18
ビョウブは亜人の魔法を防御しながら、辺りを忙しなく見回した。
「どこから!? あんな一瞬の隙を見計らって狙ったというの?」
善意の剣を手から落とし、血まみれとなってブヒゾウはその場に倒れた。
「ブヒゾウ!!」
カナは叫んでブヒゾウへと駆け出した。それを見てヨキはカナの手を掴んで止めた。
「今、飛び出して行くな!」
「でも!」
「僕も一緒に行く! ここへ連れて来よう!」
カナは焦りながら小刻みに頷いた。けれど心配が気を急かした様子でその場でブヒゾウへ向けてヒールを放った。
しかしブヒゾウの体の周りに結界が張られ、ヒールが弾かれた。
亜人達が回復を阻止している。
「なんてひどい!」
何度ヒールを打っても、何重にも張られた結界がブヒゾウの周りを囲み、回復を拒む。
ヨキとカナは頭を下げてブヒゾウへと駆け寄った。魔法が迫ってきても、ヨキが右手でそれを無効化する。
張られた結界に辿り着き、ヨキがそれに触れると、薄いガラスのようにいとも簡単に粉々に砕け散った。
仰向けに倒れたブヒゾウは口から大量の血反吐を流し、途切れそうな息を懸命に吸おうとしている。
魔法の大剣は既に消えている。
カナは急いでヒールを放った。
ブヒゾウの体の傷がみるみるうちに癒えてゆく。出血も止まり、傷口はきれいに塞がっていった。血色も良くなった。
間一髪、間に合った。
カナとヨキは安堵して、深く息を吐いた。
「大丈夫だ。すぐに動けるようになるからな」
ヨキはブヒゾウに声を掛ける。
「はっ、はっ」
ブヒゾウはまだ言葉を喋ることが出来ないが、呼吸を整えようとしている。
ヨキは魔法を防御しながら皆の元へ帰ろうとブヒゾウの体を引きずった。
けれど巨体であるブヒゾウの体はなかなか動かない。ヨキは振り返って叫んだ。
「ブヒタロウ! 運ぶのを手伝ってくれ!」
ブヒタロウは何も答えなかった。
「ブヒタロウ! 聞こえてるのか? 大変な状況だがこっちに来てブヒゾウを運ぶの……」
ヨキはそこで絶句した。
いや、ヨキだけでなく、カナも他の者も言葉を失った。
ブヒタロウの頭上に巨大な剣が浮かんでいる。
あの魔法の大剣である。
一瞬ヨキは、ブヒゾウに向けて放ったのがブヒタロウかと思ったが、そんなことはあり得ない。
ではブヒタロウが今その大剣に狙われているのかとも思った。
しかしそれも違う。
大剣の切っ先がブヒタロウに向いていない。攻撃してくる亜人達に向いている。そして驚くべきことは、その大剣がブヒタロウの頭上に一本ではなく大量にあることだ。
「ブ、ブヒタロウ……」
ヨキは掛ける声を震わせた。
ブヒタロウは目を吊り上げ、荒い息を吐き、亜人達を睨み付けている。
「よくも……ブヒゾウを……」
この異様な光景は、あれだけ魔法の雨を降り注がせていた亜人達を沈黙させた。
亜人達の攻撃がぴたりと止まった。
ブヒタロウに怯んでいる。
土砂降りが止んだ。




