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第194話 最初から悪友的な位置にいた時の事

GW中だったので二話書きました。これは二話目です。

 あれから三日後、今度は魔族側の入島者受け入れの為に第四村の集合住宅のキッチンを借りて、料理を作っている。

 寸胴に水と鳥肉、玉ねぎやニンジン、セロリや香辛料類を入れて、グツグツさせないように、綺麗に灰汁を取りながら煮込んでいる。

「おいカーム、一気に高火力で煮込んじまえよ、面倒くせぇ」

「綺麗なスープ作ってんのに、灰汁が濁るだろう。豚骨スープじゃないんだからこれでいいの」

 俺は笑顔で灰汁を取りながら、三時間ほど寸胴の前に陣取っている。

 ふふーん、金色に輝く黄金色のスープだ。やっぱりこういうのは弱火でじっくりと煮込むのがいい。別に高火力が悪いって訳じゃないが、折角綺麗に澄んでるんだから、ここで台無しには出来ない。

「ってかよ、仕事はどうしたんだよ」

「目下さぼり中」

 まぁ、ある程度の書類系は後日どうにかなるし、ルッシュさんには許可を得ている。ってか魔族側から入島者が来たら呼びに戻らないといけないんだけどね。

 もうこの間の事があるから、直接西側に船でこい! って事にした。鉢植えとして船に乗ってるフルールさんを通して。

 まぁ、料理の続きだ。ある意味ストレス発散だからな。大量の玉ねぎと人参、トマトをみじん切りにしてスープに入れ、ジャガイモは一口大にしていれる。

 みじん切りにした奴は、溶けるような食感でもいいしな。

 折角だし、出汁として使った鶏肉はボソボソしてると思うから、豚肉とミンチにして肉団子にして入れちゃえ。この辺は適当でいいんだよ! あとは出来上がり直前で、適当に千切ったキャベツを入れて、少ししんなりさせればスープは完成。

 メインだけど、面倒だからフィッシュサンドとカツサンドにして作り置き状態だな。

 幸いにもガウリさんや漁班長に頼めば、魚は沢山取って来てくれるから下処理をきっちりして揚げるだけ。

「北川、キャベツの千切りできる?」

「あん? それくらいまかせろ」

「ほい、いま揚げてるフライはフィッシュサンドにするから、それに挟む奴だから雑でもいいぞ」

「あいよ」

「カームさんって、本当に料理の手際良いですよね」

 フォルマさんが気になったのか、そんな事を聞いてきた。

「慣れですかねー」

 俺は料理の続きをするが、馴れ初めが気になってたので、揚げ物をしながら聞いてみた。

「で、馴れ初めってどんな感じだったんです?」

「俺が娼館に――」

「お前じゃねぇよ、フォルマさんに聞いてんだよ」

 俺は北川の言葉を遮り、スープの味見をして、少し塩を足しながらフォルマさんの言葉を待った。

「そうですねぇ、最初はあまり乗り気じゃなかったんですが、やっぱり持久力と量ですかね? 魔力はちょっと少ないんですが、それを補えるほどの生命力が魅力的でしたね。あと夢魔族相手にストレートな告白でしょうか。数回通われて、毎回のように情事中に告白されてましたし」

「そうっすか……」

 夢魔族相手に馴れ初め聞いた俺が馬鹿だった。他人の性事情になる事確実じゃないかよ。

「かなり好みだったからな、頑張った。料理は出来ないけど、昼は淑女、夜は娼婦だ」

「うるせぇよ。夢魔族なんだから夜は当たり前だろ!」

 ってかこんな格好してるのに、昼間を淑女と言い張る北川もどうかと思う。

「そういえばお前もそうだったっけ」

 北川は、そう言いながらキャベツをザックザックと切っており、チラ見したらキャベツがかなり太かった。千切りじゃなくて百切りくらいだった。

「おい、それ千切りじゃねぇだろ。お前は揚げ物見てろ」

 先日来た人族達に手伝わせようと思ったけど、まだ本格的に仕事とかさせてないし、前回の歓迎会は本格的な物じゃない事を伝え断った。

 北川? うん、こいつはいいんだよ。勇者だし。付き合いは短いけど悪友みたいな感じで裏表ないし、付き合いやすいし。


 スープよし、サンドイッチ系よし、酒よし! 子供用の昨日作ったクッキーよし! 全ての準備が整い、現在進行形でルッシュさんが戸籍登録してるし、これが終われば歓迎会が出来る。

「カームさん、終わりました」

「わかりました。んじゃ始めましょうか」

 俺は皆が集まる前に行き、昨日考えて何回か練習した挨拶をした。

「さて皆さん、ここの島の事は色々と聞いていると思います。その噂は多分半分くらいは本当でしょう。まぁ、そんなのここに来たら関係ありません、俺は皆さんを平等に扱います。先日人族の方には話しましたし、魔族の方には酒場の募集の紙にも色々な注意書きがあったかと思います。ですがこの場で言います、この村には魔族と人族、両方の方に住んでいただきます」

 うん、特に今のところ野次が飛んでくるとかはないな。

「セレナイト、コランダム、両方の港町には少なからず両方の種族の方が滞在しています。なので俺は、わだかまりなく皆さんが過ごせる事を願っています。ただ、村長役として年上の方を尊重し、人族の方になっていただく予定ですが、なるべく公平に不平不満なく過ごしてもら……いたいと思います……。こういう話は長くなると嫌われますので、これくらいにしておきましょう。皆様、カップにお酒は満たされていますか? お子様達、果物を使った飲み物……持ってるね。では……何に乾杯するかな……取りあえず乾杯!」

 俺は演説途中に上機嫌でやって来た、ピンク色の髪の女性にカップをぶつけた。もう何も言うまい……。ってか途中で切り上げたのって姐さんの圧力が強かったからなんだけどね……。

 結婚式のスピーチより短いのに……。

 しかも北川は姐さんの事を警戒してるし、キースにはルッシュさんに近づく男がいないか見張ってろって言われるし……、結構気をつかう。人族はこの間の話でわかってるし、魔族もトローさんから話を聞いてるのか、手を出そうとしないのは救いだ。

 とりあえず今のところは問題ないな。明日になったら仕事の話でもするか。



 翌日、俺は朝食前に第四村に転移し、事前に決めてもらっていた村長に戸籍表を見ながら話しかける。多分特徴があってるし、この人が村長だろう。だってそう書いてあるし。

「少しお時間よろしいですかね? 取りあえず仕事の内容ですが、当面はこの赤い実の収穫と、辺りを開墾しつつ、畑を管理しやすいように作る事を優先的に進めるようにしてください。道具はちょっと(・・・・)良い物を持って来たので楽になると思います」

「えぇ、それは構いませんが……」

「俺もちょこちょこ顔出したりしますので。当面の目標は、村全員分の麦が確保できるくらいですかね? 前回の秋に少し多めに麦を作ったので、収穫までの麦は、計算上は余分に確保できてますので。あとはそちらの裁量で勧めて下さい。ある程度開墾できて、落ち着いたら本格的な第四村の方針を言いますので」

「あの、開墾ってかなり大変なのですが、のんびり構えていて平気なんでしょうか? 秋の収穫に間に合いませんよ?」

 あー、村長は全部人力でやるつもりでいるから、少し不安な顔なんだな。

「安心して下さい。ちょっとこちらへ……」

 俺は村長を木のある所まで連れて行き、【チェーンソーもどき】と、魔法での根起こしを実際に見せ、畑作りもある程度魔法でどうにかなるのを実際に見せた。

「おぉ! これは……」

 すごく驚いてるなぁ。実際に寒村出身で、開墾の大変さを知ってるんだろうなぁ。

「それとこれが、各村である程度使いまわししてる開墾用の道具ですね」

 マチェットと斧を一組程持って来ていたので、村長に渡してみる。

「軽い……」

「試しに、木を切りつけてみてください」

 そう促すと、村長は木に切りかかった。

「おぉ!」

 やっぱり驚くよなぁ……。ミスリルだし。誰も農具にミスリル使うとか思うまい。

 料理に使ってたフライパンと包丁もそうなんですけどね……。

「ある程度は、話し合いで決めて下さい。では、昼食後にでもまた来ますね」


 俺は昼食を食べ終わらせ、第四村に転移すると、大人数で木に紐を縛り付けているところだった。切る木を選んでるんだろうなぁ。

「おっす、手伝ってくれるんだって?」

 少し離れて見ていたら、いきなり後ろから北川に話しかけられた。普段着なのか、ラフな格好で剣だけを腰に下げていた。

「まぁな。開墾が一番大変だから、手伝わないとね」

「そうか? 木くらいなら剣で切れるだろう」

「ん? それマジでいってるの?」

 勇者すげぇな。これが召喚者のステータスうんぬんのメリットか。

「え? 切れないの?」

「勇者すげぇ! 俺なんかこんな魔法使わないと切れないぜ?」

 そう言って【チェーンソーもどき】を発動させる。

「うお、その魔法かっこいい。なんかモンスター倒してくゲームの近接武器みたいだ」

「神だって殺せるぜ? 血まみれになるから攻撃に使った事ないけどな」

 お互い笑いながら紐の付いてる木の方に向かった。そして北川が剣を抜いて、少し斜め気味に振るったら、木が少しだけ滑り、ゆっくりと倒れた。

「おー。凄いけどクソ危ないな。ちゃんと倒す方向選んで、受け口切ってから切れよ」

「なんだそれ」

「んじゃ見てろ」

 俺は周りに人がいない事を確認し、倒す方向に受け口を切ってから、追い口を切りはじめ、半分くらいまで来たら後は自然に倒れていった。

「これがチェーンソーでの正しい切り方だ」

「んなの知らねぇよ。ってかチェーンソー持った事ねぇよ」

「なら仕方ない。基本安全第一だから諦めるか。受け口切ってから横薙ぎで切るんだな」

「切り株はどうするんだよ」

「俺が魔法で抜く」

 そう言って、土を盛り上げるイメージで切株を強引に持ち上げる。

「な? 村を新しく作ってから森を開拓する時は、大抵俺が手を貸してる。根起こしだけは大変だからな。後はこの木を、大工に任せて加工させれば個人の家が建つ。その辺は村長の裁量次第だけど、第四村の入島者リストに、大工が数名いたはずだ。だからどうにかなるだろ」

「おまえ、この島の指導者じゃねぇの?」

「表向きはな。なんだかんだで成り行きでこうなってる。かなり面倒くさい。会田さんのほうが大変だと思うけど、本当に面倒くさい。けどあとで楽したいから、今を一生懸命苦労してる」

「なら、なんでこんな事してんだよ」

「魔王になって、俺だけだったら小屋作って住んでたかもしれない。けど部下がいたし、好きにしていいって言われたから、生きるために交易から始めて今!」

 途中四年くらいの過程すっ飛ばしたけど、大体合ってる。

「なんとなくわかった。だから適当にやってろって事か」

「そうそう。ちなみにその適当ってどっちの適当だ?」

 心配だったので、一応聞いてみた。

「状態、要求などにちょうどよく合う事。度合がちょうどよい事」

 いい加減の方だったら注意したけど、そういう認識ならいい。

「そっちならいいんだ。んじゃ村長と話し合って伐採はじめるわ……」

 村長と話をして、集合住宅の手前から木を切り倒して、切株を起こしていく。

「おい北川、力が強いなら丸太を運んでくれ」

「みんな丸太は持ったな!」

 俺が指示をしたら、そんな事を言って来た。マジで止めて欲しい。

「やっぱり北川は頼りになるな!」

 それっぽい言葉で返したら、北川が噴出し凄く笑っている。日本出身者がいるだけで、少し楽しくなるな。

 ただ、あんまりこっちの世界の人前で、日本ネタを使うのもどうかと思うから、今後は個人的に自重したい。

 けど、ある意味現役勇者か……。榎本さんや織田さんとは違うタイプの戦闘系だから、防衛面での島民の自衛できる程度の戦闘訓練を本格的に始めてもいいかもしれない。

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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