第100.5話 ラッテの魔法講座
これは八月三日の蜂蜜の日にミエルのSSを書こうと思って、文字数が多くなりすぎて「これSSじゃねぇな」と思い、おまけSSの方に投稿せず.5話として少し手を加え投稿する事にしました。
年越祭の準備をちょこちょこ始めだすが、故郷と島との両方を進めると決め、故郷で三日、人数が少ない島を二日を一巡と決め。交互に年越祭の準備を始め、やっぱりワーキャットとかのおっさん連中に豚の解体を手伝わされる、なんであのおっさんは俺に解体をやらせるんだろうか。
◇
私は今、今日の年越祭の準備が終わり、スズランちゃんもリリーちゃんもいない、人気の少ない職場の牧場の裏手に来ている。ちなみにカーム君は、島での収穫祭の準備に行っているからね。
「さーてミエル君、我々夢魔族の固有魔法をそろそろ教えようと思います、パパに色々魔法を教わってるから少し早いけど教えちゃおうと思って」
「うん、わかったよママ」
うんうん、我が子ながらすくすくと育ってくれて嬉しいな、私自身こんな幸せな生活が出来ると思ってもいなかったから、セレッソさんとカーム君とスズランちゃんには感謝しないと。
「さて、我々夢魔族は肉体的に気持ち良くなる方法やさせる方法が有名ですが、眠っている相手の夢に出たりして夢の中で気持ち良くさせる方法も有ります。けど今日はそれを置いておいて、幻覚、幻視と言った実際に無い物を、有る様に見せる魔法を今回は教えます」
「パパやスズランママにも見せた事の無いの?」
「無いよー、だから今度の稽古の時に使ってパパを驚かせちゃおーぜっ!」
「うん」
「ってな訳でイメージは簡単、よく蒸し暑い夜の次の朝なんかに出て来る霧、アレを沢山集めて形を作って動かすイメージなんだけど、なんとなくわかる?」
「うん、パパに紐に魔力を通して動かす方法とか教えてもらったから」
「さすがパパだね! もうサイコー。じゃぁ白いモヤモヤの霧を集めて形を作って、それに私達夢魔族にある、少し質の違う魔力を混ぜて、霧が見える相手全員に幻覚を魅せちゃおう、今のミエル君にならきっと出来るよ」
そう言って私は、ミエルにコツを教える事にした。
「まずはママからー」
私は朝に出る霧をイメーシして、人の形を作り、少しだけ違う魔力を混ぜてミエルにカーム君を見せる事にした。前は毎日見てたし、抱き付いてたし、匂いも覚えてる、今更間違うはずが無い。
「ってな訳でパパだよー」
久しぶりに使ったけど、上手く出来て良かった。
「幻覚で霧だから何も出来ないけど、森とか町とかで本物そっくりの木とか壁を作って迷わせる事も出来るから、覚えて置こうね。本当は壁なんだけど、向こう側が有る様に見せる事も出来るから、走って行って壁にドーンって使い方も出来るから、逃げた奴とかにも使えるからね」
そう言って私は霧で出来た手を振っているカームくんに抱き付いて、霧を四散させる。
「まずは小さい簡単な物から作ろうか、ミエルの大好きな兎とかね」
そしてミエルに、コツとか細かい事を教え、兎を作り出す事に成功させた。
「ママ! 出来たよ!」
ミエルは、霧で作り出した兎をピョンピョンさせている。
「すごいじゃないかー、まさか一日でここまで出来るとはママも思わなかったよ、パパに感謝しなくちゃね」
「うん!」
物凄い笑顔でミエルは元気に返事をした。そんな姿を見て、今の幸せは本物なんだと改めて実感した。
◇
それから数日が経ち、昼間に帰って来ているカームくんとの稽古になり、まずはリリーちゃんがカーム君と稽古をして、子供相手にもどんな手を使ってでも勝ち、どんな手を使ってでも生き伸びろと教えている、今度はミエル君の番になり、ミエル君は早速【霧の幻覚】を使い、カーム君が興味深く観察している。
モコモコと霧は少し大きい人の形を作り始め、三角の兜に、皮のエプロン、両手剣くらいある大きな鉈みたいな物を持っていて、筋肉隆々の男の幻覚を作り出し、霧の中から現れた様な演出をさせる。
さっきの演出は上手いと思うけど……なんだアレ。私はあんなのを見た事も無いし、聞いた事もない。しかもカーム君の表情が恐怖に変わり、三角兜が剣を振り上げる動作をした瞬間に、背中を向けて一回も後ろを振り向かずに全力で森へ逃げて行った。
「ミエル君、なんでパパがあんなに怖がってたかわかる?」
「わからないよ、前にパパに教えてもらったんだけど、本の中の話の悪い人を殺して回る良い人って言ってたよ。なのになんで逃げちゃったんだろう? 沢山悪い事をしないと出てこないって言ってたから? けどパパは悪い事は沢山してないんだよね?」
「うーん、そう聞いてるけど……」
あの逃げ方は本気の逃げ方だ、カーム君が御伽話を怖がるような事は無いってわかってるけど、なんか納得できない。多分勇者と同じ国の産まれと関係が有るんだろう。
□
やばいやばいやばい、なんであいつが出て来るんだよ、一回しかミエルに見せて無いだろ、しかもミエル怖がってただろ! なんであいつが出て来るんだよぉ! 罪の意識とか罪の自覚とか関係無い、作られたあいつならそんなの関係無い! 体臭を消して、擬態して森に隠れるしかない! 多分召喚魔法か! なら危険なのは俺だけだよな! なら俺は全力で逃げるぞ!
「よぉカーム、自分から豚の解体に来るとは特称な心掛けじゃないか」
ワーキャットのおっさんが、なんか言っているが無視だ無視! ワーウルフのおっさんもなんか言っていたが無視だ! 森に逃げ込め!
俺は泥を作り出し、体中に塗り、切った草を体中に貼り付け、足の高い草むらに伏せて隠れる。絶対に動かず、気配を消そう。
辺りが暗くなってきた、まだあいつが現れる気配はない。もう少し様子を見るか。しかし腹が減った、けど水分だけ取ってれば二週間以上は平気だからな、水で我慢だ。
◇
「結局カームは帰って来なかった。探しましょう。シュペックを連れて森の方に行くから。ラッテは先に行ってて」
「わかった、先に行ってるよ」
あれから、スズランちゃんやリリーちゃんにも訳を話したけど、夕飯までには帰って来るだろうって話になって、結局朝になった今でも帰って来ない。
深夜になっても帰って来ないカーム君を、心配した私とスズランちゃんは、一睡もしないで待っていたけど、カーム君は今まで何も言わずに朝まで帰ってこない事は一度も無かった。私は必死になって森に走り、カーム君を呼び続けた。
しばらくして、スズランちゃんがシュペック君とシンケン君ヴルスト君が来て、一緒に探してくれている。年越祭の準備を抜け出し、探し出す事にした。
「ここまでカームの臭いが有って、少し湿った土があるね、この土に少しカームの臭いが有るよ、そこからは臭いが消えてる」
「足跡は森の奥に続いてるね、追ってみよう」
そう言って二人は、森の奥に進み、ヴルスト君はカーム君を呼び続けている。
「ここの草が不自然に刈り取られてる、なんだろう?」
「わからない、カームが何かしたのかな? 足跡は?」
「これ以上は追えない、足の高い草が多い」
そんな会話を聞いて、スズランちゃんがものすごく不安そうな顔になる。私はそれを見て、背中を撫でながら「大丈夫だよ」と明るく声を掛ける事しか出来ない。
「おーいカーム! 出て来い! スズランとラッテさんが心配してるぞ!」
そんな声を、ずっと出しながらヴルスト君が背の高い草をかき分けながら進む。
そうして森の深い所まで行ったらいきなり声がした。
『あの三角の兜をかぶった奴はもういないのか?』
カームくんの声だ、けどどこから聞こえて来るのかわからない。この声は風魔法の奴だ。
「アレはミエル君が作り出した霧の幻覚だよ、夢魔族固有の魔法なんだよ! お願いだから出て来てよ!」
私は懇願するように叫んだ。
そうすると目の前の背の高い茂みの一部がモコリと盛り上がり、体中に草を生やした変なのが出て来た。
「アレがいないなら良い、心配かけてすまなかった」
草が生えた塊はカームくんと同じ声だった。
「おまえ、カームか?」
「あぁ、そうだ。無我夢中で逃げて、見つからないように一晩中隠れてた。あれが幻覚の魔法ならいいんだ……本当にすまなかった」
「その格好、すごいな、足元にいたのに気がつかなかった」
「臭いもしなかった」
「体中に泥を塗って体の臭いを消し、その泥に草を付けて、周りと同じようにして見つかりにくい様にしてずっと息をひそめてた」
なんとカームくんが必死に逃げて、一晩中隠れてたようだ、そんなに怖かったのかな?
そんな事を思っていたら、スズランちゃんが泣きながら泥だらけのカームくんに抱き付き「心配したんだから」と、それだけ言ってずっと抱き付いたまま離れなかった。私も抱き付きたかったけど、今はスズランちゃんに譲ってあげよう。
しばらくして、スズランちゃんが落ち着いたのか、カーム君から離れてビンタをした。グーじゃないなんて珍しい。
そしてカームくんが謝っているけど、友達は「いやーすごいなこれ」とか「泥に負けるなんて」とか言っていた。
帰ったら三人で熱いお風呂に入ろう。そして今日は準備を休もう、そして三人で夕方まで一緒に寝るんだ。
前書きにも書いたおまけSSの方に「ミエルの採蜜」と言う物を八月三日に上げていた事を告知するのを忘れていました。
http://ncode.syosetu.com/n4699cq/
一部の読者様から、URLを開こうとすると制限エラーと出ると報告が有りました。
ですので出る方は、下記のタイトルで検索お願いします。
「魔王になったら領地が無人島だった。おまけ、SS等」




