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第282話 訓練内容を増やした時の事

 メルが産まれてから一ヶ月、ベビーベッドではなく、コルキスと一緒に床に寝かせていると、ターニャとソーニャが近くで寝ており、泣いたら手の平や胸元に鼻先をこすりつけたり、舐めたりしてあやしている。前世で子守をする犬とかの動画を見ていたが、本当にそのままだ。

「はいはいはい、どうしたんでちゅかーおっぱいかなー? おしめかなー?」

 そして昼食中に泣き出したので確認してみるが、おしめではないらしい。

「時間的にご飯だなー。流石に俺じゃ無理だ」

 そう言って抱きかかえ、ラッテに代わってもらう。

「はーいごはんでちゅよー」

 そう言って食べていた手を止め、授乳させる姿はなんか慣れ過ぎていて、何人も子供を育てています! って雰囲気だ。まぁ、実際四人目の子供みたいなものだしなー。

 二人とも母乳が出るから、手の空いている時は、交代で二人共それぞれの母乳で育っている。ブレンドではないが、二人共負担は減っているらしいので、多分平気だと思う。けど、スズランさん。ドヤ顔で、二人同時に授乳はどうかと思いますよ? 筋力があって、二人同時に抱けるからって理由でやらないで欲しい。

 そう言えば学生時代、胸の小さな家庭科の先生が、私なんか胸が小さいから、産地直送よ。ってのをネタにしていたが、今思えばスズランも産地直送に近いんだよなぁ……。

 産地直送って言葉自体が通じないと思うけど。

「そう言えばコルキスは、泣きが伝染しないな」

「確かに。リリーやミエルの時は良く一緒に泣いてたわ。あれって何でなの?」

「子供が生き残る本能かな。まだ喋れないし、大人の気を引いて、もっと僕、私を構え! ってな感じらしい。だから子供は一緒に泣く事が多いんだよ」

「「へー」」

 俺が少しだけ豆知識を言うと、二人は軽く頭を縦に振りながら納得していた。

「つまり一緒に泣かないコルキスは、肝が据わっているのか、安心しきっているかのどっちかだと思う」

「流石に頼って欲しいけど、泣かな過ぎるのも困る。何かあっても反応が遅れる」

「確かにそうだなー。けど、ご飯やおしめの時は泣くし、どうなんだろう?」

「病気か何かかな?」

「んーあやせば笑うしなぁ……。本当どうなんだろうか? 泣くのが伝染しないだけで、後は普通だし、様子を見るしかないんだよなぁ……」

 今はそれしか言えないのが現状だが、リコリスさんがリリーやミエルをあやしている時に、スズランがあまり泣かなかった事を、話してくれた事があるので、もしかしたらイチイさんも、乳児の頃あまり泣いていなかった可能性が高い。

 祖父母に会った事がないから、聞きようがないし、本人が親に聞かされているなら聞けるだろうけど。


「んじゃ、行って来るよ」

「いってらっしゃい」「はーい」

 昼食を食べ終え、食器も洗い終わったので、俺は第四村に転移し訓練に参加するが、数日前からティラさんが滞在しているので、クロスボウを重点的に教え込んでいる。

「さて、少し訓練にも変化を付けようと思う。皆が矢を撃ち込んで不規則に動く的を一個増やし、片方は当てたら駄目だ。つまりこういう事だ」

 俺は隣に立っていた北川の背中に回り、左胸に付けているナイフを抜いて、首に軽く腕を回して頬に付ける。

「人質を取って、少し頭が見えている敵。一個増えるってのが正しいな」

「スナイパーの訓練じゃねぇかよ……」

 俺が説明をしたら、北川が小声で、ツッコミを入れてきた。確かにそうだ。教官がクソ安い子供用のラジコンカーに、風船を二個付けて適度に走らせる奴。

 浮いてる風船はラジコンや風で不規則に動くし、大体人の頭と同じ大きさにしてあるから、片方がテロリストの頭だという感じの訓練だった気がする。高いのはヘリウムガスくらいだろうか?

「限定的だし、多分あまりこういう事はないかもしれないけど、腕も上がれば自信もつく。それに不規則だから、各自のタイミングや判断力を上げるのにも丁度いいだろう。別に罰を与える事はないが、新鮮味に欠け始めて来た訓練にも丁度いい刺激だと思う。因みに多分俺でも難しいので、遊び半分とは言わないが、気軽にやって欲しい。誰かの頭にリンゴを乗せて、それを狙わせるような事はさせないし、させたくはないからな」

「距離はどの程度ですか!」

 一人が手を上げたので、許可を出したらそんな事を聞いてきた。

「多分事が起こって、どうしようもない状況になってるから、そういう事をするんだと思う。つまり前衛数人が取り囲んで、その後ろにクロスボウを持っているという事にして、十歩から十五歩だな。あまり遠くても成功しないだろうし」

 そう言いながら北川に剣を構えさせてから数歩離れ、肩越しに質問してきた人族を、エアクロスボウで狙う様に両手を構えた。

「うん、このくらいの距離だろうな」

「ちょっといいですか? なぜその様な訓練を?」

 そんな説明をしていたら、ティラさんが質問をしてきた。そう思うよなぁ……。

「今後島が発展した時に、買い物や観光に来た奴が良い奴だとは限らないので、最悪の場合を想定して、訓練しておくのも必要だと思いました」

 ちょっとした言い訳っぽい内容だが、多分なくはないであろう事なので言っておく。

「で、カームさんはソレをできるんですか?」

 ティラさんが呆れた様に言ってきた。確かにそうだ。結構言ってる事が無茶だし。

「できませんよ? 教官なんてものは、新しい事件があったら、新技術や打開策を考えて教育したりしますからね。訓練内容だって、俺が若い頃はあんな物なかった。当時の俺でもできないね。とか言う人も多いですし。ちょっとしたミスで、一瞬で百人以上が死んだりするような、悲惨な事件対策とかで、どんどん増えますから」

 そんな事を言ったら頭に手を置き、片目を細めて口を半開きでこちらを見て来た。ですよね。

「先程も言ったが、結構限定的で使いどころのない訓練内容だ。ちょっとした刺激にはなると思う。当てても外しても特に何もないが、ないとも言いきれない状況なので今回は気軽にやって欲しい」

 そう言って、人の頭程度の大きさの的の紐の方に赤い布を付けて、撃っていい方をわかり易くする。そして二つを軽く紐で縛り、軽くねじって手放し、叩いてブラブラと揺らしてできあがり。

「んー。角度で狙える場所が増えたりするって思えば、多分いいかと思う。ティラさん、タイミングをズラす為に、どっちでもいいので好きな時に当てちゃってください」

 俺はクロスボウを構えティラさんに言うと、きっちりと赤い布の付いた方の的に中て、軌道と回転を更に不規則にした。

「んー。本当に難しいなこれ。頭の中でリズムをとっても意味ないし、本当に一瞬の判断だな」

 そう言いながら引き金を引くと、赤い的にかすり、また軌道が変わった。

「矢が到達するまでの距離を感覚で把握し、一瞬の判断で大きく外れる。針の穴を射抜くような正確さがなければ当たらない。二つが合わされば、更に難しくなる。多分これは脚か腕を狙った方が楽ですね」

「けど、それだと人は殺せない。島民が一人死ぬ事になります。そういう想定でやらないと、防衛部隊的な事なんかやらせませんよ。まぁ、人質ごと犯人を殺すところもありますけどね。だから両方から恐れられている。そういう風にするのは簡単ですが、俺はそういう風にしたくはないし、島民を殺させたくはないんですよ」

 そう言って二射目を撃つと、今度は赤い紐の的に当たってくれ、大きく軌道が変わった。

「専門家は度胸と慣れ、そして自信。血のにじむような訓練で、困難な状況、初めての出来事を打破していく。百回の訓練より、一回の本番とか言いますが、人の命がかかってる状況で、いきなり本番をやれと言っても無理ですからね。訓練で色々な状況に対応できるようにしておく。それが目標であり続ける事が、精鋭部隊や特殊部隊だと思っています」

 俺はクロスボウを下ろし、隣に立っていた魔族の背中を叩き、軽く顎で的を指す。そして躊躇なく矢を撃つと一発で命中させた。

「いいぞ。その調子だ。それが本番でできるようになれば最高だ。一生本番なんか来ない事を祈るが、訓練だけはしないと一生できない。もしもがあったら真っ先に頼む。それと部下を育てる時は教官だな」

 俺は笑顔で魔族の肩を叩くと、凄く嫌な顔をされた。

「いや、カームさんも頼みますよ」

「もちろん俺も北川も出るさ。けど、一人が強くてもどうにもならないのが防衛だ。大量の船で島が囲まれたら、村は二ヶ所しか守れないからな」

 そう言って、今度は【石弾】を使って的に当て大きく揺れた。初速の違いやタイムラグが少ないので、この距離ならほぼ当てられる。

「それに、武器や攻撃方法の規格はある程度合わせた方が、色々と都合がいい。怪我をした、破損した、色々な原因で誰かが使えなくなった場合は、代わりに使ったりできる。誰もが魔法を使えるわけじゃないからこそだ」

 とりあえずなんかそれっぽい事を言い、順番に的を撃たせるが、やっぱり全員が全員当てられる訳ではないみたいだ。


「結構な水準にまで上がってきてるけど、圧倒的に実戦が足りない。自信を付けさせたいが、どうすりゃいい?」

 休憩時間に北川がそんな事を言ってきた。

「確かに。なんか海賊でも襲って来ればいいんだけど、この辺一帯のシーレーンの安全確保はしちゃってるし、なんか噂を聞いてるのか、そういうのをまったく見なくなったらしい。水生系魔族に、手回し式ドリルを持たせたり、ハーピーに油袋を落としてもらって火をつけて、沈めまくってたのが原因かもしれない……。基本上陸させないで勝負付けてたし」

「対国家って言うより、対個人経営の海賊対策はしっかりしてたんだな。はぁ……、欲しい時に限ってないもんだな。模擬戦でもやらせるしかないか」

「それしかねぇなー。キルハウス作って赤と黄色で班別けして、攻めと防衛をやらせるか。島には森が多いけど」

「駄目じゃん」

「森だとどうしてもサバゲ風になるぞ? キルハウスもサバゲ基準だけど。けど都市戦闘っていうよりは、想定を道とか室内にしておけば、いきなりの暴漢にも対処できるだろ?」

「そうだな。ちょっと室内戦闘用にキルハウスでも作るか。ある程度射撃の腕があれば、木とかの遮蔽物があってもどうにかなるし、剣とかを振れない場合の場所の訓練も必要だろ?」

 そんな話しをしながら休息時間が終わり、取り合えず俺達は夕方まで訓練を続けた。

この場をお借りして新作の宣伝になりますが、10万文字溜まったので数日前から毎日1話ずつ更新をしてます。

主に内政やインフラ整備物なので、無人島に似ているところがあります。

もし興味があれば、下記のURLをコピー&ペーストして飛ぶか、URLが不安な場合は作者を名前をクリックし、作品まで行って下さい。


姫騎士に惚れられて王族に婿入りし、軽く内政に関わったりインフラ整備する事にした(案)

https://ncode.syosetu.com/n3555fg/

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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