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魔王になったら領地が無人島だった  作者: 昼寝する亡霊
無人島開拓三年目

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第186話 計画案を練り直した時の事

 あれから俺は、どうやったら倉庫を借りられるかを詰め所で聞き、そういうのを管理している下級区用の役場っぽい所に行く。

「あんなところに倉庫なんかあったかなぁ?」

 そんな事を言いながら、受付の男性は、番付けされてる下級区の地図を出すがどう見ても古い。

 見覚えのある道と、防壁近くの統一されてない縮尺から、この辺ですと俺が指を指す。書類を持って来たら借りてる人がまだいて、土地価格も当時のままだった。

 けど代金が支払われてる様子もなく、治安が悪いから近寄らない、確認しに行かない。

 ある意味すごい管理だった。

「どのくらい前に、その人が借りてるんですか?」

「えーっとですね」

 受付の男性は、書類を指でなぞりながらなんとか文字を読もうとしている。

「あの辺りに、ごろつきが住み始めて、治安が一気に悪くなった頃まではお金が払われてる記録があるなー。だから……。どのくらい前でしたっけー」

 受付は、奥の方にいる見た目が若い男性の方を向いて聞いている。耳が尖っているのでエルフなんだろうか?

「三十二回前の年越祭が終わった後の夏ですね」

「そうっすか……。ここ借りられます?」

 借りてる人がいるけど金が払われてない……。

「はい! どうぞどうぞ!」

 かなり杜撰(ずさん)だった。多分借りてる人は、不幸でもあったんだろう。

「三十日でどのくらいです?」

「倉庫の傷み具合と、その場所の使いやすさでちーちゃんが決めて良いよ。どうせあの辺の倉庫だから。港沿いの倉庫の半額でも良いし」

 奥の方にいたエルフが、そんな事を言ってきた。

 俺の中のエルフの概念が崩れたわ……。人生で見たの三人目だけど。


 その後、一応見に行くと言う事で、役場にいた兵士二人が同行し、先ほどの倉庫まで行く。

 そこまで治安が悪いって認識があるなら、何で対策しないんだろうか?


「ここですか。かなり古いですね。んー……。とある集団が屯(たむろ)してる場所だと報告がある場所ですが?」

「昨日排除しました」

「は? そ、そうですか。なら平気ですね。戻って契約しましょうか」

 ちーちゃんと呼ばれた受付の男性は、さっさと帰りたいらしく、仕方がないので一緒に戻った。


「見た結果かなり古いですし、治安の問題もありますので、さらに半額にしておきますね」

「そうですか、問題ないです」

 こっちのやる気もなくなってきたわ。港の倉庫の一番安い所の四分の一ならいいや。数字的にも安いし。

 そして、書類にサインをして、写しをもらって島に帰った。


 そしてルッシュさんに書類を渡して、少しだけセレナイトの書類の管理体制を愚痴ってから仕事に戻った。


◇


 翌日の昼前に織田さんを連れて、早速倉庫の下見をする事にした。

「こいつは酷いな。最悪補強も必要だぞ?」

 倉庫を見た第一声はコレだった。

「昨日の書類の条件に合うのがここだったんですよ」

「なら問題ないんじゃないか? ただ、倉庫だけだと保管場所の問題もありそうだから、ついでに両隣の民家を買い取って、改築した方がいいな。ってかこの土地の上物だけど、勝手に改築して良いのか?」

 織田さんは、俺の書いた書類をめくりながらそんな事をいっている。


「どうですかね? 最悪補助金出ますかね?」

「出ないだろうな。面倒だから、この辺一帯を借りるか買い取ったらどうだ? あの貴族とは、ある程度話が付いてるんだろ?」

「まぁ、それなりに……。けど人の移動だけですよ?」

「なら両隣の家を借りて、内装を改築して、麦と酒の倉庫と社員食堂と、見張りの休憩室や宿直にすればいい」

 両隣の空き家を指しながら、そんな話しをしていたが。

「おいてめぇら。あり金全部出し――」

 織田さんは、誰かが言いたい事を言い切る前に、腰に下げていたパイプレンチ風の、鉄で出来た鈍器を手に持って、振り向きながら容赦なく頬を殴った。

「昔は少しヤンチャしててね。こんな世界だろ? 使い慣れた物が一番だ。凪君のスコップとバールと一緒だな」

 聞いてもいないのに、そんなことを言ってきた。

 ってかそれ……。武器だったんですね。この世界にまだパイプないのに、なんでいつも持ってるのか不思議だったんだよな……。

 まぁ、武器として出てるゲームを知ってるけど。

「いや……剣とか槍とかなんか覚えられないんで、力任せにスコップ振ってるだけです。大戦時に塹壕で大活躍してた物なので。ってかせめて言い分は聞いてやりましょうよ? 人の事は言えませんけど」

 パイプレンチって、この世界じゃどう考えても短いメイスだな。

「こういうのは先手必勝。四の五の言って、脅して小銭を稼ぐなら、さっさと後ろから襲いかかれば良いのに、なんで回りくどい事するんだろうな? それに大戦後に生まれたから何ともいえないけど、そっち系の知識に強かったんだな。で、こいつは誰だろう?」

「チンピラじゃないですか? 昨日、第三村の村長のトローと対立してた頭に言い聞かせたんですけどね……。昨日の今日じゃ仕方ないか……。今回は見逃してやるか……」

「一人だし、どこにも所属してない奴かもしれんぞ? 今回は見逃しでいいんじゃないか?」

 織田さんも俺と似たような思考してたわ……。

 高度成長期後のヤンキーは怖いなぁ……。マンガそっくりだ。ってか度胸ありすぎだな。何事もなかったかのように、また倉庫のメモを取ってるし。

 こいつの頬骨大丈夫だろうか? 未だに気絶してるし。本当にヤンチャ度合いは少し(・・)だったんだろうか?

「ついでに両隣と後ろの家も改築計画立てとくか。凪君、申し訳ないがもう一度借りてきてくれ。忘れてたが後ろは燃料用だ。いや待ってくれ。向かいの家だ。その方が警備がしやすい」

 織田さんでも、多少のミスはするんだな。

「って事は、なんやかんやで元の予算内になっちゃいそうだな……」

「どうせ赤字にはなってないんだろ? 社員食堂は一般にも開放して、雇った人の儲けにさせればいい。その方が周りの理解や心情はいいだろう」

「ですね。ちょっと行ってきます。その装備なら問題はなさそうですかね?」

「仮にでも勇者だ。若い頃より力があるから平気だろう」

 織田さんはただ淡々と言い、メモを取っている。

 なんかすごく頼もしいな。俺もこんな年の取り方したいな。

 さて、もう一度ちーちゃんの所に行かないと。


「こんにちはー」

 挨拶しながら役場っぽいところに入り、辺りを見回しちーちゃんを探して、ちーちゃんの席に座った。

「前日の倉庫の件できました。両隣と向かいの空き家も貸して下さい」

 最初は、何で俺の所に来るんだよって表情だったが、倉庫の周りの家も借りたいと言ったら、速攻で関係書類を持ってきた。

「家の中の改築ってしても平気ですか?」

「どうぞどうぞ。持ち主不明ですし、土地の上に建ってるだけですので、好きにして下さい。更地にして使ってもいいですよ」

 適当すぎるだろう。けど更地の方が、使い勝手はいいんだろうな。撤去費用かからないし。

 俺は一応地図でも確認を取りつつ、書類を三枚ほど書いてさっさと終わらせ、倉庫の方に戻ると足下にもう一人寝転がってる奴が増えていた。

「どうしたんですか?」

 何があったか聞かなくてもわかるが、一応聞いてしまった

「どうも人族が一人でいると、襲われる程度には治安が悪いらしい」

「そうですか……。まぁそのうち気がつくでしょう。返り討ちにされる覚悟があって襲ってるんでしょうから」

「だな、殺される勇気がある奴だけ殺せ……ってやつだな」

 その後は、ただ淡々と織田さんのメモを取る手伝いをしていた。

「倉庫として使う家は、扉を大きくして、内装や壁を壊せば問題ない。食堂も同じだな。あとは竈を増やすだけだな。ある程度の強度を保てるように図面は描いておくから、そっちで業者を探してくれ。では帰ろう」

「わかりました。で、足下に転がってる奴どうします?」

「そこまでは責任とれないな。襲ってきた奴がわるい」

「ですよね……。んじゃ帰りましょうか」


 島に戻り、織田さんを事務所前に送る。

「必要な資材の計算ができたら、フルールを使って連絡する、そこから先は任せる」

「わかりました。ありがとうございました」

 俺は丁寧に頭を下げ、自分も執務室前に帰る。

 うん、勇者やっぱ怖いわ。ってか織田さんが怖い。使い慣れてるって言葉が怖い。抜き身のナイフって感じの、あだ名が当時付いてない事を祈ろう。

「書類を書き足さないと……」

 そう漏らし、計画案の追加を書き、周囲の治安回復案を練る。

 周辺住民に挨拶? そんなレベルじゃねぇしな。

 必要悪として、この間警告した奴に活躍してもらうか? けどあんな事しちゃったしな……。

 ブルーライトで闇夜を照らす? 前世なら多分やってた。

 やっぱり、正式な謝罪と交渉が早いし低コストか? 表向きは奴が管理してるように思わせて、裏には俺(島)がいる。

 なんか悪の組織っぽいけど、この場合は必要悪が最善な気がする。俺の島で好き勝手するんじゃねぇ。ってなかんじで。

 増長すればこっちが出張ればいいし。

 世紀末だって、あの長男がいたから、悪人だってある程度統率がとれてたし。

 あー、名前聞いておけばよかったな。けど今トローさんに聞きに行くのも面倒だし、フルールさん使うまででもないし……。

 対立者? そんなかっこいいのは必要ないな。仮にAにしておくか。

 考えが纏まったので、メモに必要悪の案と理由を書き、どのように管理するかも書く。

 この世界で悪人って、犯罪奴隷以外で利用されてるのか?

 まぁ、トローさんがいなくなってある程度治安も回復したし、治安が一定以上回復したら、就職させて解散の方向でいいか。

 その頃には、あの辺も二次産業的な何かが増えたりするかもしれない。 確実に管理するのには飴も与えないとな。恐怖だけじゃどうにもならん。もう一回話し合いの必要があるか?

 それとも洗脳? アピスさんに頼んで、幻覚剤での恐怖心……、催眠剤で催眠術……。素人の俺じゃある意味危険だな。 

 さらって倉庫に監禁して、首を縦に振るまで暴力を混ぜたお勉強会? 俺が絶対無理。

 売り上げの数パーセント? 駄目だな。利益が出ないし、Aが力を付ける可能性がある。

 かといってトローさんに色々任せると、対立してたから火に油。

 ふむ……。現状維持しつつ、何かあったら考えようかな。けど初犯で火付けとかマジで勘弁だな。

 防犯対策の専門家じゃないからな。案が浮かばない。俺ができるのは、自己防衛だけだ。

 先に挨拶代わりの振る舞い、周辺住民を味方にするのが妥当か……。蒸留所ができるまでの安全が、酒とお菓子で買えれば安いな。これでいくか。

 施設ができあがってからの振る舞いの部分を消し、先にあるもので振る舞い、周辺住民への理解と繋がりを重視する方向に変更しておいた。

 蒸留所ができるまでの日雇いも、専門的な物じゃなければ現地雇用と書き加える。

 そして必要悪の説明をルッシュさんにしようと思う。

「ルッシュさん、ちょっといいですか? 蒸留所の計画書なんですけど……。あと必要悪の説明を」

「えぇ、平気です。読ませてもらいますね」

 ルッシュさんは、書いている書類の手を一時的に止め、計画書に目を通し始めた。

「現地の状態は良くわかりました。周辺住民への振る舞いは、先にやって、修繕にかかる費用はオダさん待ちで終わりですね。そして必要悪ですが……」

 ルッシュさんはそういって、必要悪のページを読んでいる。

「一定の犯罪者組織を置くことによって、他の犯罪者の抑制って事でよろしいですか?」

「そうですね、そんな認識で問題ありません。そして、その犯罪者組織の代表には、すでに話しをつけてあります」

「……そうですか。一応どんな事をしたかお聞きしても?」

 俺は、昨日の事と今日の事を話した。

「トローさんはわかります。カームさんもたまに暴力を使う事もわかります。けどオダさんがそんな事を……。本当に勇者だったんですね」

 俺もそう思った。初めて会ったときは剣を持ってたけど、持ってるだけでも、反撃しますよアピールできるからな。訳わからないのを腰に下げてるよりは、色々抑止できる。

 けどパイプレンチって……。考えが十年以上前の俺と同じだよ……。

 マジであの人若い頃何してたんだよ……。

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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