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この異世界は悪意しかない!  作者: 浅見青松
第5章 アルージ国編
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19


ブヒタロウの頭上に浮かぶ大量の大剣が亜人達に照準を合わせ、円形に広がった。


ヨキは激昂しているブヒタロウを見つめた。


他人の能力を一瞬で盗み、自分のものにしてしまう力。ヨキはカナからそう聞いた。


魔法の大剣がビョウブに放たれた時、ドラゴン族の軍部長ブルースに放たれた時をブヒタロウは知らない。その時見ていない。つまり、ブヒタロウは今、初めてこの大剣を見たのである。


本当にたった一瞬で、しかもあんなに大量に作り上げてしまうというのか。


ヨキは圧倒された。


しかしヨキはブヒタロウの放とうとしている大剣の禍々(まがまが)しさに、叫ばずにはいられなかった。


「ブヒタロウ! 落ち着け! それを放つんじゃない!」


あの大剣はとてつもない殺傷能力がある。しかもあれだけ大量に放つと、相当の犠牲者が出る。


もちろん、亜人達が悪いことをしていることも、こちらが攻撃を受けていることも分かる。


けれどヨキの望むのは、敵の殲滅(せんめつ)や滅亡ではない。


皆を元通り、善意に戻すことだ。

殺戮(さつりく)ではないのだ。


ビョウブは言っていた。

『何かを犠牲にしなきゃいけない時が来る』


それでもヨキは妥協はしたくなかった。

彼ら亜人もまた被害者なのだ。

敵であっても、かつては善意を持っていた無辜(むこ)(罪のない)の民なのだ。


「ブヒタロウ! やめろ! ブヒゾウは大丈夫だ! だから!」


ブヒタロウは血走った(まなこ)を周囲に向けた。ヨキの言葉が届いていない。


「出てこい! 親玉はどこだべ! オイラが倒してやる!」


「ブヒタロウ……」


頭上の大剣が今にも乱射されようとギリギリと小刻みに震えている。


その脅威を感じ取った亜人達が徐々に(おのの)き出した。そして彼らは1人が駆け出すと、誰からとも分からず蜘蛛(くも)の子を散らすように王宮から撤退していった。


そして亜人達は誰もいなくなった。


「逃げ……出した……」


ヨキ達はその信じられない光景に立ち尽くした。


魔法の豪雨が過ぎ止み、王宮内は昼下がりの木陰のように穏やかな静寂に包まれた。


張りつめた緊張から解き放たれ、ヨキ達は体の力をだらりと一気に抜いた。


助かったとホッとする反面、(いま)だに戦慄(せんりつ)は残っている。


ヨキはそっとブヒタロウに歩み寄った。


「ブヒタロウ」


ブヒタロウは「はっ」と身を震わせ、辺りを見回した。


「あ、亜人はどこ行ったべ!?」


表情も元の優しい顔に戻っている。頭上の大剣はいつの間にか消えている。

そして(そば)に寄ったヨキに気付いた。


「ヨキ様……」


あどけなさの戻ったブヒタロウをヨキは見つめた。

あれだけの人数の亜人をたった1人で沈黙させ、撤退させた。その力にヨキは恐怖すら感じている。


「そ、そうだべ! ブヒゾウは!?」


ヨキは静かに(うなず)いた。


「大丈夫だ。じきに動けるようになる」


ブヒタロウは安堵(あんど)のため息をついた。


「よかったべ……」




ヨキ達は宮殿をしずしずと後にした。内部にも周囲にも先ほどの魔法使いの亜人はいなかった。レイチョウが付近にいる様子もとりあえずは感じられない。


ヨキ達は倒れている宮殿付近の亜人兵士を介抱した。けれど彼らに話を聞いても有力な情報が得られることはなかった。


彼らは本物のレイチョウだと思って護衛していたからである。彼らもニセモノだとは思っていなかった。


何十人かの亜人を解放し、タヌキ・キツネ族もかなりの数を救った。


けれど、肝心のレイチョウはいなかった。


レイチョウは付近にいなくても、どこからでもあの魔法の大剣を放つことが出来るのだろうか。


ヨキはあの大剣の脅威をまざまざと感じさせられた。


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