第129話 村長を決めた時の事
適度に続けてます。
相変わらず不定期です。
またタイトル詐欺です。
白い空間に浮遊感。久しいな。
そう思って、辺りを見渡すと、一角がおしゃれな喫茶店のようになっていた。
「お久しぶりです」
見た目紳士な神が、マスターみたいな事をしていた。
「どうも、お久しぶりです」
俺は、なぜか壁がない所にあったドアを無視して、カウンター席に着いたら、神は悲しそうな顔をしたが、知ったこっちゃない。
「前回、コーヒーの話をしましたが。かなり充実してますね。なんか見た事あるものばかりですね」
「えぇ、私も地球に降り、色々経験しましたので」
何もない空間に浮いて、飾ってある写真を見たら壮大なコーヒー畑をバックにラフな格好で地球の神と一緒に記念撮影をしていた。
何で籠にコーヒー豆満載で雰囲気出してんだよ。
「ご注文は?」
ノリノリだな! ノリノリ過ぎでびっくりしたわ。
「ダッチコーヒー、ホット」
俺は後ろにある、細長い管にぎっしりとコーヒー豆が詰まった物が見えたので、注文してみた。
そうすると神は、ダッチコーヒーを湯煎し始め、話しかけてきた。
「かなり面白いことになってますね」
「貴方が多少いじってるんじゃないんですか? ミスリルやらオリハルコンとか」
「……まあ……少しは」
「目を見て言って欲しかったですが。はぁ、まぁ良いです。で、なにか楽しいことでもあったんですか?」
「えぇ、コーヒーを始めたら、他の星の神との交流が増えまして『じゃあ俺も』と言って、自分の星の、嗜好品を持ち寄って、宴会ではなく、お茶会になりつつあります」
そう言いながら、壁にかかってる写真を見ると、黒い球状の奴とか、燃えてる奴とか、光ってる奴とか、地球のUFO番組で見たことあるような奴までいた。宇宙は広いな。
「にしては地球寄りな備品じゃないですか?」
「私の星は、あまり文明が進んでないので、仕方なく友人である地球の神に頼んで購入してきていただきました」
「そうっすか」
しばらく沈黙が続くが、コーヒーが暖まったのか。俺の前にコーヒーが出された。
「通な物を頼みますね」
「飲んだ事がなかったので」
出されたコーヒーを何も入れずに飲むと、口いっぱいに濃厚な香りと、さわやかな口当たりとコクが広がった。俺にとっては苦いけどな!
カプチーノにしておけば良かったと後悔した。
少し多めに砂糖を入れて、ブラックで飲みながら話を続ける。
「で、目的は?」
「今の所、大変上手く行っていて、とても満足しています。最初は乱世になりそうで、本当にテコ入れをするつもりだったんですが。凪君が思いの外ヘタレで助かっています」
「そうですか、そいつは良かったです」
「こちらが、娘に初めて蹴られて、我慢しているカーム君の顔です」
わざわざ紙媒体で、印刷し写真風にした物を、胸ポケットから出して、俺に見せてきて、甘苦いコーヒーを噴き出した。
なんかどこかで見たことあった気がする噴き出し方をしたな。
「このためだけに呼んだんですか?」
「こちらが。子供達に攻撃を当てて、へこんでいるカーム君です」
そして、二枚目の写真が出される。そこには、入浴後にスズランやラッテに俯きながらグチってる姿があった
「いや、こういうの本当に良いですから」
「そうですか? ある意味記念日ですよ?」
「こんな記念日いりませんから」
「そうですか。そして、昨日はお楽しみでしたね」
「……見てないんじゃないんですか?」
「見てませんよ。 ただ直前の雰囲気から察しました」
「そうっすか」
「そうっす。で……本当に下半身事情のスキルはいらないんですか?」
「いらないですよ、ただでさえ片方は強引で、片方は底無しなのに」
「なら尚更……」
「片方が休んでる間に体力が回復しますよ。朝まで終わりませんよ……、本当に要りませんから……普通で良いんですよ……最悪俺が駄目になるまで続いた時があるんですから本当に勘弁してくださいよ……」
「そうですか、ではこの話は終わりにしましょう。オリハルコンとミスリルを溜めこんでる竜族の女性ですが、私がいじった物ではありませんよ。ただの偶然ですので、疑わないで下さいね」
「はいはい。疑いはしませんが、今までの行動で、言う事が全てなんか嘘くさいので、そういう事にしておきます。と言っておきますね」
「ありがとうございます?」
「どういたしまして?」
そんなやり取りをして、少しだけ冷めたダッチコーヒーを飲み干し、席を立とうと思ったら、止められ、大人しく席に戻る事にした。
神が、お代わりのダッチコーヒーを注いでくれた。
「例の停戦条約で、お互いの死亡者も減り、減っていた人口も少しだけ右肩上がりになりました。コレには本当に感謝しています。強硬手段に出ずに助かりました。ありがとうございます」
ものすごく丁寧に、お礼を言ってきた。かなり意外だな。
「人族ではなく、面白半分で魔族に転生させて良かったと思っています」
「今の一言で台無しですね……」
「素直にお礼が言えない、恥ずかしがり屋の神だと思ってくださって結構ですよ」
「そう言う事にしておきます」
「久しぶりに顔を見れて良かったです」
「こっちに来たら、死ぬ前の姿で、顔は変わってないと思いますがね」
「では戻しますね」
微笑みながらそう言われ、目を醒ます。
「あークソだりぃ、神に呼ばれると絶対寝起きがだるくなるんだよなー」
そう愚痴りながらも、腕に抱きついてるスズランを起こさないように、ベッドから起き上がり、暖炉に火を入れに行く。
こういう時って、早起きって損だよなー。あー寒い寒い。
そう思いながらも、竈に火を入れ、朝食の準備を済ませる。
子供二人は、胸部や腹部に攻撃を当てたから、少し軽めのも用意してやるか。昨日の夜、少しだけ食が細かったし。
こういう時って、固形コンソメとかあれば便利なのになー。ベーコンとキャベツとジャガイモとかで簡単な軽めのスープ作れるのに。
そして俺は手際良く、朝食の準備を済ませ、いつも通り嫁達を起こしに行く。相変わらず片方は朝に弱すぎる。
もう片方は、俺が止めて欲しいと言ってるのに、止めてくれず、頑張りすぎたせいか、いつもより起きるのが遅かったから、ついでに起してやった。揺らしたら飛び起きたので、こちらは非常に助かる。
朝食中に、今日の昼食後には島に戻る事を伝え、今日もダラダラする。
今日は醸造小屋だ、増築を繰り返して、もう小屋って規模じゃないけどな。
「うーっす」
「おーっす、なんだ今日ものんびりか?」
「んー、まぁ昼までだな、何も指示を与えず、島から逃げて来たから、どうなってるか気になるし」
「なんでだよ」
「いい加減俺がいなくても、動けるようになってもらわないと、少し困る」
「お前が村長やってるんじゃねぇのかよ」
「面倒な事はしたくない、軌道に乗ったら誰かに任せるに限る」
「ひでぇな」
「ここまで作り上げたんだ、あとはなるべく楽したい。戻って誰かが代理で仕切ってたら、そいつが村長」
「ひでぇ!」
「俺は相談役で良い。だってだるいし」
「ほんとうお前って奴はわかんねぇなー。真面目なのか真面目じゃないのか」
「後から楽したいから、今を一生懸命働いて、地盤を整えてる」
「何が違うんだ?」
「最初に苦労した方が楽な気がするだけ」
「そんなもんか」
「そんなもんだ」
多少会話が途切れたが、俺から話しかける。
「そういやさ、蔵の方の在庫とかどうなってんの?」
「あ? そうだなぁ、常にいっぱいにならない程度には売れてるな。ほら、あそこにいる奴。少し遠くの町の商人で、お得意様だな、昨日は村に泊まったんだろうな」
「ほー、顔が覚えられる程度には通ってるのか、感謝しないとな」
「だな、古い物から売ってるんだけどな、どんどん売れて、入れ替わりが激しいから、中々季節を廻ったのが出来ないな。まあ、村のは別な蔵に保存してっけど」
「じゃないと、色付きとか味の変わり方とかわからないからな」
「けど校長が飲んでるから、どんだけ減ってるかわからないな」
「校長専用の樽でも用意しとけよ、どうせ校長のおかげで大きくなった様なもんだから、一樽くらいは問題ないだろ」
「その一樽がなくなって、村の分に手を出してるって言ったらどうする?」
「駄目な管理者だな……」
「……まぁな」
蒸留機の先から、原酒が流れてきてる所を見てたら、ヴルストから話しかけてきた。
「俺の娘、おまえの息子の事好きらしいんだが」
「知ってる、やんわり断ってるのも知ってる」
「そうか……。もし冒険者にならなければ……あー、この話はやめるか」
「わりぃな」
「こっちこそ」
「…………なぁ、もし種だけ蒔いて、冒険に出たら言ってくれ。見つけだして、父親として思い切りぶっ飛ばす」
「シュペックにも言っておく」
「頼む……」
「もう少し村がでかければ違ったんだろうな。他にも同い年の好きな男ができたんだろうけど」
「町に買い物にでも行かせれば良いさ、出会いは腐るほどある。俺みたいにな」
「半ば無理矢理だったくせに」
「まぁ……な、けどアレは半分事故みたいなもんだ。けど、辛いだろうな、プリムラちゃんとレーィカちゃん」
「冒険者になって、村から出て行くのは知ってたんだ、カームが悩む事じゃねぇよ」
「そうなんだけどな……」
「まあ、気にすんな。お前はお前の事に集中しろ」
「そう言ってもらえれば助かるよ」
「さーて、年越祭も近いから忙しいぞー」
そう言いながら、俺の肩を二回叩いて作業に戻っていった。あいつも父親してんなー。
「俺の子供に限って」
とは言わないが、多少の節操はもって欲しいな。夢魔族のハーフだから難しいか? 行く先々で、女を作ったり、臨時パーティーの女性に手を出すのだけは止めて欲しいな。パーティーが空中分解とかしたら、リリーがかわいそうだ。まぁ娼館に行くなら兎も角。
その後は、さっきの事をミエルに言う事は無く、のんびりと昼食を食べてから島に戻った。
「カームさん! やっと戻って来てくれたー」
そう言って、男が近づいてきた。
「カームさんがいない間、お前が仕切れって言われてたんですよ!」
「あー、じゃぁ、そのまま村長になってください」
「はぁぁ!?」
「こちらは、色々サポートしますので、島の太陽の出る側の村長をお願いします。おめでとう!」
「いや……ちょっとぉぉ! 何いってるんですか!」
「故郷にいる間に、島の発展計画を練ってたんですよ。今から話し合いましょうか」
「ちょっとぉぉ! 村長って柄じゃないんですけどぉ!」
見事にテンパってるな。まぁ、タイミングと皆を恨んでくれ
「魔王が村長って似合わないと思ってたんですよ、いやー良かったなー。で、名前何でしたっけ?」




