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この異世界は悪意しかない!  作者: 浅見青松
第5章 アルージ国編
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13


「久しいな、ビョウブ、ケージ」


レイチョウは低い声を響かせた。


整った顔には(しわ)がなく、口と(あご)にヒゲを蓄えていることで、精悍(せいかん)さがある。


紫の法衣は気品に|満ち、首や腕の黄金の装飾がそれを際立たせていた。王冠は被っておらず、宝石を埋め込んだサークレットが額で輝いていた。


ビョウブはケージを横目で見た。ケージは表情を変えず、じっとレイチョウを見つめている。


ヨキ達は玉座の(そば)まで寄った。


「ご無沙汰ね、レイチョウ」


ビョウブは鋭い視線を玉座へと向けた。


「これはどういう状況なのかしら?」


(ことごと)くタヌキ・キツネ族がこの国に(あふ)れかえっている現状をビョウブは尋ねた。


「亜人はどこへ行ったの?」


レイチョウは表情を変えず答えた。

「はて、どこへ行ったのやら」


ビョウブもまた想定通りとばかりに静かに続けた。

「あなたはなぜここに留まっているの?」


レイチョウは口だけを動かした。


「ここは我が宮殿だからだ」


「ふっ、そんなにこの宮殿を大切にしていたかしら?」


「王になれば見えるものもある」


ビョウブは失笑した。


「玉座からじゃ見えないものもあるわよ」


レイチョウはただ黙って玉座に座っていた。

ビョウブは振り返り、レイチョウに背を向けた。


「時間の無駄ね」


ビョウブは扉へ向かって歩き出した。

ヨキ達はその行動に驚いた。


「え、どこへ行くんだ?」


その瞬間、ビョウブは振り返って魔法を放った。

善意の力を含んだ魔法は玉座に向けられ、レイチョウへ降り注いだ。


レイチョウは善意の力を食らい、(もだ)えて倒れ込んだ。


「あ!」


思わずヨキは声をあげた。


そこに倒れているのはタヌキ族だった。


チャガマは「タンタン!」とその者の名を呼んだ。


「影武者!?」

カナは驚いて目を見開いた。


ビョウブは冷静な表情を浮かべた。


「驚くほどのことじゃないわ。これだけタヌキ族がいたんだもの」


「じゃあ、レイチョウはどこに?」


ビョウブは首を振ってため息をついた。


「さぁ、どこにいるのやら。いずれにしても、雲隠れされちゃ探すのは難儀ね」


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