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第156話 恥ずかしいところを見られた時の事

「ようこそアクアマリンへ糞野郎共! 良いか貴様等! この島は俺様のもんだぁ! イカレた島によく来る気になれたなぁ! 死にたくなければ死ぬ気で働くんだなぁ!」

 俺は、片目を細め舌を出しつつブラブラとさせ、ゲス顔で少し首を傾げて中指を立て、左手に【黒曜石のナイフ】を出しつつ、小物臭がする感じで、絶対にしないような事をして、ヒャッハーしていた。

 なんでかって? 執務室で書類の最終チェックを何十枚もしてて、息抜きしたくなったからだよ!

「……何をしているんですか?」

 目の前のドアがいきなり開いて、ルッシュさんと目があった。

「あ、いぇ……セレナイトから自主的に入島者が来るので、ちょっと練習を……ノックしました?」

「えぇ、中から大声が聞こえたので、多分息抜きでナニかをしつつ、聞こえない程度には騒いでると思い、失礼かと思いましたが入室しました」

「あ、はい……」

「できあがってる書類だけ持って行きますね、失礼します」

「あ、はい。お願いします」

 何か言ってくれた方が、まだ救いようがあった気がする。俺の心的に……。死にたくなるほど、変に恥ずかしい。

 そのいつも通りの対応が、こういう時の恥ずかしさを更に倍増させるんだよなぁ。



 それから四日後、船は問題なく島に着き、セルピさんと孤児院を卒業した十二(・・)人が来島した。

「ようこそアクアマリンへ。他の島民はわかりませんが、俺は君達を歓迎します。もし島民に歓迎されたいのなら規律を守り、明るく過ごしましょう。幸いにも収穫祭間際ですので、早く打ち解けられると思います」

 ってか多いな。一桁くらいだと思ったのに、考えが安易だったわ。

「というわけで、簡単な入島審査をします。審査と言っても戸籍管理の為に名前を聞いたり、得手不得手を調べるだけですので安心して下さい。では、私から見て右手側の女性からどうぞ」

 入島者が孤児院から自主的に来るという事で、本格的に戸籍管理もしましょうってなり、あれから直ぐにルッシュさんに急かされ、島内を転移して、第二、第三村にいる島民の名前と、誰と同棲しているか程度の事を調べて周り、五日で全部終わらせた。

 ちなみにハーピー族と、水生系魔族は聞ける範囲で聞いて回った。クラーテルの姐さんの住んでる場所は噴火口となっている。多分この書類が朽ち果てて無くなるまで、居座りそうだけどな。ってか酒を作り続ける限り、この島から出なさそう。ってか寿命まで居続けられるな。

「カームさん、終わりました」

 そんな声で現実に引き戻され、平底船で物資を運びつつ、セルピさんを含む全員を、第三村のある島の北側まで移動した。

 移動中に軽い雑談をするが、セルピさんの教育がいいのか、全員まじめと思える感じだ。まぁ、緊張してるからそうだと思うけど。慣れてきたら、いつも通りだろうな。


 第三村近くの岸まで、引っ張ってくれてたのは顔だけ魚のガウリさんだった。

「お疲れさまです」

「おう、これくらい何ともないさ。んじゃ君達、多分直ぐに慣れると思うが、がんばってくれ」

 そう言って、いつまでも慣れない外見の人に言われ、違和感の固まりが良い事を言って、乾燥したコーヒー豆を満載にしてある船を、引っ張って帰っていった。

 その頃には、トローさんが変な笑顔でこっちにやってきた。

「お、おう。とりあえず色々説明するから、ついて来てくれ……。母さん、悪いけどこいつ等に色々説明しなくちゃなんねぇから、積もる話はイセリアとしてくれ」

 顔に変な汗を垂らしながら、皆を連れて行ってしまった。どんだけセルピさんが怖いんだよ……。

「あんなに頼りがいのある子に育ってくれて、私はうれしいです」

「まぁ、なんだかんだで良い奴なんで、良い村長ぽい事やってますよ」

「そうですか。では、私はイセリアと話そうと思いますので、案内をお願いできますか?」

 セルピさんはにっこりと笑い、頭の蛇はさっさと連れて行けと威嚇するように鎌首をもたげていた。

「こちらです」

 表情と頭の蛇を同調させてくれ。ってか、これでイセリアさんの生活環境が最悪だったら、俺はあの尻尾で思い切り殴られて吹き飛ばれてたかもしれない。

 いつも通り、イスに座ってコーヒーの果肉剥いててくれて助かったけど。

「あ、お母さん」

「座ったままで良いですよ」

 立ち上がろうとしていたイセリアさんを手で止めて、近づいて、体を触ったり、服を見ていた。定期的に帰ってる時だけ、小綺麗にしてもらえてると思っていたんだろうか?

「定期的に会っていると思いますが、雑談でもしてて下さい。その辺の休憩所から、お茶でも淹れて持ってきますので」

「ありがとうございます」

 折角だしコーヒーでいいか。多分あるだろう。


 コーヒーを淹れて戻ると、二人は笑顔でコーヒーの果肉を剥いてた。

「思っていたより手間ですね、これ」

「ね、言ったとおりでしょ? けど、あまり力を使わないし、私にぴったりだよ?」

 うーん、微笑ましい。多少、ハンディーキャップを持っている人でも働けるって事が伝われば、そういった方でも意欲的に働けると思うし、コーヒー豆の備蓄も増やせるな。入島希望の人は、無料で船に乗せるか?

「どうぞ、噂で聞いた事があるかもしれませんし、飲んだことがあるかもしれませんが、(ソレ)コーヒー(コレ)になります。いつもいただいてるお茶より飲みにくいと思うので、砂糖も一緒にどうぞ」

「ありがとうございます」

 そう言って、一口だけ飲んでから、砂糖を多めに入れている。その様子をイセリアさんがニコニコと見ていた。血は繋がってなくても、親子してるなぁ。

 俺も砂糖を多めに入れ、休憩につき合いつつ雑談をする事にした。

「そういえば、思っていた以上に入島希望者が多かったですが、何で多かったのか聞いても良いですか?」

「かまいませんよ。この時期は孤児院を卒業する者が多くてですね。イセリアの話を聞いた子供達が、アクアマリンに行くと言いだし、多少遅い早いはありますが、この時期に卒業する子供達が全員島に行くなら、一回で済ませようと言う事で、このような人数になりました」

「そうでしたか……。多分ですが、その……、年越祭の後にしちゃって、子供ができちゃったって感じではないでしょうか? なんだかんだ言って自分も収穫祭近くの頃の生まれですし、娘もその頃です。まぁ、雪で外にでる機会が無く、その頃にせがまれた子ですので、年越祭という特別な節目に多少ハメをはずすか、話し合って作った子だと思います」

 姫始めとか性夜とか言葉があったし、こっちでも祭りの日に、そう言う事してたクラスメイトとかいたからな。まぁ俺もだけどな。

「……そうですか。そう言われてみれば、納得ができるような……。まぁセレナイトは年越祭近くても暖かく、家に籠もる事はありませんが、似たような感じではありますね」

「あー、確かに町が少し浮ついていたような……」

 セルピさんは淡々と言い、イセリアさんは顔を少しだけ赤くして、何かを思い出したかのように言った。

「聞きにくい事なんですが、孤児院で子供を作る方法とか教えてました?」

 そう言うのは、恥ずかしがらずに真面目に聞いた方が、双方に色々なダメージは少ないと思う。

「えぇ、大体色々始まる五歳くらいには教えてます。男女別の大部屋ですので間違えはないと思っていますが、早い方が確実に間違いは回避できます」

「でしょうね」

 さすがに孤児院の子供達同士で、五歳くらいから生殖可能な魔族が、学校卒業の頃の八歳くらいまで面倒を見るなら、対策は必要だよな。

「種族によっては早熟な子もいますし、動物の発情期に似た症状も出ますので、一応小部屋も用意はしてるんですが、そこに入るという事は、そういう事ですので、はやし立てる者も出る事があり、使用する子は少ないですね。別に恥ずかしい事では無いと思いますし、間違いが起こるよりは良いと思うのですが……。多くはありませんが、卒業後に質素な生活を送りながら、院生活中に恋仲になった子供達が一緒に生活してる例もあります。今日来た子達にもいますので、気持ちを汲んでいただきたいと思っています」

 んー、同じような境遇で長い間生活してて、思春期的な時期も一緒に過ごせば、多少なりそういう例も出てくるか。イセリアさんも、なんだかんだでトローさんの事慕ってるし。お兄ちゃんって言ってるけど、多分昔から言ってた呼び方なんだろうな。だから良い雰囲気でもお兄ちゃんって言ってるんだろうな。

 近所の年下の幼馴染みに、お兄ちゃんって呼ばれてる感じなんだろうな。爆発すればいいのに。

「お母さん、そういうのはトローお兄ちゃんに任せれば良いと思うよ。口調は荒いけど、皆に気を配ってるし」

「まぁ、イセリアがそういうのであれば……」

 何となくだけど、イセリアさんも外堀を埋めるタイプだと思う。いつも周りをついて回ったり、近くにいたりして、周りにそう思わせてる気がする。実際に俺も良い雰囲気だなーって思っちゃうし。


 コーヒーがカップから無くなり始める頃、セルピさんが真剣な顔で俺に改まって声をかけてきた。

「カームさん、お願いがあります。今回島に来たのは、魔王様に寄付の件で直接お礼を言う為なのです」

 俺はイセリアさんを見ると、軽く首を振った。普段から俺は魔王様呼ばわりされるのが嫌いだし、なるべく名前で呼んでと言ってるから、孤児院に戻ってもカームさんとしか言ってないんだろうな。

 さて……どうしようかな……。普通にばらすか、不在にしておくか。後者は問題の先送りだしなー。

「お母さん、カームさんが魔王様なんだよ。カームさんは魔王の肩書きが嫌いで、なるべく魔王ってバレないようにしてるんだと思うの」

 悩んでたら、先に言われてしまった。仕方ない。驚いて、少し思考が停止してるセルピさんに謝罪しよう。髪の毛の蛇も口を開けてるし。

「騙してて申し訳ありません、イセリアさんが言っていた通りで、魔王の称号が嫌いなのです。魔王の部下を装い、今まで接していた事をお許し下さい」

「――はっ! いえいえ、気にしていません。個人的に少し偉い身分の方が嫌いで、まさかこんな気さくな方が魔王様だなんて、思ってもいませんでしたので!」

 手を勢いよく振りながら否定している。

「あ、これからもカームさんでお願いしますね」

 最初の方は思考が停止してたな。しかもこんな(・・・)って……。まぁ否定できないけど、この島の歴代の魔王の態度が本当に気になる。前回は最悪だったらしいけど、ソレよりも前の魔王。姐さんか植物系の人たちに聞けばわかるかな?ってか、未だに魔族なのか妖精なのか精霊なのかわかんねぇんだよな。

「ではカームさん。これからも子供達をよろしくお願いします」

「わかりました、任せて下さい。それとですが、次の商船が来たらそれに乗って帰ると聞いています、よろしければセレナイトの外まで送りましょうか?」

「いえ、トローの様子を見てから帰りたいので、お構いなく。確か三日に一度定期船が寄るんですよね?」

「えぇ、寄るようになってくれましたね」

「それで帰るから平気ですよ」

「わかりました」

 そんな笑顔で言われたら、断れないじゃないか。ってかトローさんも大変だなー。今まで軽く避けてたのに、セルピさんの方からやってくるんだもんなー。多分村長的な事をしてるのを見に来たんだろうなぁ。面倒だから、もう(仮)でもはずすかな。あれ?リーダーって事にしてたんだっけ?まぁいいか。

最初の一文でタイトル回収

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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