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タヌキ族のチャガマが先導し、ヨキ達は北を目指した。事態は急を要しているため、なるべく人気のない道を選び、最速を心掛けた。
作物を育てている地域を抜け、軒が密集する町並みが見えてきた。
木材を組み立てた建築様式の家々と石畳で舗装された大通り。他種族より亜人の手先が器用である証のように整備されている。
かつては賑わっていたであろう市場には、亜人がうろちょろしている。商売が成り立っているか分からないが、荒んでいる様子ではないようだ。
ヨキ達は人目を避けて裏通りを進んでいった。途中、亜人とばったり出くわしても、スピードを緩めることなく、善意を当ててやり過ごす。
道中何人かの亜人と出会ったが、それもまた皆、タヌキ・キツネ族の化けた姿だった。
「いったいどうなってるんだ?」
ブヒゾウは先を急ぎながらも思わずそう漏らした。
「普通の亜人がいないじゃないか」
不穏な状況が続く中、チャガマは倒れているキツネ族のひとりの顔を確認して止まった。
「ありゃ、ナンキチだ」
チャガマはそのキツネ族を介抱すると、そのナンキチとやらは目を覚ました。
「おお、チャガマ。コンな所で何を油揚げ……じゃなくて油を売っておる?」
チャガマはナンキチにヨキ達の紹介と、いきさつを説明した。
「なんとそれは一大事! 小生もコン回のことは状況分からぬが、精コン尽きるまでお供いたしましょう」
ナンキチが仲間に加わった。
「ヨキ殿、コン後ともよろしくお願いします、コンコン」
「よろしく」
「では、参りましょう、コンコン」
さすがキツネ族、コンコン言うなぁとヨキは思った。
ナンキチは口に手を当てた。
「コンコン、ちょっと風邪気味ですが」
「咳だったのかよ!」
ナンキチの朧気な記憶によれば、亜人は特にタヌキ・キツネ族に高圧的な態度を取らなかったという。
「我々の国、バッカスは悪意に侵されてからというもの、騙し合い、化かし合いの連続で、国は乱れコン沌としており、みな疲労コン憊でした。
そんな折、亜人の王が我らの前へ登場したのです」
ナンキチは当時を振り返る。
「亜人の姿をしていれば、コン輪際、好きなだけここで自由に暮らしていいというお達しがありました。亜人と同等の生活がコン後も保障され、虐げられたりすることもない。我々は優遇されて、ここへ来たのです、コンコン」
チャガマもナンキチの話が初耳のように聞いていた。
「お前は何も覚えていないのか?」
ナンキチがチャガマに尋ねると、軽くあしらうように吐き捨てた。
「あっしは仲間についてきただけだ。バッカス国に嫌気がさしてたからな」
「コンな状況なのに相変わらず他力本願だのう」
ヨキはナンキチに尋ねた。
「その亜人の王は宮殿にいるか?」
ナンキチは愛想よく何度も頷いた。
「はいはい、いますよ。小生も幾度となく会ってますから」




