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この異世界は悪意しかない!  作者: 浅見青松
第5章 アルージ国編
159/161

25


ヨキが眠りから覚めた時、枕元にはカナがいた。

ドラゴン族の寝床、石を積み重ねて円形に造り上げられた冬眠用の施設内であった。

中はとても暖かい。


「よかった……、目が覚めて」


カナは安堵(あんど)のため息を深く吐いた。


「ヨキ様ぁ!!」


枕元にいたブヒタロウが抱きついてきた。


「オイラ、心配してたげすよぉ! 急に倒れてぇ!」


ブヒタロウは泣きじゃくりながらヨキの無事を喜んだ。


「すまない……」


「ぐすん。ヨキ様……、大丈夫でげすか?」


ヨキはその言葉に、ビョウブの姿を思い出し、胸が(えぐ)られるような痛みを感じた。そして目の前に浮かんだ映像の切れ端が光の点滅のように脳裏に(よぎ)る。欠片(ピース)はバラバラのまま、チラチラとヨキの頭の周りを回っている。


それは到底、大丈夫と呼べる状態ではなかった。


けれど口では人はこう言ってしまう。


「……大丈夫だ」


尋ねたブヒタロウもまた、ヨキが大丈夫に見えなくてもそれ以上の心配は口にしなかった。


「どれくらい眠ってた?」

ヨキは(うつ)ろな目をカナに向けた。


「2日ちょっとよ」とカナが答えた。


そして今まで毅然(きぜん)としていたカナは、突然に声を震わせた。


「本当はね、わたしも怖かったの……。ヨキがこのまま目覚めなかったらどうしようって……」


ヨキは目に涙を浮かべるカナの肩に手を置いた。


「心配かけてごめん。ありがとう……」


カナもその言葉と、肩に伝わるヨキの温もりを感じてようやく落ち着いた。



ヨキはまだ朦朧(もうろう)とする頭に重さを感じながら立ち上がった。その体をブヒタロウが支える。


ヨキは覚束(おぼつか)ない足取りで施設の外へ出た。ブヒゾウが入口を護衛していた。


「ヨキ様……、目覚められたのですね。よかった……」


「……ああ、すまない、心配かけて」


ブヒゾウは頭を下げた。


ヨキは町を見渡した。

町は悲しみに包まれている。楽しんでいた宴会の面影すらない。

夢であったならと願っていたヨキに、その現実が()し掛かってくる。あれは実際にあったことだと実感させられる。




夕焼けが山の稜線(りょうせん)を赤々と焦がしていた。


空が(あか)い。

こんなにも空は紅くなるだろうか。


空も真っ暗な夜が怖くて泣いているのだろうか。

この世界が闇に覆われることを嘆いて、目を()らすほど泣いているのだろうか。


ヨキはそんなことを思い、果てしない黄昏(たそがれ)の空を眺めた。


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