13
「久しいな、ビョウブ、ケージ」
レイチョウは低い声を響かせた。
整った顔には皺がなく、口と顎にヒゲを蓄えていることで、精悍さがある。
紫の法衣は気品に|満ち、首や腕の黄金の装飾がそれを際立たせていた。王冠は被っておらず、宝石を埋め込んだサークレットが額で輝いていた。
ビョウブはケージを横目で見た。ケージは表情を変えず、じっとレイチョウを見つめている。
ヨキ達は玉座の傍まで寄った。
「ご無沙汰ね、レイチョウ」
ビョウブは鋭い視線を玉座へと向けた。
「これはどういう状況なのかしら?」
悉くタヌキ・キツネ族がこの国に溢れかえっている現状をビョウブは尋ねた。
「亜人はどこへ行ったの?」
レイチョウは表情を変えず答えた。
「はて、どこへ行ったのやら」
ビョウブもまた想定通りとばかりに静かに続けた。
「あなたはなぜここに留まっているの?」
レイチョウは口だけを動かした。
「ここは我が宮殿だからだ」
「ふっ、そんなにこの宮殿を大切にしていたかしら?」
「王になれば見えるものもある」
ビョウブは失笑した。
「玉座からじゃ見えないものもあるわよ」
レイチョウはただ黙って玉座に座っていた。
ビョウブは振り返り、レイチョウに背を向けた。
「時間の無駄ね」
ビョウブは扉へ向かって歩き出した。
ヨキ達はその行動に驚いた。
「え、どこへ行くんだ?」
その瞬間、ビョウブは振り返って魔法を放った。
善意の力を含んだ魔法は玉座に向けられ、レイチョウへ降り注いだ。
レイチョウは善意の力を食らい、悶えて倒れ込んだ。
「あ!」
思わずヨキは声をあげた。
そこに倒れているのはタヌキ族だった。
チャガマは「タンタン!」とその者の名を呼んだ。
「影武者!?」
カナは驚いて目を見開いた。
ビョウブは冷静な表情を浮かべた。
「驚くほどのことじゃないわ。これだけタヌキ族がいたんだもの」
「じゃあ、レイチョウはどこに?」
ビョウブは首を振ってため息をついた。
「さぁ、どこにいるのやら。いずれにしても、雲隠れされちゃ探すのは難儀ね」




