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第149話 なんか偉い奴が来た時の事 中編

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 しばらく砂浜で待ち、小舟が到着したら男共が波打ち際に降りて、全員で小舟を押して、完全に砂浜に小船を上げた。

 そしたら、派手な女性が最初に降りてきて、残りの三人も後を追うように降りてきた。


【スキル・魅了耐性:5】を習得しました。

久しぶりに上がったな。なんかスキル的な物が常時発動してて、魅了でもしてんのか?


「そこの貴男、この島に居座る魔王と話しがしたいわ。連れて来なさい」

 派手な女性が俺を指さし、命令する。うわ、偉そう……。関わりたくねぇな。

「俺がその魔王ですが、どのようなご用件で?」

「出迎えるのに、わざわざ武装してくるとは物騒な奴ね。これがここの礼儀なのかしら?」

 あ、駄目だ。俺の嫌いなタイプだ。ある程度話だけ合わせよう。

「ははっ……、申し訳ありません。何回か大きな船で襲撃されてるので、少し敏感になってて」

「私には関係のない事だわ、それよりここは日差しが強いわね……、どこか日差しの当たらない室内に案内しなさい」

「ははっ……了解……」

 乾いた笑いしかでねぇよ。


 俺は、応接室に四人を案内し、朝に煮出しておいた麦茶をカップに注ぎ【氷】をだして入れてから、全員に配っていく。

「どうぞ」

「「ありがとうございます」」

 俺が座る正面には。派手で気の強そうな女は夢魔族で、水色の膝裏まであるロングヘアだ、前髪をオールバックにして、モミアゲを裏で結っている。大きい胸を更に強調するような服で、胸元を大きく開けている。腰付近に羽があるので、へそが見えるくらい丈が短く、パンツスタイルでへそにピアスがある。

 改めて観察すると、なんか本当に派手だな。へそピアスなんか、故郷の先生くらいしか見たことないな。ちなみに、麦茶を出した時にお礼を言われてない。それが当たり前なんだろうか?

 その隣には、地味な旦那だか従者だかわからない男。こいつもお礼を言わなかったな。

 右手には残りの女性二人。

 一人は凛々しく気が強そうなワーウルフで、常に睨んでいる様に細いつり目で、くすんだ黒のセミロングの髪を雑にまとめたポニーテールだ。露出は少なく、中肉中背の胸が少し小さめで、銀色に光る骨が付いたヘアピンで前髪を分けているが、それがワンポイントぽい。なんか見た目が怖いけど可愛いな。

 もう一人は、メイド服のロップイアーのウサ耳の女性だ。ふんわりした感じの物静かな雰囲気だ。少し小柄で胸は普通より少し大きく、肩胛骨まである藤のような薄い紫色の髪で、邪魔にならないようにポニーテールにしてからアップにしている。

 この二人も従者なんだろうか?


「ま、まぁ……とりあえず自己紹介から始めましょうか?」

 とりあえず、無難な話題から始めよう。

「えーっと。カームと言います、ベリル村と言う所に住んでましたが、魔王になってしまい、この島に赴任してきました」

「貴男がよく利用している、セレナイトも領地として持っている、カルツァ=スリップよ、我が家の紋章をよく覚えておきなさい。武装されて出迎えられたら不愉快だわ」

 んー偉そうだ、実際偉いんだろうと思うけど。

「旦那です、カルツァの補佐をしてます」

 名乗れよ……。ってかやっぱり第一子が女でも、優先的に家を継ぐみたいだな。

「クラヴァッテ様の紹介で、アクアマリン商会の書類や資金の管理を任せていただけると言われ、来島させていただきました。ルッシュです」

 服装や立ち振る舞いで、堅そうと思ったけど、本当に堅そう。ってかこの女性が頼んでた人材か。なら多少堅くてもいいな。俺なんか緩すぎるし。

「パーラーと言います、クラヴァッテ様のお屋敷で、雑務全般を任されていました。来客した方々に、自らお茶を淹れてお出しするのは、魔王としてあり得ないと嘆いていたので、私がお暇を与えられ、こちらで働くようにと推薦状ももらってきてあります」

 あら、この女性もクラヴァッテの推薦?すごくありがたいな。


 自己紹介が終わるとカルツァと言われた夢魔族の女性が、旦那に封蝋がしてある丸まっている紙を渡し、男がわざとらしく目の前で広げ、内容を読み上げる。

「この島は、季節が十五巡するくらい税を払っていない。よって、十五巡分の税と、罰として大金貨十五枚を払う事を命じる。それと、領地内で犯罪を犯した者の更正場所とするので、受け入れの準備をしておくように」

 何を言ってるんだ、この男は? まぁ、紙に書いてある事だけを言ってるんだろうけど、正気を疑う内容だな。

「えーっと……俺は魔王に任命されて、そんなに経ってませんし、なんで過去の分の税金……、ましてや他人が支配してた時期の分も払う義務があるんですか?」

「それは、この島に代々就任した魔王がよく討伐され、税を納めてなかったからだ」

 すげぇ頭痛いんですけど……。何、この超理論。こいつら偉いだけで、頭の中空っぽなのか?

「……その十五と言う数字ですが、その前はどうだったんでしょうか? 教えてくださいませんかねぇ?」

「討伐に来た人族の、荷物の中から出したと記憶してる。それ以降は魔王が弱かったか、運が悪く勇者が来て討伐された。その後は魔王が就任したら、よく勇者が来て討伐されるようになった。だから就任して、生きてこの島に住んでいる以上、税を納める義務がある」

「確かに税を納める義務があるのはわかりますよ? なんで俺が就任した時からじゃないのかが、知りたいんですよ」

「そんなの決まっているだろう。島を開拓して村を作り、人口を増やし、名産品を作って売って利益を上げ、それなりの財を持っているからだ。取れる内に取っておかないと、いつ殺されるかわからんからな。人族に後ろから刺され、この領地を奪われる可能性もある。全く、人族も魔族と変わらない生活させて……、いったい何を考えてるんだ……」

 あー駄目だ、話しになんねぇ。ここまで頭の中に花が咲いてると、逆に哀れむより、珍しい物が見れた事に感謝しないとって考えにしないとな。そう思わないと怒りに任せて、うっかり殴っちゃいそうだ。冷静に……冷静に……。COOLがHOTになっちまう。おい、ラジカセ持ってきて会話してやろうか?


「たとえ話をしましょう。俺は敵と味方を区別する時は、仲間や味方が一で、敵や嫌いな奴は十なんですよね……」

 俺は笑顔のまま続ける。

「今、お前達(・・・)は自分の中で八に格上げしました。つまり、極力関わりたくない部類ですね……。今まで何もしてくれなかったのに、島が発展してきて、金が取れそうになってきたから、税として麦や酒と言う物ではなく金をよこせと……、お前はそう言う事を言っているんだよな? コレで間違ってないと思うんだが、間違いじゃないよな?」

 所々に汚い単語を混ぜ、怒りも混ぜながら威圧的にさらに続ける。

「隣の牧場で放牧している豚が、丸々太ってきたから、それを何の苦労もなしに、かっさらっていくと言っているのと同じだよな?」

「お、おい、お前! カルツァ様に失礼だぞ!」

 お前、さっき呼び捨てだっただろ、今は従者モードか何かなのか?

「言葉使いに気をつけろよ? 今のお前等は、俺にとって敵に等しいんだからな? 今後どう出るかで俺の対応も変わる。それと、本当に領主なのか? 旗だけで、それを証明する物は一切出されてないんだが? 俺達は初対面だよな? まぁ……、話し合いを続けようじゃないか」

 カルツァは、今までこちらを馬鹿にしていたような態度だったが、片目の目尻や頬をヒクヒクさせている。

「夢魔族でそんな服を着てて、男に多少有利だと思ったら大間違いだぞ? たとえ全裸でも、俺がお前の思った通りに俺が動くと思うなよ? しかもだ……。自分が美しいとか自覚があり、多少過激な服を着てる奴の、この服装なら男相手に多少有利に物事が進むかもしれないって考えがある限り、俺はそいつを絶対に信用しない。しかもご丁寧に夢魔族だ、俺を魅了できると思っていたのか? 暑かったからって言い訳は聞かねぇからな? それに、まだ人材の引き渡しをしていません。だから、そっちに座ってる二人もこっち側じゃないって事で、今のところ疑ってます。だから、発言する場合は気をつけてくださいね?」

 ルッシュさんとパーラーさんは、場の空気が一瞬にして変わり、しかもいきなり矛先が向きそうになったので、少し涙目になっている。

「戦争が停戦になって、犯罪者の扱いに困ってるのか? 確かにこの島の太陽が沈む側に、まだ村は作っていない。確かに島民は欲しい。港町のスラムから島に移住させた事はある、けど最前線に行かなかった程度の軽犯罪者止まりだ。戦争の為に捕まった奴等を大量に連れてこられると、治安維持が大変だ。この島はゴミ捨て場じゃねぇぞ? 汚い物を遠くに捨てるように、この島に隔離すれば良いと思ってるんじゃねぇだろうな? もし殺しが起きたらどう責任をとるんだ? 俺が責任を取るのか? それこそ俺達島民の事を馬鹿にしてるよな? 言い分があるなら聞いてやる、言って見ろよ」

「カ、カルツァ様は「お前に聞いてねぇよ、俺の目の前にいる偉い奴に聞いてるんだよ。それとも身分が違いすぎて、俺と話す気にもなれねぇか?」

 カルツァを睨みつけると、ようやく口を開いた。

「今まで黙って聞いてれば、好き放題言ってくれますわね……。貴男、何様のつもりかしら? ここは私の領地でもあるのよ? 貴男は魔王かもしれないけど、大人しく領主の私に従ってればいいのよ! いいからさっき提示した条件を、大人しく全部呑んでればいいのよ! それに、この紙を見なさい! 正式な印が刻印されてるわ! 印の偽造は重罪よ! それに一般人があんな船所有できるはずがないでしょう!」

 バンバンと、テーブルに置かれた封蝋された紙を叩いている。

「そう出るんですか、そうですか……。ほぼゼロからここまで築き上げた、島民達の俺に対する信頼関係を甘く見ないで欲しいねぇ。今まで稼いだ金を、給金として全部島民に均等に配布して、ココを更地にして、島民を離島させ、その金を払わず、俺だけ住んでてもかまわないんですよ? そうすれば収益ゼロ。ゼロなら、そこから金を持って行くこともできない。施設も無いから人員を送る事も出来ない。俺は自分一人が暮らせるだけの畑があればいい。俺の覚悟はわかったか? 魔王様に与えられた領地でもあるから、形だけ留守番として住んでればいいさ。それとも俺個人の畑から、麦とジャガイモを一袋くらいもっていくか? 止めて下さい! それを持って行かれたら飢えて死ぬしかなくなります! っていいますかね? まぁ、取りあえず本物と仮定してお話を続けましょうか」

 こんな重税を課す相手の言うことを聞いて、島民を不幸にさせるくらいなら、訳を話して俺一人になった方がマシだ。まぁ最後に少し馬鹿にしたのは、大人気ないと自分でも思うけど。

 本当、俺の故郷の村が恵まれてたのがよくわかるわ。


「ってかさー、普通魔王が就任したら顔を見に来るとか、就任したのがわからなかったら、毎回税の徴収時期に誰かしら使いを出すべき何じゃないんですかね? 季節が何巡もしてるのに顔を見せないから、ここを領地にしてる貴族とかいないと思ってましたよ。こっちは転移魔法陣でとばされて、着いたのがほぼ無人島ですよ? そちらの情報なんか、全くわからないのに……。陸続きなら、こちらからどうにか情報を手に入れて、挨拶に伺う事もできたんですけどね。俺の言ってる事間違ってませんよね? 答え次第じゃ本当に更地にすんぞ?」

 指を長椅子のひじ掛けにトントンとしながら、イライラを隠すことなく長々と一方的に喋ってしまったが、相手の態度が横暴なら仕方がないと思う。

「ッ……」

「黙ってれば済む問題じゃねぇんだぞ? こっちは、今まで築き上げてきた物と大金がかかってんだ。次に黙ってたら、島民全員を解雇して島から追い出して、更地にするからな。まぁ、クラヴァッテ様の顔に泥を塗るのは申し訳ないけど、そうなるとルッシュさんとパーラーさんの雇用の件も必要無いので、この話しはなかった事でいいですね?」

 二人の方を見ると、巻き込まないで欲しいような顔をしている。まぁ、横暴な女を恨むんだな。

「カーム様、少し待っていただけないでしょうか。私は腕を買われ、クラヴァッテ様に声をかけていただき、有名なアクアマリン商会の財政や書類の管理を任せて貰えると知り、両親も大変喜んでおりました。ですので、どうか御慈悲をいただけないでしょうか」

「私は、ルッシュがクラヴァッテ様のお屋敷に挨拶しに来た時に解雇され、このアクアマリンに共に行くように命じられました。出戻りとなると色々と厳しい物がございます。どうか御一考下さいますようお願いします……」

 二人とも必死だな。まぁそうだろうなぁ。大きい商家の次女か三女となれば、どうしてもどこかの大きい商人の家に嫁入りか、働きに出るしかないからな。確かにアクアマリン商会は、好条件なんだろうな。メイドもメイドで一回解雇されると、世間体とか給料的な物で色々あるんだろうな……。

「そう言われましても、過去十五回分の税と罰金大金貨十五枚。そんなもの払えません。この女(・・・)は我々島民に飢えて死ねと言っているような物です。それに、取れる奴からとるのは当たり前としても法外すぎです。この女に借金でもして、莫大な利息を払いながら大金貨十五枚を返しますか? 季節が三十回くらい巡るまで、施設の拡張どころか、補修もできませんよ? 島民のやる気が下がりきった状態の借金まみれ。それでもここで働きたいと思いますか? その内利息の方が元金よりも増えそうですけどね」

「それは……」

「その……」

「俺がこの島に来た時からの税を、一遍に払えと言うならまだ納得できますが。そもそも、何もない場所からここまでするのに、支援という物は一切無く、私財で先行投資して、売り上げから赤字にならない用に、少しずつ俺に返してもらってるんですよ? 爵位をもらって、新しい領地を開拓してる方々って十回分くらいの免税させてくれると思ってたんですが、俺の勘違いでしたね」

「あの、赤字とはなんでしょうか……」

 あー、まだそういうの一般的じゃないのか。

「収入より出費の方が多くなることですよ。損失ですね、このアクアマリン商会は、俺に借金してるんですよ」

「それは、貴男が勝手にやった事でしょう、関係のないことだわ!」

「お前か、お前の部下が島に顔を出さず、物資や金銭での援助が一切なかったから俺が出したんだよ。それと発言には気をつけろって言ったよな? 私腹を肥やす事しか頭にねぇのかよ……。 俺は利己的で、自己中心的な考えの奴が大嫌いなんだよ。しまいにゃ暗殺するぞ?」

「カーム様、お願いですからどうか落ち着いて下さい」

「俺は落ち着いてますし、大声を出すような事はしてません。ただ、こいつの態度と考え方が気に入らないだけです」

「ですが、先ほど殺す事をほのめかすような発言をしました。貴族相手に脅しと思われても仕方がない言葉でした。いくら酷いお方でも、仮にでも貴族です。不敬と思われると不利になるのでは?」

 うーむ、なかなかの毒をお持ちでいらっしゃる。フォローしてるように思えて、何となく貶してるし。

「たぶん平気です。たぶん恨みを沢山買っていると思いますので、二人を同時に殺せば、たぶん気がつかれないでしょう」

 俺は、笑顔で優しく諭す様に言った。

「それ、本人の前で言う事じゃないんじゃないかしら? 処刑するわよ?」

「そうですね。処刑は怖いので、もしそうなったら全力で暴れると思いますので、覚悟はしていて下さいね……」

 売り言葉に買い言葉で、どんどん収拾がつかなくなってきたな。そろそろ落とし所でも見つけるか。

「さて、おふざけはここまでにして、落とし所を考えましょう。俺的には、普通に三回分の税を支払う気ではいますが、島の開拓具合とか見ても、一回目はほぼ税収は見込めず、二回目は麦や野菜の作れる畑と収穫記録を見て判断してもらい、三回目は今の島の様子を見て、判断してもらうしかないんですよね。まぁ、法外な税収だった場合は、抗議、または突っぱねます。今その辺の書類を持ってきますので、少々お待ち下さい」

 俺は立ち上がり、執務室から書類を持ってこようとしたら、

「そうね、帳簿を見ないと取る物も取れないわね。税は前回の徴収時期から今まで。つまり、季節一巡分の売り上げの総額の七割を三回分出しなさい。次の税も七割よ。それに、ふざけてるつもりは一切ないわ」

 この言葉で、ルッシュさんとパーラーさんが、何かをあきらめた顔になった。法外だって事は専門じゃないパーラーさんでもわかってるみたいだ。

「……話になんねぇな。お前(・・)頭沸いてんのか? それとも生かさず殺さずで、とことん搾り取るのか? それとも馬鹿なだけなのか? もしかして頭の中に大金貨でも詰まってんのか? だから金の事しかかんがえらんねぇんだな」

「あらあら、学のない寒村出身の魔王()に言われたくありませんわ」

「はぁ……もういいや……」

 俺は力なく呟いてから執務室に行き、去年のあまり詳細に書いてない帳簿を持って、応接室に戻る事にした。

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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