第226話 面接しに行った時の事
ボクシング大会で第二村が優勝しましたが、なぜか第四村で夏祭りやってました。
なので前話の文章を少し変えて、今回の夏祭りは第四村でやる事にさせました。
「ちょっと面接しに行ってきます」
俺は人員募集の張り紙の事で事務所の二人に言い、まずはコランダムに転移をする準備をした。
コーヒーショップくらいしか転移する場所がないので、とりあえず補充を装い、コーヒー豆の入った袋を担ぐ。ニルスさんの倉庫の屋根とか勝手に使ったら怒られるだろうな……。あと人として駄目だな。
転移をして豆を肩から下ろし、ホールの方に出る。
「お疲れさまです、豆の補充終わりました」
「お疲れさまでした」
マスターが何事もなかったかの様に振る舞い、店内に知った顔がない事を確認して外に出てギルドに向かう。
「十人よりかなり多いな……」
ギルドに入り奥の方のテーブルにいる、冒険者風ではない集団を見て思わず声が漏れた。
俺がやってた日雇いならこんな時間にはいないし、武器防具類を装備していないから、あの集団で間違いはない。
「皆さん、アクアマリンに職人としての入島をお望みの方達で?」
一応確認を取ると軽く肯定されたので、とりあえず簡単に代表である事を説明し、魔族に偏見があるかを聞いた。
「この町で魔族を嫌ってる奴なんかあんまりいないぜ? それに島の噂は色々有名だから別に驚きはしない」
一人がそう言ったので、とりあえず今回の募集で必要な職人が何で欲しいか、募集人数半分を大工の雇用する事を言い、島にいない職人だったら、少し考慮する事も最初に伝える。
「大工、もしくは大工見習いの方。手上げて下さい」
七人か。これは雇用として考えておき、問題は残りだな。
「他の方の職業を教えて下さい、そちらの方からどうぞ」
俺は向かって右側の人から質問をする。
そしたら結構魅力的な人が多く、靴職人と服飾関係はぜひ欲しい。鋳掛けはヴァンさん達とは別にいた方がいいか? いや、そこまではまだ必要ないな。服飾は、下着類が得意らしいから、テーラーさんと分ければいい。
あとは錬金術師と医者か……。十一人。コレで決めちゃうか。
こんな決め方していいのかと思うが、大企業の面接を決める時の書類選考って、ぶっちゃけ適当って友人に聞いたし。
千から二千人とかの紙の束と格闘してると、じっくりと見てられないとかグチってたなぁ。だって職務時間外、家に帰ってから見るっていってたし。
まぁ、コレは本当に島に必要な人を取る面接だからな。
「では先ほど手を上げてくれた大工と、靴と服飾、錬金術士と医者の方は残ってください。他の方は今回はご縁がなかったと言うことで、次回の募集に集まってください」
俺は指名した人以外を帰らせ、残った人に今後の予定を伝える事にする。
「六日後、嵐に遭わなければアクアマリンのエンブレムの入った船が入港すると思います。それまでに準備を終わらせ、借家か共同住宅を引き払い、港にお集まり下さい。もちろんご家族がいればご一緒にどうぞ。何か質問のある方はいますか?」
俺は皆に問いかけると、一人が前に出てきた。確か錬金術士だったな。
「噂では島に村が点在しているらしいが、俺達はどういう風に振り分けられるんだ?」
「一旦船が入港できる第一村で過ごしてもらい、島の生活に慣れていただきます。それからそれぞれが必要とされている場所へ行っていただきます。他にありますか?」
「島の一つの村に何人くらいいるんだ?」
もう一人の男が前に出てきた。確か大工だったな。
「大体五十から百人規模の村が四つ、魔族と人族が住んでいる村が二つ、魔族と人族だけの村が一つずつです。魔族の職人も雇う予定ですので、皆さんを魔族だけの村に送る事は少ないです。まぁ、恋をして結婚したいと言うなら意志を汲みますよ。実際何組もいますので。他には? ないようでしたらコレで終わりにしますが?」
それ以上は特になかったので、俺は紙に一筆書きながら、書簡用のスタンプを十一枚用意する。
「当日、船長を名乗る男性にコレを見せれば、乗船出来る様に話を通しておきます」
そう言って、全員に一筆書いた紙を渡す。
「あぁ、そうだ。お名前を伺ってませんでしたね。当日名前と顔が一致しない場合は強制的に送り返しますので」
笑顔でそう言い、俺は名前を紙に書きながら、特徴を箇条書きして全員を帰し、ギルドから紙を剥がしてもらってから、コーヒーショップに向かう。
「コーヒーセット」
俺はカウンターに座り、マスターと店内の客の噂話程度の物を聞く事にした。
「そうですね。大陸中央の方で大飢饉とか、海岸沿いの航路に海賊が出るって所ですね」
「そうですか。直接島に影響する物はなさそうですね。んー大陸中央……ねぇ」
「どうかしたんですか?」
「いえ、ラクダという生き物を購入するのですが、王都から百日程度の場所からの移動なので、少し影響あるかな? って程度です。どこかの友好国に援助とかしてるなら問題はないんですがね。こっちは島だから、備蓄だけはしっかり備えないとやばいですね。買うにも運搬にもお金がかかりますし」
「そうですね」
まぁ俺が転移で運べば、俺の労力プライスレスってな感じなんだけどね。
「ごちそうさまでした。裏口お借りしますね」
俺はカウンターにお金を置き、倉庫の中に入ってセレナイトの蒸留所に向かった。
「お疲れさまです、ちょっと通ります。あ、なにか要望とかってあります?」
通りがかった職員に、とりあえず声をかけてみる。名も知らぬ、言い方は失礼だが末端の意見の方が参考になる場合もあるし。
「あー、そうっすね。職員割引がしてもらえるのはいいんですが、職員じゃない近所の人も利用するから、食堂がいつも混んでるっす。広げるか増やすかして欲しいっす」
「わかりました、ちょっと偉い奴に掛け合ってみます」
なんか俺の事を知らないようなので、その場限りで誤魔化しておく。代表で一番偉い奴がうろうろしてたりすると、多分やり辛いからな。忌憚のない意見は重宝する。
たまに偉すぎる奴が、失礼だな君は! みたいなのをドラマとかであったけど、俺はそんな事は言えませんよ。大切な職員ですし。あと俺の評価にもかかわりますし! っか俺のまわりからの評価ってどうなのよ?
そしてセレナイトの冒険者ギルドに向かうが、思ったより人が少ない。自立は考えてないんだろうか?
とりあえず俺は、先ほどと同じようにテーブルに付き、皆に確認をする事にした。
そうしたら商人、皮なめし職人、回復魔法が使える冒険者、錬金術士、左官職人、染色屋、陶芸家、自然保護官希望のエルフの女性。
俺は話を聞いて、左手をおでこに当てる。中々個性的なのが集まっちゃったよ……ぉい……。どうするかな。
錬金術士がかぶってるし、レンジャーって……。まぁ多いに越したことはないけどさ。
「あの、エルフの方にお聞きします。具体的に何をするのでしょうか?」
「話に聞くと島はそれなりの大きさ。暴虐な魔王がいなくなり、安定した状態が続き、発展途上でそれなりに開拓を進めていると思うが、私の役目は森や動物の管理だ。増えすぎでも減りすぎでもまずい」
エルフってそういう生き物なの? 森の管理したいの? いや、別に悪い事じゃないよ? 故郷にもシンケンの母親が似たような事してたし、山沿いの森なんか色々手付かずだから問題はなさそうか?
「そういう組織的な物があるんでしょうか? それとも何か基準とか?」
「ない。ただの種族の使命的な物だ。通りがかったら噂を聞いてな、ついでに募集もしていたし、エルフがいるとの噂も聞かない。ぜひ私にやらせてもらえないだろうか?」
頭が痛くなりそうな会話だな。ほにゃらら保護団体的な? 島の癌にならなければいいけど、故郷でも過激な運動はしてなかったしな。多分平気だろう。
「そうですね。ならお願いします」
何かあったら追い出せばいいか。俺はとりあえず笑顔で承諾し、全員分の紙に一筆書いた物を用意して、二十日後に船が迎えに来る事を言い、人族に伝えた事をこちらでも言った。
「何かご質問はありますか?」
俺は移民募集者全員に聞いてみた。
「お前は本当に魔王なのか? 噂で聞く魔王とは一致しているが、覇気や殺気を感じない。証拠を見せてくれ」
陶芸家を名乗った男がそう聞いてきた。見せるしかないんだろうなー。
「魔王の証で良いですか? それとも、ここで殺り合うか? まぁ冗談ですけどね」
俺は靴を脱ぎ足の甲の証を見せると、遠くからも小さく驚いたような声が聞こえた。多分ここの職員さんだろう。何回もお金下ろしたりするのにも利用してるしな。まさかあの人がって感じなんだろうな。
「満足ですか?」
「あぁ、問題ない」
職人気質の人ってこう言うの多いなー。まぁ信用第一的なのもあるんだろう。
「では、先ほどお話しした通りの手はずでお願いします。俺は募集の紙を剥がしてから帰りますので、コレで失礼させていただきます」
「待って下さい、今帰ると言いましたが船以外の移動手段があるのですか?」
席を立ち上がるとエルフの女性が聞いてきた。なんか面倒くさそう。
「えぇ、少々」
「私を先に連れていってくれないだろうか?」
「ダメです。皆さんとの顔合わせもありますので、集団行動を心がけて下さい。まぁ、貴女は女性ですので船旅での不安もあるかと思いますが、船員の教育は行き届いてますのでとりあえずは安心して下さい。幸いにも冒険者だった方も女性ですし、相部屋になるように配慮してもらいますよ?」
「あ、いや。その……。船が怖いんです。船以外の移動手段があるのなら運んでいただきたいのです」
エルフの女性は、エアろくろをしながら必死に訴えてきた。
「……他に船が怖い方います?」
怖いなら仕方ないと思いつつも、水恐怖症じゃないだけマシかとも頭をよぎるが、どうしようもないくらい怖いって訳でもなさそうだしなぁ……。だって俺と一緒に船で島に向かうつもりだったっぽいし。
「いないみたいですね……。んー。克服して下さい。ここで特別扱いすると小さな遺恨が残りますので、諦めてください」
「そんな! 酷すぎるぞ!」
とりあえず笑顔で突き放しつつ、俺は受付に行って募集の紙を剥がしてもらい、オルソさんの所に向かった。
「お疲れさまです。募集の紙を剥がしに来ました」
店番をしているオルソさんの弟さんに挨拶をして、とりあえず世間話を始める。
「最近どうですか?」
「ぼちぼちです。ベリル酒の生産は追いついてくれてますので、街中の店で瓶売りも見かけ、各家庭で好きな果物を漬けているらしいですよ」
「ほー。寝かせない酒でも売れてて良かったです。どうしても故郷の物は季節が数回巡った物で、色が付いてますからね。そういえば今日の募集で商人さんが一人来ましたが、ここの張り紙見たんですかね?」
俺は特徴と名前を言うと、弟さんはそうですと頭を縦に振った。
「なら、ちょっと島での交渉を任せて見るもの良いかも……」
「別にやり手って訳ではないんですけどね。実は親方と喧嘩して出てきたらしいんですよ」
「ならたたき上げて上げますよ」
「はは、手加減して上げてくださいよカームさん。なにせ、うちはそんな余裕すらなかったんですから」
確かに叩き上げるっていうより、海に放り投げたっていう感じに近かったな。
「あ、その。すみませんでした」
俺は軽く謝りつつ、商人が来たので失礼させてもらうことにした。
そしてそのまま酒場に行き、カウンター席に座る。
「いつもの」
それだけを言うと、レモンピールが漬けてあったベリル酒が出てきた。
ふむ。コレが独自に好きな物を漬けたやつか。渋みもえぐみもないから、丁寧に内側の白い部分が入らないように剥いたんだろうな。けど酒をケチってるのか少し薄いような気もするが、これはこれで美味い。
まさかリモンチェッロがここで飲めるとは思わなかった。異世界でも発想は似るんだなー、今度島で作ろう……。
「美味いっすね。最近どうっすか?」
「あぁ、初めて会った頃に比べてかなり治安が良くなったな。ならず者も死体も減ったし、職も安定してるのか客足も増えた。自警団の見回りも地味に増えてる。お前のおかげだな。そいつは俺からのサービスだ。飲んでおけ」
「あざっす。それとあの紙を剥がしに来ました」
そう言って親指で壁を指す。
「ほう、集まったか? 大抵のごろつきは島に行っちまったから、集まんなかっただろ? 噂ではギルドとオルソ商店にも張り付けたとか」
酒場ってやっぱり怖いな。
「えぇ。おかげで変わり種が多いですね。冒険者風が二人に商人一人です。俺が交渉しなくても、きっと彼が上手くやってくれるでしょうね。どんどん俺の仕事が減って楽になります」
「おまえは、あっちこっち飛び回って色々やってるからな。まぁ、息抜きしてけ。どうせ帰ったらまた仕事だろ?」
そう言ってマスターは島民募集の紙を剥がしに行き、ゆっくりと心地よいレモンの香りを楽しんだ。
バーのカウンター席って、止まり木って言われる訳はコレなんだな。一息入れられる酒を出してくれた事に感謝しないと。
けどさ、こういうのは仕事終わりに飲みたいよね……。




