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第225話 夏祭り本番の時の事

感想で頂いた案を使わせていただきました。

 夏祭り本番、ボクシングで優勝した第二村で開催になるはずだったが、村長兼神父様から立ち上げたばかりの第四村でやっていただけないか? と言われたので急遽第四村に変更した。

 きっと、食の不味さを毎回指摘されるからの辞退なんじゃないかと思うが、疑うのは良くないね。

 そして各村の代表が集まるが、なんで俺がまた下準備しないといけないんですかねぇ……。

 とりあえず意味のない魂の叫びをあげつつ、第四村の女性達と一緒に作業をする。

「カームさん、ちょっとうるさいですよ」

「けど手は動いてるんですよねー。大量に作る作業が嫌いなんですよ、きっと」

「普通に料理するなら、もの凄く上手って聞いてますよ? お菓子作りも」

「全部当たりですよ。大量に作るのが嫌いな訳じゃないですが、興が乗らないと駄目なんです。なにせ趣味ですから」

 そう言うと女性達は笑い、早食いの下準備を続けている。


 ある程度の情報があり、村の代表の合計数を聞いてるので、それに追加で百皿、観客用に百皿で今日の下準備は終わりだ、後は揚げ物班に任せればいい。

「んじゃ後は任せますね。アラはスープに使った方がいいですよ」

 なんで俺が下準備係になってるのかが不思議だが、料理が上手いからっていう変な理由だ。

 貴賓というか村長というか、ちょっと偉い人の席に座らされるが、そんなの関係なしに麦酒を持ってる姐さんに絡まれた。

「今日は決勝なのねー。二回もお祭りがあるとその分お酒が飲めて嬉しいわー。シュワシュワするの出してー」

 姐さんは、手にミントを持って相変わらずモヒートを強請(ねだ)ってくるので、長テーブル越しに、カップに【クラッシュアイス】を入れ【炭酸水】を注ぐ。

「好きな量のミントと砂糖、酒を入れて下さい」

 順番がめちゃくちゃだが、あまり姐さんにもかまってられない。

 参加者名簿をめくり、誰が出ているのかを見ようと思ったら、姐さんがその辺からイスを持ってきて俺の隣に座った。飲む気満々だな。そして名簿をめくると、第三村の参加者の覧にイセリアと書いてあり、俺は二度見してしまった。

 そして、村長席にいないと思ったが、よく見なくてもトローさんと一緒に参加者として座っていた。

「はぁ? イセリアさんも参加?」

 思わず声に出してしまった。

「イセリア……とは? どなたですかな?」

 第二村の神父兼村長が聞いてきたので、とりあえず説明をした。

「ほうほう、第三村の……。もうトローとは夫婦のように見えますな」

「孤児院出身で歳の離れた……」

「しかもトローさんは更正したというじゃないですか。ロマンですね」

 村長組はなんかホンワカとした目でトローさんを見ている。けどね。参加者名簿に出ている時点で、大量に食うんだぞ? エンゲル係数増えない? まぁ、まだ所得もクソもないけどな。ってか普段から食べてなかった気もするけど。


 しばらくして、参加者全員(・・)がステージに上げられた。四組五回とか、二組二回じゃなくて平気ですか?

「それじゃ、今から大食い大会決勝を始める。準備は良いか?」

 北川が声をかけると皆が一斉に構え、その後ろにはスタッフがお代わりをもってズラズラと待機している。

「始め!」

 北川がそう叫ぶと、フライパンを持った人が思いきり音を鳴らし、それと同時にボウルを別な人が水に浮かべた。

 やっぱり目立つのは、第一村出身のあいつだよなぁ。

「おーっと、第一村のアンコウタイプのサハギンが皿を持って丸ごと口に入れた!? 口がでかいのはやっぱり有利なのかー?」

 北川ノリノリだな。ノリノリすぎてびっくりだわ。ってか司会というかレフリーだな。ボクシングの時もノリノリだったし、好きなんだろうなぁ。

「おーっと、第三村の村長トローも負けてはいないッ! 勢い良く口に詰め込んでいる!」

 ふむ、やっぱり楽しそうだ。


 しばらく見ていたが、何か違和感に気が付く。イセリアさんが、丁寧に普通に食べているのに、トローさんに追いつき、残り時間四分の一の時点で、第一村のアンコウに並んだ。

 なんだ? どこにあんなに入るんだ? 目立ったパフォーマンス的な物はないけど、どんどん皿が積み上がっている。

「おおっと。第三村のイセリアがここで追い上げてきた。違う、最初からペースが変わっていないんだ!」

 北川の解説で会場が盛り上がり、なんかアメリカ的な盛り上がりが巻き起こった。なんだろう。こんなのテレビの向こう側でしか見た事ないわ。

 北川の声と、会場のイセリアコールでアンコウがペースを上げ、モリモリと口に突っ込み、水で流し込み動きが止まった。

 そして立ち上がったら足下のバケツを取り出し、口から虹のエフェクトを出した。

 それを見た会場が大盛り上がりを見せ、笑いの渦が巻き起こり、酔っぱらった水生係の男が檄を飛ばしている。

「おーっと、リバースです。これはルール上失格になります。アンコウは逆転を狙えなっかったぁっっ!」

 確かにあのペースならイセリアさんに勝っていたかもしれない。けど吐いたら終わりだしな。巻き込み事故がなくて良かったわ。

 ってかちゃんとした名前があるのに、アンコウで固定されつつあるな。見た目の第一印象って大切だな。

 そしてボウルが沈みきり、フライパンが勢いよく鳴った。

「しゅーりょーです! そこで手を止めて下さい!」

 北川がストップをかけ、積み上がった皿の数を数えている。

「見てわかると思うが、第三村のイセリアが第一回大食い大会の優勝者だー! さっそく優勝者にインタビューだ」

 止めてやれよ。全力で食ったばかりだぞ? 何か言えるのかよ。

「凄く嬉しいです。このような体で皆さんと争える事が出来るお祭りだったので、少しだけがんばってみました」

 少し……だと? 二十皿以上食べてるのに、なにを言う。底なしか!

「もの凄く食べられる秘訣でも、なにかあるんですかね?」

 北川が、マイクを持っていたら向けそうな勢いでインタビューをしている。

「特にないですが、出された物は全て食べきるという、孤児院での教えが生きてるんだと思います。だから次々に出てきたら食べるを繰り返すだけです。後は……いつ食べられなくなるのかわからないので、食い溜め出来る体質な――」

「はいありがとうございました!」

 北川が、それ以上は言わせないって雰囲気で言葉を遮った。だってもの凄く重そうな話だし。ってか思ったより根性論だったわ。よく見たら、第三村全員孤児院組じゃねぇかよ……。色々と闇が深そうだ。


 さて、会場の片づけも終わり、ある程度北川と秘密裏に進めていた計画を即興で始めるとする。

 比較的年輩の村長達も楽しめる祭りって事で、第三村でギターっぽい物を弾いていた人を呼び、歌を歌わせつつ酒を振る舞い、ビンゴゲームを始める。

 ある程度進行を北川に任せてたので、さっき聞いたらビンゴゲームをするのに決勝を全員でする事にしたらしい。

「さてさて。ここにあるのは、色々な景品を揃えたテーブルですが、今から配る紙に一から七十五までの数字を好きな場所に書いて下さい。もちろんどのように書いても結構です。けど真ん中は丸を書いて下さい。そしてこれが見本です」

 北川の解説と供に、大きめの布にランダムに書いた数字を二本の棒で広げてみせる。

 まぁ、細かいルールがあった気がするが、とりあえず無視って事にしておいた。

「今からこの箱に入った紙を一枚ずつ引き、書いてある数字を読み上げるから、あったら丸を付けてください。こんな感じで」

 北川が箱に手を突っ込み、折り畳まれた紙を広げて数字を読み上げ、俺が布に丸を付けるフリをする。それを数回繰り返す。

「こんな感じで進行していきますので、さっき説明したとおりにいてください。そして列がそろったらビンゴと言ってください。運が良ければ四回目で宣言が出来るぞ。そして景品はここから先行順です」

 テーブルには衣類引換券だったり、港町往復券。数年物のベリル酒や小樽に入った果実酒。その他諸々を置く。

 まぁ粗品って事で、後で衣類引換券を村長全員に送るけどな。少し良い物を着てもらわないと、威厳の関係もあるし、神父様の法衣なんかちょっとくたびれてるし。


「さてさてここからが本番だ。紙を全部集めて、適当にバラバラにして配り直す。これで公平だ。んじゃ始めるぞー、数字に一喜一憂してくれ。一枚目だ!」

 北川が一枚目の数字を読み上げると、あったぞ! と喜びの声があがり、四枚目を引いた時点で女性の声でビンゴの声が聞こえた。

「イセリアさんですか。運がいいですね」

 ニコニコとしながら、俺が立ってる景品の乗ってるテーブルまで近づいてきて、紙を出してきたので確認すると、斜めに揃っていた。

「た、たしかにビンゴですね。どうぞ」

 イセリアさんにテーブルの上の物を少し選んでから持って行き、北川が五枚目を引いたら、特徴のある聞き慣れた女性の声でビンゴの声がした。

「姐さんですか……」

 いままで少し無視していたが、しっかりビンゴにも参加していたらしい。

「縦ですね」

 俺は引き吊った笑顔で紙を受け取ると、真っ先に数年物のベリル酒をかっさらっていき、その場で開けてラッパ飲みしてた。

「んーこれが季節が数回巡った物ねぇ……。プラクス(こうちょう)ちゃんが力を入れるのも納得だわ……。私も少しお金出そうかしら……」

「姐さん、ちょっと進められないから退いてくださいよ」

 少しだけ恐ろしい言葉が聞こえたが、俺が背中を押してイスの方に無理矢理退かすと、顎に手を当てながら瓶をシャパシャパして、気泡をずっと見ていた。


 そして会場の雰囲気がどんどん盛り上がっていき、後一個で二列だとか、全然揃っていない者もいた。

「ほほほ。では、私はこの衣類引換券を」

 第二村の村長がビンゴになり嬉しそうにしていた。うん、いいね。ビンゴはこうあるべきだし、年齢関係なく楽しめる。

「お、揃った」

 北川もビンゴになったのか、錬金術師の夜の秘薬セットを恥ずかし気もなく持って行った。

「おいおい、夢魔族のねーちゃん捕まえるから、そんなのが必要なんだよ!」

「いやいや、これはもっと夜を楽しむ為にだな」

 同じ第四村の住人から茶々が入るが、俺は知っている。イセリアさんもそれを紙袋に入れて持って行ったのを……。トローさん、がんばってくれ。

 そしてどんどんビンゴが出始め、テーブルの上の景品はなくなってしまった。

「あれ、カームさん。揃ってねぇんすか?」

「見事に全て数字が反れてるんですよね。運がなさすぎるんですよねぇ」

 俺は紙を摘んで持ち上げると、見事に全て歯ぬけ状態になっており、ここまでにするのには、逆に凄い確率だって事だけはわかる。

「ってかこの数字書いたの誰です? 素晴らしいくらい当たらないんですよね。書いた人は他人の運を吸い取る人みたいです」

 俺は笑いながら首を振り頭を掻く。本当に運が避けてるみたいだ。


 その後は北川がギターを借りて、軽く親指で全ての弦を弾き、一回でチューニングをすませると、アコースティックギターで良く聞くような牧歌的な曲を奏でだした。

「お、いいねぇ。俺はこういうの好きだぞ」

 牧場経営係ゲームで聞くような音楽は、ドライブ中に良く聞いてたから心が落ち着く。ってか北川万能すぎ。

「そういえばキタガワって勇者だったよな。向こうの音楽ってどんなのがあったんだ? 弾いてくれよ」

「あん? そうだな」

 北川はもう一度弦のチューニングをすませると、テンポが三百はありそうな早さで弾きだし、いきなり叫びだした。

 雰囲気ぶちこわしだよ……。しかも妙に盛り上がってるし。この場の年長者っぽい神父様もなんか若くなったみたいにノってるし問題ないか。

ビンゴには多少決まり事があるみたいですが、とりあえずそれはなしの方向で。

BINGOのBは1~15、Iは16~30的な。


大人だけのビンゴでたまに見る、夜のジョークグッツネタを入れてましたが急遽掲載前に破棄しました(白目

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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