第128話 娘に蹴られた時の事
適度に続けてます。
相変わらず不定期です
昨日の夜は、襲われると思ったがそんな事は無かった。俺がまだ村にいるとか言ったから、心の傷が深いと思われたのだろうか? まぁ、こちらから振るのもありかな、そう思ったけど、ラッテが。
「おいでー」
とか言って、胸の辺りをポンポンとして、胸に顔を埋めたら優しく撫でてくれたので、そのまま寝てしまった。二日連続でこういうのも悪くない。
まぁラッテは、俺より頭一個分俺より背が低いから、ベッドから俺の足がはみ出たけどな。
素直に抱き付いてくれた方が良かった気もするけど。あの柔らかさには勝てなかったよ。
ってな訳で、無理矢理ラッテの胸から顔を引きはがし、朝食の準備に入る。特に代わり映えはしないが、最近寒くなってきたので、暖炉に火を入れ、部屋を暖めたりもして、色々準備を整える。
あとはいつも通り。俺がいる時は、やっぱりスズランを起こすのは俺の役目になってるのは切ない。
まぁ諦めてるけどね。
食器を洗い、今日も村の探索をする、この時期は帰って来ても、家の前にある畑の草刈りをしないで済むから、本当にやる事が無い。
特にすることもないので、今日は本当にのんびりしようと思う。まぁ、午後に子供達の訓練に、付き合わされる事になるんだけどな。
そう思いながらも、村外れの櫓に行き、シンケンに許可をもらい、エジリン方面の手すりに寄りかかりながら、ボーっとする事にする。
「あー、良い天気だねぇ」
「カーム、おっさん臭いよ」
「んー、良いんだよ。ものすごく疲れてるし。少しくらいダラダラしても文句は言われないよ」
「んー、向こうでどれだけ働いてるか知らないからな、何とも言えないね」
「じゃぁ、何も言わずに、意味の無い会話でもしようか。新村長はどうだい?」
「よくやってるんじゃないかな、旧村長が何をしてたかは知らないけど」
「俺も知らないんだよなー、話し合いに呼ばれたり、畑耕したり、街道整えたりくらいでしか呼ばれてねぇし」
ため息を出しながら、ゆっくりと流れる雲を「あ゛ー」と言いながら見上げる。
「珍しいよね、そこまでだらけてるの」
「んー、まぁ。色々緊張しっぱなしだったし、これくらいは許して欲しいね」
「何があったんだよ」
「人族の王都絡み」
「また!?」
「まーねー。少し前に、ちょっと虐めた第三王女が、大好きな勇者と、とある理由で離れ離れになって、ある程度自由に動ける王女が。見張りの兵士を丸焼きにして助け出して、なぜか俺に復讐に来た、そのまま逃げれば、ある意味ハッピーエンドだったんだけどね、犠牲者は二人だし」
「魔王ってそんなに危ないの?」
「俺の領地って、大陸の間にあるから、比較的人族に狙われやすいだけ。なるべく敵を作らないようにしてるんだけどね、なぜか襲われる」
「いや、それは襲われても仕方がないと思う」
「他の勇者とは、ものすごく仲が良いんだけどね」
「魔王と勇者が、仲が良いってどうなんだよ」
「いいんじゃね? 血が流れないし」
「んーそうだけどさ」
「それで良いの」
それから特に会話も無く、シンケンは見張りを、俺は街道と雲を見ていたら、今度はシンケンから話しかけてきた。
「息子のペルナの話だけどさ」
「うん」
「リリーちゃんって、ものすごくモテるらしいね、少し意識してるみたいだよ」
「知ってる」
「知ってるって……親として心配じゃないのかよ」
「色々な物が自分の好みで『私より強ければ考える。お父さんより強かったら応じる』って言ってるから平気だと思ってる。最悪結婚できないぞアレ」
「リリーちゃんって、男の子より強いって話だよね」
「みたいだね。そうなると、俺とどこかの魔王さんが戦う事になるから、勘弁して欲しいよ。本当俺を基準にしないで欲しい。俺より強いって事はさ、魔王か魔王になれるって事だろ? 死にたくねぇよ」
「リリーちゃんにわざと負ければ?」
「痛いの嫌い、しかも手を抜いたとか言われて、絶対何回か戦わされるに決まってる」
「流石スズランの血を引いてるね」
「アレは……んー。確かに引いてるかもね。力も強いし」
「ミエル君は、女の子にも人気だね、魔法も学校で一番って話じゃないか」
「あー魔法が良くできるし、見た目でも人気みたいだね」
「人気みたいだねって。自分の息子だろ」
「んー、いろんな女の子から好かれてるのはわかってるし、やんわり断ってるのも知ってる」
「僕が言うのもなんだけどさ、ミエル君って童顔だけど凛々しいし、かっこいいと思うよ。プリムラちゃんとか、レーィカちゃんが結構惚れてるって聞いてるけど。むしろヴルストとシュペックが嘆いてる」
「あーあの二人の子供は女の子だからねー、気が気じゃないのはなんとなくわかるよ。半分夢魔族だから、娘がハーレムの一員になると思ってるんだろ?」
俺は座り、足をブラブラさせながら続ける。
「元々夢魔族と俺のハーフだからね、好かれる要素はあるけど、ハーレムを作らないで断ってるのには、冒険者になりたいからじゃないのかな? だから最近は、自分から料理を手伝う様になったんだぞ」
「ふーん、うちのペルナは全くしないなー」
「シンケンは俺に聞きに来て、それなりに料理を覚えた。けどミールは俺に何回か教わりに来る程度には苦戦した。見事に料理系は、ミールの血を引いてるとしか思えないけど?」
「むー、血って恐ろしい」
「けど皆を纏めてるんだろ? それだけでもすごいよ、あとは料理を覚えるだけで良いだけじゃないか」
「料理を覚えるだけって言うけどなー」
「あ、そうだ」
「どうした?」
「エジリン方面って見張ってる?」
「カームがいるから、見てないよ」
「距離百五十歩、街道の左手、枯れた背の高い雑草の塊が四個有る所、右から二個目。頭が少し見えてる」
そう言うと、俺の座っている側に来て、矢をつがえ「あれか」と呟き、少し上の方を狙らって放ち、矢が茂みに吸い込まれていった。
「カームってさ、目も良いし、指示が的確だよね」
「……まぁな」
「けど、ずっと見てたんだろ? なんで言わなかったんだ?」
「シンケンの仕事を取らないようにしてた」
「見張りで、そう言う気遣いはいらないから」
「この距離で当てられる方もすげぇぞ?」
「話をすり替えないでよ」
「こそこそ物陰を移動してくるのを、眺めてるのは面白かったよ」
「そうかい……次は教えてね」
「距離二百五十から二百八十歩、街道右手、道から大股で二十歩くらい離れた茂み。少し街道沿いの、草刈りをしろって村長に気が向いたら言ってくる」
「……あーアレか、よく見つけられるねあんなの。弓を覚えた方が絶対良いよ!」
「弓に嫌われてるからいいよ、出来るやつに任せれば」
「本当もったいないね」
「だなぁ」
麦は刈り終わってるので、作業中の村民はいない。大声で知らせることもせず、少し待ち、シンケンの射程内に入ったゴブリンを射殺す姿は、流石ハーフエルフと言ったところだろうか。
どうでも良い会話を、昼少し前まで続け、挨拶してから家に帰り、スズランとラッテの為に、から揚げと半熟卵入りシーザーサラダを作り、ミエルの為に、蜂蜜入りのふんわり玉子焼きを作って、マッシュポテトを器にしたグラタンを作り、カリカリに仕上げ、パンは朝の残りを使って終了。
昼食後は、稽古稽古とせがまれ、嫌々付き合うことにする。
だって二人に手加減すると、こっちが怪我させられるし、させるのも嫌だ。
けど、何もしない訳にもいかない。最近、稽古のためだけに購入した、三本目のスコップと、現役を引退した、使い込んだバールとマチェットを持ってきて腰に差した。
「なぁ、リリー。準備しておいて言うのもなんだけど、そろそろ稽古を辞めないか? 父さんは、怪我をさせたくないし、怪我をしたくないんだよ。ミエルもだ。これ以上は相殺するより、魔法を撃たれる前に潰した方が安全な気がする」
「鎧とかを付ければ良いんじゃないの?」
「僕もそう思う」
「リリー達だって付けてないじゃないか、欲しいって相談があれば、母さん達に、お金を出すように言ってあったんだけど、まだ相談はないって聞いてるぞ?」
「付ける予定だけど……まだ背も伸びてるし……その……。学校を卒業してからでも良いと思ってるわ」
胸の辺りを見ていたし、まだ多少は成長しているらしい。
「んー、言いたい事は何となくわかった。それと、父さんの防具は厚手の服とベストだ。これは、当たれば死ぬ時は死ぬって考えで、それなら素早く動ける方が良いって考えだ」
そう言うと、リリーは難しい顔をしている。
「まぁそう言うわけで、父さんは防具らしい防具は、膝と肘に厚手の皮くらいだな」
「なら、それを着てよ」
「持って帰ってきてない」
「魔法を使えばすぐでしょ。お願い、お父さん」
「あんまりおすすめは出来ないんだけどなぁ、ある意味防具じゃないし」
「お父さん、お願い」
「あー、はい……」
まぁ、単身赴任状態だから、帰ってきた時に甘えてくるのは良いけど、その甘え方が稽古ってどうよ?
まぁ俺がいないのが悪いんだけどな。
「取ってきたぞー」
そう言って、目の前に厚手の服と、タクティカルベストを投げ出し、準備を始める。
少し寒いから厚着をしていたが薄着になり、厚手の服を着込んでいき、頭に黒の布を巻く。
ベストの方にマチェットとバールを付けてから、それを着込み、胸の所に黒曜石のナイフではなく、刃の部分を棒にした物を挿し、右太股に大振りのナイフを括り付ける。
「待たせて悪かったね」
そう言って、子供達を見ると、なぜか目を丸くしている。
「コレがお父さんの防具……、本当に布だけ」
「真っ黒だ……」
んー、ものすごく便利に作ってある所とか見て欲しいけど、布だけしか目に入ってないな。まぁいいか。
「な? 当たらない事が前提で作ってある」
「うん……、そうだね」
「んー」
俺の言ってた事が本当だとわかると、なぜかがっかりしている。レザーアーマー程度はあると思ってたのか?
「まぁ、ここまで着込んじゃったし、やろうか」
今度は目をキラキラさせて、槍を構えて、木の穂先を向けてくる。
構えるの早すぎだろ。
「んじゃ、ミエル、いつも通り頼む」
俺もスコップを構え、ミエルの合図を待つ事にする。
パンッと手を叩く音が聞こえたら、リリーは相変わらず、槍を突き出したまま前傾姿勢で突っ込んで来る。
静止状態からの、この速さは勘弁して欲しい。俺が何も出来ずに、事故がそのうち起こる可能性が強い。
俺は、スコップで槍を弾き、いつも通り、一歩だけ踏み込んでから足をかけようとしたら、リリーはその場に踏みとどまり、何度も槍を突き出してきたので、本当にはじくのが精一杯だった。
本当に成長してきたな、畜生! スコップじゃ間合いに入れねぇぞ。
しばらく打ち合い、リリーが石突きの辺りを持ち、縦振りや横振りを繰り出してきて、点から線の攻撃になりはじめた。
予備動作を見て、横薙ぎの時に思い切り前に出て、体の右側で槍の柄の部分を、スコップの柄で受け止めた瞬間にスコップを手放し、胸ぐらを掴み、そのまま引きつけて組み伏せようと思った。
思ったが、リリーも前に出る考えなのか、槍の間合いの中に入られたとわかったら、右手を離し、拳を突き出してきた。槍は離さない積もりか。
胸倉を掴むのをあきらめ、そのまま拳を受け止めるが、今度は右足でわき腹を蹴って来た。
遂に足癖も悪くなったか……。父さんは悲しいなぁ。
そのまま、わき腹に蹴りを食らうが、右手を捕まれてる状態で、あまり体重が乗っていなかったので、気合で我慢し、左手で胸倉を掴んで、引きつけながらみぞおちに左足で跳び膝蹴りを入た。
リリーの体が折れ曲がり、顔が痛みで歪んでるのが見えたので、掴んだままの左手を思い切り引っ張って、足をかけてそのまま地面に転がした。
あー、なんで娘にこんな事しなきゃなんねぇんだよ……。わき腹いてぇなぁ。
「すまん、もう手加減出来る状態じゃないんだ、わかってくれ」
そう言って、リリーの手を掴んで起こすが、口の中を切ったのか、血と砂の混じった唾を吐き、悔しそうに口をへの字にしている。
ハンカチで拭うとかして欲しいな。父親として。
「うん、別にやられた事に文句はないわ。私が女だから、変に手を抜かれるよりはずっと良いと思ってる。お父さんの事だから、女の子に暴力振るうのは、ものすごく嫌いって事も理解してる……。けどちょっと悔しいな」
「そこまでわかってくれてるなら、親としてはうれしいね。けど、稽古とは言え、娘に暴力を振るえるような、親ではないのは確かだね。けど、痛いのはもっと嫌だって事も覚えておいてくれ」
漫画では、娘に容赦なく攻撃したり、本気で稽古付けてるのを見た事あるけど、俺には絶対無理。まだ料理を教えてた方が気が楽だ。それとわき腹がさっきよりジンジンしてきた。
「パパ、もし女性が敵で、パパを殺そうとしてきたらどうするの?」
「戦意を削ぐか、殺す。優先順位は、まずは自分の命だ」
「じゃあ、もしもママ達が悪い人に捕まって、人質にしてきたら?」
随分限定的で、答え辛い物を……。
「……譲歩は絶対にしない。結果的に二人とも生きてて、嫌われる事になっても、絶対に悪い奴らの言うことは聞かない。コレがパパの信念だ。まぁ限界まで粘るしとにかく考えるけどな。だから、お互いに最悪の結果になった場合はどうするか、それを絶対に貫く信念はあるか。それだけは決めておけ」
「……わかった。お姉ちゃんと話し合っておくよ」
「そうした方が良いな、パパはヘタレだけど、一度決めたら躊躇しないって言うのも信念だね。ってかスズランママを捕まえる悪い奴が想像できないし、ラッテママはそういう時は狡猾になりそう」
「こうかつって?」
「んー、とりあえず、どんな手でも使うって意味かな?」
まぁ、間違えでは無いと思う。
少しだけ会話をして、息を整えてから、今度はリリーに手を叩いてもらい、ミエルとの稽古を開始するが、スコップで魔法を弾きながら、しばらく様子を見ていたが、威力より手数を増やし、こちらが隙を見せると遠慮無く質量の有る、土属性の魔法や、盾を付けている左手に生成していた、黒曜石のナイフを右手で投擲して来る。
本当に中距離サポートに徹する構えで、安易に崩されないのを目標にしていた。
問題はコレがどこまで続くかが問題だな。味方がいれば直ぐに前衛が前に出るし、周りを注意してれば良いんだからな。
俺が近づこうとすると、その分下がり、一定の距離を保ち続ける。
うん確かに前衛にとっては、この上ないやり難さがある。魔法も緩急をつけ、タイミングをずらすのも忘れてない。
ミエルが魔力切れを起こすまで待っても良いけど、さっさと仕掛ける事にする。
持ち手が熱くなってきたスコップを、盛大に横回転で投擲し、そのままの勢いで全速力で近づく。
ミエルに横に飛ぶ退く動作をさせ、着地する瞬間に胸にある、黒曜石の棒を投擲し、背中のマチェットと腰のバールを抜いて、接近戦に持ち込むが、何を思ったのか、ミエルが黒曜石の棒を盾で弾き、自分の足元で【火球】を発動させ、小さな爆発みたいな炎が広がる。
熱気がこちらにも伝わるが、炎の向こう側から、盾を前に構えたミエルが走って来て、盾ごと体当たりして来た。
魔法一筋だと思ったが、盾の使い方をある程度自分で考えたか、俺の父さんにもで聞いたんだろうな、俺ってあんまりシールドバッシュを使わないし。
それをマチェットの柄で受け止め、さらに一歩踏み込み、前に買い与えたナイフで突き刺そうとしてきたのをバールで弾き、前蹴りを胸部に当て、仰向けに転んだ顔の近くにマチェットを投げて突き刺してやった。
「最初は良かった、足元に火球を使って、相手を怯ませるのにも問題は無かった。ただ、盾で殴りかかってる来るのは、本当に最後の手段にして、一旦距離を置く事を考えた方が良いかな。折角仲間がいて、援護する姿勢を貫いてるんだからね。ただ、二人ともだいぶ良くなってるから、気にすんな」
そう言ってマチェットを抜いてからミエルを起こし、お互いにかなり強くなってきた事を伝え、稽古を終了させる。まぁすでに手合せに近いな。
あんなのを何回も続けたら、俺がボロボロになるわ。しかもまだわき腹痛いし。
夕食後、盛大にため息を付きながら、暖かい麦茶を飲み、愚痴をこぼす。
「子供達強すぎ……。コレ以上強くなったら本当に取り返しの付かない怪我をさせそう」
「カーム君回復魔法使えるじゃん」
ラッテが、なに言ってんの? みたいな顔で言ってきたが、言いたい事はそう言う事じゃない。
「確かに使えるけど、子供に怪我を負わせたって事実が嫌なの」
「カームは嫌かもしれないけど。子供達はその事を知ってて日々鍛えてる」
「それは何となくわかるよ? 頭ではわかってるけど、心がねぇ」
「カーム君優しいからねー。ヘイルさんやイチイさんはどんどん転がすよー」
「ってか最近強くなってきたのは、父さん達のせいかよ」
「槍を教えてるのはお母さん」
「義母さん? 槍持ってる所を見たことがないんだけど」
「元々あの槍はお母さんのだから」
力任せに振らなくなってきたのは、義母さんのせいだったか。
ミエルのシールドバッシュも、きっと父さんの入れ知恵だろうな。半端な動きじゃ防がれるってわかったなら、少しだけ控えてくれると本気でありがたい。
□
子供部屋にて。
「お父さんが、本当に鎧を持ってなかったとは思わなかったわ」
「そうだね、皮も膝と肘の部分の、服の内側に縫い込んだものだけだったね」
「町にいた頃は、戦争中だった前線近くに行って、基地の防衛をしてて、戦闘もあったってお母さん達が言ってたわよね? その時もアレだったのかしら?」
「じゃないかな? けどものすごく便利そうな作りしてたよ? 胸の辺りに小物入れ付いてたし、マチェットも後から好きな場所に付けてたし、太股のナイフも取りやすそうだったし。しかも普通の服と、動きもあまり変わってなかった」
「そう言われてみればそうね、私も太股のナイフは真似しようかしら。さすがにスコップとバールは……無いわね」
「けど、バールは鈍器としては優秀なのかな? ものすごく扱いやすい、曲がった鉄の棒って考えれば納得できるよ? まぁ僕も持ちたいとは思わないけど」
「けど。あの優しさの固まりみたいなお父さんから、跳び膝蹴りを食らうとは思ってもなかったし、地面に思い切り転がされるとは思わなかったわ、おかげで口の中切っちゃったし、まだ胃の辺りが痛いわ」
「僕も前蹴りが来るとは思わなかったよ。今まで、やんわりと寸止めだったのに」
「なんで今回からなのかしら?」
「わからないよ、もしかして、僕達って、本当に手加減が出来ないくらい強くなってる?」
「なに言ってるのよ、今回は魔法を一切使ってないのよ? 魔法系魔王なのに」
「あ……確かに。魔法で相殺されてないし、防御もしてなかった」
「お父さんにとっては、私達はまだまだって事ね。本当に悔しいわね」
「そうだね……」
事前準備が無く、罠が無ければ、カームの戦闘なんかこんなもんです。




