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第十六章 冬子

第十六章 冬子


「こんこんちきちーこんにちはー。」

「おっ、木村、タイミングがいいというか悪いというか、今日めでたく新入部員を新しく迎えることになったぞ!これで1回生が4人だ!」

「くーさのー、それは本当だろうな?僕様の御眼鏡様にかなう人材なのか?」

「お前の意見は関係ない。今朝、突然に部室に来てくれて、さっき部の説明を終えたところだ。ちょうど今ここにいる部員の自己紹介も済んだ。」

「それで、その期待の新人君はどこにいるのかな?」

「だからちょうどタイミングが悪いんだよ。なんか電話がかかってきたみたいで出ていっちゃったから、もうすぐ帰ってくるんじゃないかな?」

「僕様を待たせるとはいい度胸だ。これは宣戦布告と受け取っていいのか?やってやろうじゃないかね!」

「まあ待て。新入生はなんと偶然にもというか、不幸にもお前と同じ木村さんだ。」

「なんだと!?この僕様と同じお名前を名乗るとはフトドキな!成敗してくれるわっ!」

その時、ちょうど新入生の木村さんが戻ってきた。

「私のことを成敗するの?それは頼もしいね、お兄ちゃん。」

ん?今、お兄ちゃんって言った?それってどんなお兄ちゃんですか?ちょっとそこのお兄さん的なお兄ちゃんですか?

「ふ、ふふふふ冬子さん?どうしてこんなところにいらっしゃるんですか?ところであなたはどちら様ですか?」

「今自分で言ったじゃない。冬子だよ、お兄ちゃん。今朝方振りだね。どうしてって、もちろん入部するためだよ?」

「そうじゃなくて、冬子さんは名門私立女子大学にご進学されたと佳代子さんから聞いていましたが?」

「うん、最初はその予定だったよ。そのつもりだったんだけど、どうしてもお兄ちゃんが心配で、お母さんにお願いしてこの学校に変えたの。ちゃんと4月から講義を受けてるんだよ?お母さんから聞いてないの?」

「存じ上げておりませんでした。そしてなぜこの部なんですか冬子さん。」

「お兄ちゃん、そろそろ止めてよ、その”さん”付けで呼ぶの。もしかして照れてるの?突然妹が追っかけてきてくれて嬉しい?」

「僕様、じゃなくて、僕は妹に心配されるような覚えがないのですけど。むしろ冬子が心配だからお母さんが女子大に入れようとしていたのに。」

「だって大学生になってからのお兄ちゃん、ちょっと変だよ。言葉遣いも少し変わったし、毎日楽しそうだからいいけど、そもそもなんでこの学校に決めたのかわかんないよ。お兄ちゃんは国立大学に進学するとばかり思ってたのに。」

木村が以前に言っていたことは本当だったのか?国公立にいけるがあえてこの学校を選んでやった、確かそう言っていた。それにしても木村に妹が、いや、まともな妹がいたなんて想像していなかった。家族全員がザ・木村タイムを使いこなせると勝手に思っていた。話の流れからして僕たちの知ってる木村は家庭内での木村とは違うようだ。ちょっと面白くなってきたので静観してみよう。

「それは僕様、じゃなくて、僕の学力が及ばなかっただけのことですよ。そんなことのためにこの学校に進学したのか?お母さんが悲しむぞ?」

「お母さんを悲しませてるのはお兄ちゃんだよ!国立大学に進学すれば家計も助かるって言ってたのに、それを急に私立大に変えるし、おかげで冬子まで予定を変更することになったんだよ?お母さんが心配してるのは冬子じゃなくてお兄ちゃんだよ。冬子は期待されてないんだよ。だからお兄ちゃんはちゃんとしたところに就職してお母さんを安心させてあげてほしいの。」

おお、なんだか話がヘビーになってきた。そろそろ介入すべきか?おっと、木村を見ると無言のSOS的視線を感じる。目を合わせないようにしよう。

「さ、お兄ちゃん、ここまで妹が来たんだから、この大学に入った理由とこれからの進路について聞かせてね?もし、もしもだよ?言えないんだったらお兄ちゃんのお金で生命保険に入っておいてね。」

さらっとなんてこと言うんだこの子は。それってどんな前提で加入する保険か知ってるよね?

「ふ、冬子、ちょっと待ってくれ、こんな場所じゃなんだし、とりあえず今日うちに帰ってからじっくりと話そうじゃないか。な?いいだろ?」

「うん、約束だからね?冬子の部屋にする?それとも冬子がお兄ちゃんの部屋に行こうかな?楽しみにしてるね。」

そう言って今度は僕たちに方にくるっと向き直ると、ツインテールが良く似合う可愛い女の子はとても愛らしい笑顔を向けてくれた。

「木村冬子です。これからよろしくお願いします。」

丁寧にお辞儀をするこの可愛らしい女の子が木村の妹であるという現実は、とてもじゃないが僕の脳でが理解出来なかった。他の部員を見てもおそらく僕と同じ感想を持っているものと思われる。誰も口を開くことができなかった。


今日は挨拶だけ、と言って先に冬子ちゃんが帰ったあと、やっと部室内の時間が動き出したようだ。

「ひどいよひどいよひどいよ!君たちは僕様が窮地に追いやられているのを黙認したんだ!いや、むしろ楽しんで傍観してたんだ!僕様が君たちのピンチを何度救ってやったか忘れたのか!地球だって2度救ってやった救世主メシア様だぞ!」

「いや、助けられた覚えはまったくないし、何よりあの空気を打破する技を持ってる超人はこの部にはいない。」

「かばえよ僕様を!何か言うことがあるだろう?”こいつは悪くないんだ”、的な三流ドラマチックな台詞!それで冬子の矛先が僕様から逸れるんだよ!」

「お前最低だ。だいたいお前の妹だろう!?自分の身内の問題くらい自分で片を付けろ。そして聞いてる感じでは木村くん、君は家の中ではいい子ちゃんを演じているんですね?そして大学で本当の自分をさらけ出してうっぷんを晴らしてるってわけだ?僕たちがそれに巻き込まれてるってことだよね?この草野様の推理が間違ってるかな?」

はっはっはっ、初めて優位に立った気分だ。なんて清々しい。もう少し苛めてやりたいがさすがに可哀相だから許してやるか。

「ち、ちちち、ちがわいっ!?僕様は家の中でも僕様だいっ!僕様の宇宙はどこにでも存在するんだいっ!」

「ほほぅ、では今日の冬子ちゃんに対するあの慌てようはなんだい?説明してみたまへ。」

「草野くん、もうそれくらいで許してあげようよ。木村くんもかなりテンパってるし。」

「おぉ、夏樹よ、お前には感謝しないとな。敬意を表して僕様の愛人4号に任命してやろうではないか。」

「草野くん、徹底的に追い詰めましょう。社会のために現世での居場所を根こそぎ奪ってしまおうよ。」

「ああ!冗談です冗談、ごめんなさい夏樹様。僕様これからどうしたらいいのでしょうか。まさか冬子がこの大学にいて、この部に入ってくるとは。神は僕様にこのような残酷な試練をお与え賜ったのにはきっとわけがおありなのでしょうね。はっ!?まさかこれは夢!?夢オチ?なんだ、おい草野、僕様を殴って早くこの悪夢から脱出させてくだされ。おぶぇっ!イタイよ草野。」

「現実逃避するな。何が問題なんだ?いい機会じゃないか。妹にお前の本性を見てもらえよ。もう大人なんだから、一個人として見てくれるだろ?」

クックックッ、愉快愉快、止められませんよ。木村をからかうのがこんなに楽しいとは。

「草野、貴様は冬子を知らんからそんなことが言えるのだ。僕様が言うのはなんだが、この世で僕様が敵に回したくないのは冬子ただ一人。冬子を敵に回すくらいなら冬子を守って世界と戦ってやる!」

「なんだかカッコいいじゃないか、このシスコン野郎。」

「ちがーう、そんなんじゃないんだってぇ。確かにハンサムな僕様と同じDNAを持っているだけあって冬子は可愛いけど、って草野、お前まさか・・・」

「狙ってねぇよ。なんでそうなるんだよ。」

「そうだよな。草野はずっとなつ」

「おいっ!木村くん!冬子ちゃんが戻ってきたんじゃないのか!」

「マジっすか!?夏樹っ!そのロングスカートの内部シェルターに僕様を匿ってくれっ!」

「きゃあああああああああああああああ!」

「冗談だ木村。いっぺん死ぬか、ここで今すぐ。それともこの現実を冬子ちゃんに報告してやろうか?」

「あああああああああああああああああああああ!草野様、それだけはご勘弁をぉ。夏樹よぉ、僕様、これからどうやって生きていけばいいの?」

「いっそ死ねば?」

「ひどくないっ!?夏樹よ、さっきのはたちの悪い冗談を言った草野の責任だ!」

「とにかく木村、今晩家族会議があるんだろ?対策でも考えておけよ。僕が思うに選択肢は3つ。①家族にカミングアウトして楽になる。②本性を隠して今までどおり家族と暮らせるようにする。③学校を辞める。」

「それだけしか僕様の選ぶべき道はないとおっしゃるのですか?③は無理だよ。それって結局①につながるじゃないか。つまり2択じゃん。僕様を世の中から隠すくらいなら牛乳飲んだ方がマシだ!ってことで①で。」

「結論はやっ!だったら早く打ち明けて打ち解けてこいよ。冬子ちゃんがどんな反応するか知らないけど。」

「僕様、①を選択したことによってこの世から抹殺されるかもしれませんが、その時はよろしく。」

「何をよろしくなんだよっ!?」


その日、木村は一日中言動がおかしく、いつも以上によくしゃべった。しかしそのしゃべりにキレはなく、反論されると話題を変えてはふざけるという見たことのない姿だった。そんな木村を見ていると、冬子ちゃんって一体どんな子なんだろうと沸々興味がわいてくる。家族だから余計に知られたくないってだけなんだと思うけど、恐れるだけの何かがあるのだろうか?

いずれにしても今晩木村は人生における分岐点に立たされることになるのだろう。さて、他人事だし、僕は帰るとするか。


ガチャ

「おい。どうして君が僕のうちにいるんだい?僕の記憶が確かなら、今晩君は家族会議で自分の本性を暴露し、痴態をさらして妹さんに土下座でもするんじゃなかったのかな?」

「まあ細かいことを気にしたらそこでゲームセットだよ?僕様の場合はこれくらいの約束は守らなくてもいいのだよ。それよりどうしても今日は草野の家にお泊りしたくなっちゃったの。どぉ?キュンってなった?」

「帰れーーーー!!」

結局この日、木村は僕の家で過ごした。携帯の電源を切り、気持ち良さそうに眠っていらっしゃいました。今日逃げても明日があるのに。はぁ、これでとばっちりが無ければいいけど。


翌日、僕の悪い予感は的中した。

「草野部長、どういうつもりでお兄ちゃんを泊めたんですか?」

「いや、あの木村、じゃなくてお兄さんが勝手に僕の家の鍵を開けて居座っていたから、その・・・」

「それを黙認したんですか?約束したのにお兄ちゃんが帰ってこなくて、電話もつながらないし、何かあったらどうしようって心配してたんですよ?あなたには大切な人を待った経験がないんですか?」

ぐうの音も出ない。木村と違い正論でズバズバと切り込んでくる。心が痛いです。顔に似合わず手厳しい。

「僕が悪かった。ごめん。確かに冬子ちゃんが木村と約束していたのを聞いていた。けど言っても聞かないからって放置した。それは君の言う通りだ。本当にすまなかった。」

「そうだ、草野、お前が悪いんだ!」

「木村よ、お前ホントに地獄に堕ちるぞ。」

「お兄ちゃん。」

「はっ!はいっ!」

「元はお兄ちゃんがいけないんだよ?草野部長まで巻き込んで、ちゃんと謝りなさい。冬子も謝るから。」

「いや、いいんだ。悪いのは約束を破った木村なんだから冬子ちゃんは悪くないよ。」

「うむ、すまんな草野。どうやら僕様が悪かったらしいな。」

「お兄ちゃん。冬子、怒るよ?」

「ごっ、ごめんなさい冬子さん。そしてごめんなさい草野くん。平にぃ、平にぃお許しくだされ。」

「どうしてお兄ちゃんは問題をややこしくするの。それといつから自分のことを僕様なんて言ってるの?」

「えっ?この世に僕様が召喚された時からだったと思うよ?」

「そっか。大学に入って知り合いがいないところで変なキャラを作ったんだね、お兄ちゃん?」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!僕様は僕様なのだぁ!キャラ設定じゃなくて僕様は心の扉を開放をしているだけなのだぁ!いいじゃないか、家ではいい子ちゃんしてるんだから外では好きにさせてくださいっ!」

「そっか、お兄ちゃん、苦しんでたんだね。ごめんね、冬子はお兄ちゃんのことわかってあげられてなかったの。」

しばらく沈黙した後、冬子ちゃんは静かに涙を流していた。いい子じゃないか、木村。どうやら君が生まれる時に忘れてきた感情や理性というものをしっかり持って来てくれたようだ。しかし木村は泣いている冬子ちゃんを目の前にして何か考え込んでいるようだった。

「冬子、僕様の存在を許してくれるか?家庭内には持ち込まない。これは僕様自身の問題だ。家にいる時の兄とは別人なのだ。それを理解してくれないと入部は認めない。」

「お兄ちゃん。」

「ん?なんだい?」

「鈍器がいーい?それとも切れ味の悪いハサミがいいかなぁ?」

「ちょっ!まっ!そ、それって何にご使用されるご予定でしょうか?」

「さあ?冬子にもちょっとわかんないけど、とりあえず必要かと思って聞いてみたの。探してくるね。」

「ちょっと冬子ちゃん、落ち着こうよ。少しの間でいいから時間をくれないか?家での生活は今までどおりとして、学校での生活を冬子ちゃんが実際に見て、それから話し合おう。うん、それがいいよ。」

あまりの危なさに思わず火中の栗を拾ってしまった。僕って損な性格だ。

「じゃあ、部長がそう言ってくれるのなら、冬子も改めて入部させてもらうね。ひと月だけ様子見て、それでもやっぱりお兄ちゃんが許せない時は部長も連帯責任だね。」

そう言ってとっても可愛い笑顔を僕にくれた冬子ちゃんは、天使の顔を持った悪魔に見えたのだった。


2時間後。僕とレナ先輩、そして夏樹ちゃんの3人で木村を囲んでいた。木村はレナ先輩からのシツケとして正座させられていた。

「さて、木村、これからの長い学生生活をどうするんだ?」

「草野、僕様のデロリアンを取ってきてくれまいか。」

「そんなタイムマシン的な車は最初からない。これまで通りの自分自身で生活して冬子ちゃんが許さない可能性は?」

「そんなこと僕様が知るわけないじゃないか。だいたいなんで冬子がここにいて、同じ部活に入り、さらには僕様の自由を奪おうとしてる?理不尽だ。」

「貴様は自由の定義を履き違えてないか?君の普段の行動は自由という名の柵をいとも容易く乗り越えちゃってるんですよ。少しくらい自粛したほうが世界を救う救世主に一歩近づけるよ?」

「ふみぃ・・・」

「変な泣き声で鳴くな。ところでレナ先輩、実際のところ冬子ちゃんってどんな子なんですか?」

「どうしてレナ先輩に聞くの?」

あっ、しまった!夏樹ちゃんは知らないんだ、木村とレナ先輩がイトコだってこと。ヤバイ・・・今、レナ先輩を見たら僕はきっと視線だけで斬首される。

「はぁ。夏樹にも話しておかないともっとややこしくなるよね。私とそこのクズとはイトコなの、残念ながらね。」

「へー・・・えっ?嘘・・・」

「夏樹よ、それはどういう意味が込められた台詞なのだ?まるでダイエットサプリで簡単に痩せられると信じてたのに全然減ってなくてショックを受けたような言い方だな。」

「それってどんな絶望だよ。わかりづらい言い方をするな。まあそういうことらしいんだ。僕もビックリしたよ。」

「じゃあ木村くんはレナ先輩を追いかけて入学して、冬子ちゃんは木村くんを追いかけて入学してきたってこと?」

「おい夏樹よ、腐女子的な妄想で暴走した脳で僕様の家族様を汚すんじゃない。そんな萌設定をした覚えはないぞ。」

「じゃあなんで木村くんはこの学校にしたの?」

ストレートだなぁ夏樹ちゃん。君は天然ですか。聞きたくても我慢して機会をうかがってきた僕の葛藤が台無しだよ。

「起業に適した条件が整っていたからだ。僕様は計画的犯行を企てていたのだよ!」

会社の話は先日思いついたって言ってませんでした?

「言いたくないのなら別にいいけど。興味もないし。それで、レナ先輩、どうなんですか?」

「うん。私も長く会ってなかったからわかんないけど、昔は素直でいい子だったよ。ただ、ちょっと真っ直ぐで危なっかしいところがあったかな。」

「真っ直ぐなのはいいことじゃないんですか?」

「過ぎるの。それが時には誰にも止められなくなって、最終的に冬が傷つくってことが何度かあったみたい。今回の件もそうじゃなきゃいいんだけど。私もまだ直接は冬と話してないからわかんないけど、悪い子じゃないの。」

「あぁ、さっきも木村のわかるはずもない気持ちを理解できなかったって泣いてたもんね。いい子なんだね。」

「当然です。僕様の妹ですよ?いい子に決まってるじゃないですか!そんな”いい子”なんて一般的な庶民語で片付けないでいただきたいね。そして僕様はもっといい子ちゃんでちゅよ。」

「木村、鈍器と切れ味の悪いハサミとどっちがいーい?」

「やめてーー!レナ先輩ひどいっ!冬子の真似しないでいただけませんでしょうかねっ!ってなんでレナ先輩がそのクダリを知ってるんですかっ!?さっき部室にいなかったはずですよねっ?実は隠れてたんですか?まさか僕様ストーカー!?ちょっと無視しないでくださいっ!」

「とにかく、これからはこの部の一員として接していく必要があります。特別扱いはしません。そして木村、お前は自分の行動について今後どうするかしっかり結論を出しておくんだぞ?そうしないとここまで追ってきてくれた冬子ちゃんに失礼だ。ちょっとくらい誠意を見せろよ、兄だろ?」

「へぅー・・・」

「だから変な声で鳴くなと言ってるだろう。」

「それより草野くん、1回生の3人と冬子ちゃん、うまくやっていけるかな?」

「それなら大丈夫なんじゃない?冬は木村と違って社会適応能力はあると思うから。それに、木村のテリトリー内でも逃げ出さなかった3人だから、その辺は心配ないと思うわ。」

「レナ先輩、僕様をどんな風に思ってるんですか?まるでペストみたいな扱いはヤメテヨ!」

「ペストの方がマシよ、チャバネゴキブリさん。」

「ひどくないっ!?」


そんなわけで、想定外というか、規格外というか、木村の、あの木村の妹という冬子ちゃんが入部することになり、波乱が起こらないよう僕はただただ祈るばかりだったが、木村は監視されるような立場となることで精神が壊れてしまわないか不安だ。

夏樹ちゃんはそこまで深くは考えていないようだったが、レナ先輩は木村といういきなりのイトコの乱入に慣れてきた1年後、まさかさらにイトコが現れるとは思ってもいなかったのだろう。やはり動揺しているようだった。ただ、木村みたいに扱いが難しいような感じではないのか、後輩の前だからか、取り乱したりということはなかった。

そして、その不安因子が加わった学生生活の再スタートは、僕の予想に反して静かな幕開けになるのだった。


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