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この異世界は悪意しかない!  作者: 浅見青松
第5章 アルージ国編
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タヌキ族のチャガマが先導し、ヨキ達は北を目指した。事態は急を要しているため、なるべく人気(ひとけ)のない道を選び、最速を心掛けた。


作物を育てている地域を抜け、軒が密集する町並みが見えてきた。

木材を組み立てた建築様式の家々と石畳で舗装された大通り。他種族より亜人の手先が器用である証のように整備されている。


かつては(にぎ)わっていたであろう市場には、亜人がうろちょろしている。商売が成り立っているか分からないが、(すさ)んでいる様子ではないようだ。


ヨキ達は人目を避けて裏通りを進んでいった。途中、亜人とばったり出くわしても、スピードを緩めることなく、善意を当ててやり過ごす。


道中何人かの亜人と出会ったが、それもまた皆、タヌキ・キツネ族の化けた姿だった。


「いったいどうなってるんだ?」

ブヒゾウは先を急ぎながらも思わずそう漏らした。


「普通の亜人がいないじゃないか」


不穏な状況が続く中、チャガマは倒れているキツネ族のひとりの顔を確認して止まった。


「ありゃ、ナンキチだ」


チャガマはそのキツネ族を介抱すると、そのナンキチとやらは目を覚ました。


「おお、チャガマ。コンな所で何を油揚げ……じゃなくて油を売っておる?」


チャガマはナンキチにヨキ達の紹介と、いきさつを説明した。


「なんとそれは一大事! 小生もコン回のことは状況分からぬが、精コン尽きるまでお供いたしましょう」


ナンキチが仲間に加わった。


「ヨキ殿、コン後ともよろしくお願いします、コンコン」


「よろしく」


「では、参りましょう、コンコン」


さすがキツネ族、コンコン言うなぁとヨキは思った。


ナンキチは口に手を当てた。

「コンコン、ちょっと風邪気味ですが」


(せき)だったのかよ!」



ナンキチの朧気(おぼろげ)な記憶によれば、亜人は特にタヌキ・キツネ族に高圧的な態度を取らなかったという。


「我々の国、バッカスは悪意に侵されてからというもの、(だま)し合い、化かし合いの連続で、国は乱れコン(とん)としており、みな疲労コン(ぱい)でした。

そんな折、亜人の王が我らの前へ登場したのです」


ナンキチは当時を振り返る。


「亜人の姿をしていれば、コン輪際、好きなだけここで自由に暮らしていいというお達しがありました。亜人と同等の生活がコン後も保障され、(しいた)げられたりすることもない。我々は優遇されて、ここへ来たのです、コンコン」


チャガマもナンキチの話が初耳のように聞いていた。


「お前は何も覚えていないのか?」


ナンキチがチャガマに尋ねると、軽くあしらうように吐き捨てた。


「あっしは仲間についてきただけだ。バッカス国に嫌気がさしてたからな」


「コンな状況なのに相変わらず他力本願だのう」


ヨキはナンキチに尋ねた。


「その亜人の王は宮殿にいるか?」


ナンキチは愛想よく何度も(うなず)いた。


「はいはい、いますよ。小生も幾度となく会ってますから」


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