25
ヨキが眠りから覚めた時、枕元にはカナがいた。
ドラゴン族の寝床、石を積み重ねて円形に造り上げられた冬眠用の施設内であった。
中はとても暖かい。
「よかった……、目が覚めて」
カナは安堵のため息を深く吐いた。
「ヨキ様ぁ!!」
枕元にいたブヒタロウが抱きついてきた。
「オイラ、心配してたげすよぉ! 急に倒れてぇ!」
ブヒタロウは泣きじゃくりながらヨキの無事を喜んだ。
「すまない……」
「ぐすん。ヨキ様……、大丈夫でげすか?」
ヨキはその言葉に、ビョウブの姿を思い出し、胸が抉られるような痛みを感じた。そして目の前に浮かんだ映像の切れ端が光の点滅のように脳裏に過る。欠片はバラバラのまま、チラチラとヨキの頭の周りを回っている。
それは到底、大丈夫と呼べる状態ではなかった。
けれど口では人はこう言ってしまう。
「……大丈夫だ」
尋ねたブヒタロウもまた、ヨキが大丈夫に見えなくてもそれ以上の心配は口にしなかった。
「どれくらい眠ってた?」
ヨキは虚ろな目をカナに向けた。
「2日ちょっとよ」とカナが答えた。
そして今まで毅然としていたカナは、突然に声を震わせた。
「本当はね、わたしも怖かったの……。ヨキがこのまま目覚めなかったらどうしようって……」
ヨキは目に涙を浮かべるカナの肩に手を置いた。
「心配かけてごめん。ありがとう……」
カナもその言葉と、肩に伝わるヨキの温もりを感じてようやく落ち着いた。
ヨキはまだ朦朧とする頭に重さを感じながら立ち上がった。その体をブヒタロウが支える。
ヨキは覚束ない足取りで施設の外へ出た。ブヒゾウが入口を護衛していた。
「ヨキ様……、目覚められたのですね。よかった……」
「……ああ、すまない、心配かけて」
ブヒゾウは頭を下げた。
ヨキは町を見渡した。
町は悲しみに包まれている。楽しんでいた宴会の面影すらない。
夢であったならと願っていたヨキに、その現実が圧し掛かってくる。あれは実際にあったことだと実感させられる。
夕焼けが山の稜線を赤々と焦がしていた。
空が紅い。
こんなにも空は紅くなるだろうか。
空も真っ暗な夜が怖くて泣いているのだろうか。
この世界が闇に覆われることを嘆いて、目を腫らすほど泣いているのだろうか。
ヨキはそんなことを思い、果てしない黄昏の空を眺めた。




