率がいい。
「そ、それじゃあ……これでよし、【二画魔法:稲妻走り】!」
あんずが自分のふくらはぎにそれぞれ一本ずつ縦線を描くと、この間デスブラで見たボルトレイダーのように電気のオーラが両脚を包みこんだ。はぁーん、そういう書き方もあるんだ。今度暇な時にでも体中に線を描いてみるか、なんか新しい魔法を見つけられるかも。
「いきます、えーい!」
ヒュンッ!と小気味のいい風切り音を立てて疾走するあんず。どう考えてもレベルに見合わないそのスピード……さっきの魔法は速度上昇のバフか。
すごいな、この魔法があれば速度任せの回避無双で相性不利くらいゴリ押せるぞ、全部回避して敵が死ぬまで殴る戦法の見せどころじゃん。
「カラーズリン……きゃうんっ!?」
攻撃は白黒でやろうとしたのか、カラーズリングを展開しようと左手をかざしたところで盛大にあんずがすっ転んだ。HP的なダメージはないんだろうが痛いものは痛いし、あれだけ派手にやらかせば痛みよりも恥ずかしさの方が辛い。
しかも勢いがついてせいでゴロゴロと転がり、目を回しながら止まった場所はトレントのほぼ真ん前。おいマジかよ、ギャグマンガみたいなことするね。今から立ち上がって木人パンチを避け切るのは無理か。
「一人でやれない理由が分かったわ……【一画魔法:フレイムアロー】」
まな板の上の鯉状態のあんずを助けるため、炎の矢が飛んでいく。着弾点はもちろんあんずに一番近いトレント。飛び道具で顔面狙いできるほど慣れていないから胴体狙いだけど、怯ませるならこれで十分。
フレイムアローが作った隙にあんずが復帰。バフが切れたのか普通の駆け足で足元に注意しながら、見ているこっちがいたたまれないほどに情けない表情を浮かべて戻ってきた。
「うぅ……すいません、アカシンさん……」
「……どんまい」
森に入る前の広く開けた草原地帯ならともかく、木々が生い茂る森の中をあのスピードで全力疾走したらそりゃ根っこなりなんなりに躓くわな。どれだけ高性能な素早さのバフ魔法でも、さすがに地面を平坦な道に変えることはできない。
属性の相性だけでなくフィールドすら牙を剥いているようではせっかくの高い機動力も宝の持ち腐れだ。毎回これでは困るし、あんずがバフかけて殴るのは封印安定かな。
「黄色のすごさは分かった、適材適所でいこう」
そのためにパーティを組んだんだし、とりあえずここは俺に任せんしゃい。トレント焼却検定一級の力を見せてやろうではないか。
次のエリアに行けば俺とあんずの関係は逆になる。その時は大いに頼らせてもらうから、今は俺の後ろにいるといい。チクチクと遠距離魔法で敵に茶々いれてくれたら最高だ。
「それじゃあ、ちょいと森を明るくしようか」
お徳用のデカい松明がひぃふぅみぃ……赤使いの見せ場だな。
障害物の多いところで全力疾走してはいけない(戒め)
ちなみに老緑の深き森のクリア適正レベルは赤使いで15くらいですね。




