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第214話 家畜関係が解決しそうな時の事

 俺は昨日の事を書類にまとめている。ラクダ放牧計画だ。

 一頭の大体の値段、毛と乳の採取、元々過酷な状況下での運用を想定されており、馬より体格も大きく、内陸の荷物の運搬に使える事を、イラスト付きで書いた。

「というわけで二百日くらいで届きます」

「……なにが、と言う訳でなのかがわかりませんし、別にカームさんが決めた事ですのである程度問題はありませんが、馬車は島内で使わないのでしょうか?」

「使いますよ。ただ馬よりはストレスに多少強いですし、毛も期待できるのでラクダもって事です。まだ島の外周くらいしか開拓できてませんし、馬よりは早めに運用もできそうかな? と」

「そうですか。それにしても……絵が何というか、ちょっと癖のあるわかりやすさがありますね」

「特徴しか描いてませんし」

 ラクダなんかデフォルメ入ってるし、人なんか棒人間だしな。

「羊や牛はどうするんです?」

「そうですね、高温多湿に強い物をつれてくるしかないですね。本当牛の乳やバターがないと、お菓子を作るのにも苦労します。大抵は前提が多いですからね」

「後半はほぼ私情ですよね?」

「えぇ。まぁ農耕用にも使えますからね。全ての問題点として、海運って事なんですよね……」

「カームさんの、転移魔法陣がもう少し大きければ、一日一回くらい飛んでもらうんですけどね。魔力は自然回復ですから、使わないともったいないですよね? 五十日あれば運び終わりますし、経費も浮きますよね」

 ルッシュさんは、もんのすごい笑顔で首を傾げて言ってきた。

「そうっすね……」

 なんかクソ恐ろしい事を言ったぞ? どうにかなりませんか? って顔だな。まぁ無理な物は無理なんだけど――

「あー」

 クソ気が乗らないけど、手はない訳じゃないな。

「ちょっと心当たりがありますので、少し出かけてきます」

「えぇ、お気をつけて」

 島に奴隷を連れて来た魔王部下が、門みたいなので連れて来てたしな。本気で気が乗らないけど、行くしかねぇ!

 書き置き残しておこう、死んだら最悪だし。ウルレさんに、ちょっと大魔王様の城行ってくる! とか言いにくいし。

 俺は一回だけ連れてこられた時の、ドアノブや取っ手のない部屋を思い浮かべ転移する。


「懐かしい……」

 あのときのままだ、とりあえず開けてもらわないと。

 とりあえず鉄製っぽいドアを、中指でコンコンと叩くがものすごく重くて厚い雰囲気だけはわかった。だって音が響かないし。仕方がないので覗き窓を叩くと、あの時の兵士さんが覗き窓を開けてくれた。

「お久しぶりです」

「あー、少し前に見た……。あ、寒村出身で魔法系の、島に行ってもらった新しい魔王様……もう新しいって言うのも失礼だな」

「そうですそうです、ちょっと用事というか、教えて欲しい魔法ができたので、伺わせていただきました」

「今開けるから待っててくれ」

 そう言って覗き窓を閉め、軽そうにドアを開けてくれた。なんか鉄じゃなさそう。軽そうに開けてるし、超怪力って感じでもなさそうだし。

「で、何の用だ? ここに来た全員、一応俺が取り次ぐ事になってるんだ、滅多に使われないからな」

「俺をここに連れてきた、小さい妖精族っぽい方いるじゃないですか? あの方にちょっと聞きたいことがありまして」

「あーはいはい、呼んできますので待合室に案内しますね」

 兵士さんはドアを閉め、鍵をかけてしっかりと閉まってるかを確認してから俺を案内してくれた。指さし確認までしてるし、かなり慎重だな。


「では呼んできますので、少々お待ち下さい」

「ありがとうございます」

 俺は兵士さんにお礼を言ってイスに座るが、もしかしてここって、とある王都の城の玉座の裏側とかじゃないよな。大魔王様が王様なんだし、俺を魔王にした後に直ぐにいなくなったのも、王様の業務があったからかな?

 口に手を当てて考えていたが、いきなり肩を叩かれた。

「うおぁ!」

「やぁ、君から来るなんて初めてだよね? 僕に何の用だい?」

 どこから現れた? 出入り口は一つだし。わざわざ転移で来てる?

「島に奴隷を連れてきた時に、空間を歪めて門みたいなのを作っていたじゃないですか。アレを教えてもらおうかと思いまして」

「ダメだね、侵略防止の為に教えられない決まりになっている」

 魔王部下さんはテーブルに座り、俺をにらみつけるように言った。あー侵略にも使えるか。便利な移動手段としか考えてなかったわ。

 最新技術を軍事に使うか、医療やロボに使うかでお国柄が分かれるとかあったけど、俺はまだ日本人してるみたいだ。

「そうですか……。なら諦めます、ありがとうございました」

「んー、もう少し食い下がると思ったんだけど――」

 部下さんは少しだけ困っている。俺はあんた達に勝てる気がしないから、無理な物は無理でさっさと諦めるぞ。

「いやいや、防犯上の理由なら仕方ないですよ。大群でこの城とかに乗り込まれる心配をしてるんですよね?」

「え? 人族の国とかだけど? まさかそっちで考えてるとは思わなかったよ。意外に謀反とか考えちゃうタイプ?」

「むしろ俺が謀反を起こすと思ってたんですか? 物凄く便利そうだから教えてもらおうかな? って単純な理由ですよ」

「んー。教えてもらえたら、なにをしたかったか教えてくれる?」

「えぇ、いいですよ」

 俺は大型の家畜の大移動目的で、経費削減や有り余った魔力を消費しないで過ごしてる事も多くて、なんかもったいないと言われ、どうせなら一日の終わりにでも消費したらどうです? 的な事を事務の女性(ルッシュさん)に言われた事を伝えた。


「んー、一理ある。寝てても回復するなら、一日の終わりに多少消費していてもいいかもね。確かにもったいない」

「ですよね? 転移中にはみ出した物が千切れたりするのが怖いので、大型の動物とかと一緒に移動できないんですよ。転移後に前足からない牛とか隣にいたら泣きますよ?」

「二つの意味で?」

「ん? あぁ値段的にですか。そうですね、内臓がどろりしてる牛とか見たくないですし、金銭面でも泣きたくなります」

「ははは、相変わらず優しい魔王だね君も」

 部下さんは、足をブラブラさせながら面白そうに笑っている。こっちとしては冗談じゃない。残された前半分とか、五分くらい生きてそうでさらに怖いわ。

「ちょーっと魔王様に相談してくるね」

「……え?」

 部下さんはそう言うと、テーブルから降りて転移してしまった。城内くらい歩いてくれ。俺を案内した時のように。


 しばらくイスに座って待ち、なんとなくテーブルに指を軽くトントンとし始めた頃、部下さんが転移で戻ってきた。大魔王様と一緒に。

「久しいな」

「お久しぶりです!」

 俺はイスを倒しながら立ち上がり、挨拶をした。

「落ち着け、そして座れ」

「はい」

 俺はイスを立て、ゆっくりと座った。なんで来るんだよ。兼業で忙しいんじゃないのかよ。

「いつも通りに話せ。なぜこの城に乗り込まないと言ったんだ?」

 何でそこに反応するかな……。

「大勢で乗り込んでも魔王様に勝てる気がしませんし。死にたくないですし」

「ほう。てっきり勇者達と、ここに乗り込んでくる為と思っていたが……」

「そんな事はしませんよ。最近島に来た勇者は魔族と恋仲で、たぶん毎日ちちくりあってますし。もう一人の勇者の知り合いも、好みの奴隷を買って仲良く暮らしてます。そんな人達が決死隊になると思います? 勇者は元の世界に戻れないから、こっちでのんびりやろうと動いてます。頼ってる技術系勇者も、城のメイドとそろそろいい感じになりそうでしたし」

 魔王様は、部下さんが持ってきた果実酒を飲んでいる。続けていいのかな?

「あの人達は、自分の生活基盤が宙に浮いている状態でしたので、反乱を企てて、捨て駒扱いされない、普通の人族として生きる権利を得ただけです。たぶんもう魔族とか殺そうとしませんよ。呼ばれた場所のお国柄で、なるべく平和を好みます。偏見もないですし。だって島にいる勇者の恋仲になってる魔族は、俺みたいな肌をした、普通の魔族とは違ってかなり見た目に癖のある夢魔族ですし」

 最後に北川の事を言ったら、大魔王様が少しむせた。予想外だったんだろうか? 笑いのツボがわからん。

「わかった、転移門とまではいかないが、大型の家畜が移動できる程度に大きい転移魔法陣を教えてやれ。業務に戻るぞ……それにしても、随分と好き者だなぁ人族は。いや、勇者にはいるみたいだな」

 大魔王様はそう言うと、魔法陣を展開せずにいきなり目の前から消えた。ドアは開いた様子なし、イスも動いてない。やっぱりさっきのも転移なんだろうか? 絶対に勝てないなコレ。

 けど、北川はいろいろ拗らせてる結果だけどな。イケメンオタクだし。

「じゃあ、そのラクダって奴が余裕で入れる奴でも教えるよ」

「ありがとうございます」


「うんいい感じだね」

「ありがとうございます」

「けどね、これは大きくなる毎に魔力の消費量もかなり増えるから、注意だけはしてね」

「わかりました。注意します」

 俺は、初めて転移魔法陣を教わった時みたいに、また紙を渡され、よく見なくても模様が全然違う事が直ぐにわかった。

 単に魔力を多く流せば良いって訳じゃなく、対策はしっかりされているみたいだ。テレポートβっぽい?

「そういえば魔王様が消えましたが、アレも転移系で?」

「そうだね。ただ……あれこそ限られた人にしか教えられないから、諦めて」

「えぇ、わかりました。足下に陣が出ずに、光もしないで素早く移動って、使い勝手が良すぎですからね。戦闘中に使われたらどうにもなりませんし」

「わかってるじゃないか」

「けど俺だったら、移動が面倒くさいからそればかり使いそうです」

「そうなんだよね……。魔王様もああ見えて少しずぼらでね。歩いても良い距離なのに、あの転移を直ぐ使うんだよ。玉座から自室まで歩いても良いと思わない? 業務が終わったら、即、自室。たぶん魔王を辞めたら、自堕落になるよ。絶対!」

 そんな力強く言わなくても……。忠誠心高そうでも、グチはこぼすんだな……。

「そうなんですか。中庭の散歩とか?」

「絶対しないだろうね!」

 さっきよりかなり力強く言われた。

「……そうっすか」

「そうっす」

「では、ありがとうございました。これで大型の家畜が運べます」

「君がそういう性格で良かったよ。最悪殺すところだったよ?」

「ははは。そういうのは面倒でしょうけど、乗り込んできてから殺して下さい」

「魔王様と対等に渡り合える勇者達を、連れ込まれるのを未然に防ぐためだよ。まぁ、まだそんな奴は確認はされてないけどね」

「このまま平和が続けばいいですね。魔王様の奥様とかお子様は? いるんですか?」

「魔王様の好みがわからない。いたらいたで世継ぎとかで問題になりそう。世襲制じゃないけどね。強いのが王様になるし魔王になる」

「そうっすか……。今日はありがとうございました」

 少しだけ気まずくなったので、俺は足下に普通の転移魔法陣を起動したら、部下さんが笑顔で手を振ってくれた。何となくだけど、少しだけ親しくなれた気がする。


 執務室に誰もいなかったので、事務所に行くとウルレさん達がお茶を飲んでいた。

「ただいま戻りました。転移魔法陣の大きいの覚えてきましたよ」

「本当に教えてもらってきたんですか!?」

「理由を話したら、確かにもったいないね。って」

 色々端折り、大魔王様の事も伏せた。だって言えるはずないし。

「後で試験運用してから、ちょっとずつ運びましょう。榎本さんとかと一緒に牛選びも計画しないとな」

 俺は【熱湯】を浮かせティーポットに入れ、自分のカップを棚から勝手に出し、注いでから気が付いた。またテーラーさんの仕事を奪ってしまった気がする。

転移魔法陣のグレードアップは、かなり前に決まっていました。問題はいつにするかだけでした。

ラクダの件ですが、動物園様からの返事が17時少し前にありました。

ですので、教えていただいた知識+ファンタジーラクダ+ネットだけで拾えた情報で行けると思います思います。

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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