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この異世界は悪意しかない!  作者: 浅見青松
第5章 アルージ国編
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22


ビョウブは足の力を奪われ、(うつぶ)せに倒れ込んだ。

荒い息を整え、自らヒールを放とうとした。


しかしビョウブから魔法が放たれることはなかった。放つことが出来なかった。


ヒールは放つ前に()き消された。


頭上でケージの甲高い声が響いた。


「ざぁんねん! 魔法封じの魔法サイレント掛けたの。これも“超”上級魔法だよぉ」


ケージはビョウブの背中に(たずさ)えられた善意の剣に目を向けた。


「護身用に持ってきたんだねぇ。信用ないなぁ」


ケージはその剣を抜き取って、まじまじと見つめた。


「でも、この剣はね、善意の力が入ってないやつぅ」


肩に()じ登ったイワンニコフの頭を()でた。


「さっきこの子がじゃれて剣にヒビを入れてくれたのぉ」


イワンニコフは褒められて喉を鳴らした。


「だから善意の力は外に漏れちゃいましたぁ。魔法を無効化できませーん」


ケージは口を押さえて笑いをこらえた。そして倒れるビョウブの顔に耳を寄せた。


「えっ、なんであたしが攻撃魔法を使えるのかって?」


ケージはひとりで尋ね、ひとりで答えた。


「不思議だよねぇ。善意に()()()()と回復魔法しか使えないもんねぇ」


ケージはくるくると回った。


「それはねぇ……」


ケージはそう言ってひらひらと体を踊らせた。くるくると回り、そしてピタリと体を止めた。


「教えてあげなぁい!」


ケージはこらえきれずに笑い出した。


「ねぇ、レイチョウがどこにいるか教えてあげようかぁ?」


ケージはしゃがみ込んでビョウブの耳に口を寄せた。


「レイチョウはね……」


ビョウブはその耳打ちに、(うつ)ろだった目を思わず開かせた。




ケージはビョウブに背を向けて手を振った。


「じゃあねぇ、ビョウブ」


ケージはそう言うと、イワンニコフを肩に乗せ、宙に浮いた。


そして墨汁を(こぼ)したような真っ黒な湖を越えて飛んでいった。


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