表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この異世界は悪意しかない!  作者: 浅見青松
第5章 アルージ国編
138/161


トンディーク国の鍛冶屋では、クジラや他の獣の骨から善意の剣を休みなく作っていた。


新たに仲間に加わった者たち用の骨を()き集めることは困難を極めていた。

いくらクジラが大きかろうと、1頭から精製される剣は50~70本ほどであって、全員に行き渡らせるには素材が足りない。


そんな職人のもとへ、ドラゴン族の副長フジナミが訪れた。ヨキやビョウブが善意の力を武器に込めるためにその場にいた時である。


「どうした、フジナミ。わざわざここまで来て」


フジナミは頭を軽く下げて会釈した。


「お忙しいところをすみません」


体は小さくなったが、(たくま)しい体つきはそのままで、顔つきも変わらず精悍(せいかん)さがある。

褐色の肌に銀の甲冑(かっちゅう)が映えている。

フジナミは手に白い物体を持っていた。


「実はこれを見て頂きたいのです」


ヨキがそれを受け取り、様々な方向から眺めた。


「見たところ骨のようだが?」


「はい、イデヨ様の骨です」


「えっ?」とヨキは驚いて骨を落としそうになった。


フジナミは神妙な表情を浮かべた。


「実はこれを剣に利用して頂けないかと」


突然の申し出にヨキは驚いた。


「いや、ちょっとそれは……」とヨキは困惑した。


フジナミはヨキの反応を予想していたのか、冷静に答えた。


(おっしゃ)りたいことは分かります。しかし我々ドラゴン族としては、イデヨ様のお骨を武器として利用して頂きたいのです」


懇願するフジナミだったが、ヨキは渋った。


「しかしそれは我々としては素直に了承できることではないよ」


フジナミはそれもまた承知であるように(うなず)いた。


「お気持ちは分かりますが、理由があるのです」


フジナミはヨキから骨を受け取って、指の間接で叩いてみせた。骨からはコンコンと高い音がする。


「我々ドラゴン族というのは傍目(はため)には強靭(きょうじん)な体をしているように見えましょう。しかしそれは(うろこ)に覆われた筋肉のせいであって、骨は意外と(もろ)いのです」


フジナミは翼を広げてみせた。


「我々のほとんどは空を飛びます。この大きな体を浮かせるためには極力体重を軽くせねばならない。そのため我々の骨は中身が詰まっていないのです」


鳥類やトリ族もそういった体の構造をしているそうだ。


「善意の剣は骨を加工して中を空洞化すると聞きました。我々ドラゴン族の骨の性質からも加工しやすいかと」


ヨキはビョウブと顔を見合わせた。


「確かドラゴン族は先祖の骨を身に付ける風習があるのよね?」


ビョウブの問いにフジナミは頷いた。


「偉大なる先祖の骨を形見として身に付けることで、その遺志を受け継ぐのです。そして共にあることで邪気を払ってくれるという()われがあります」


フジナミは真っ直ぐな目でヨキを見つめた。


「どうかイデヨ様の遺志を形見として我々に(たずさ)えさせてください」


そう言われると無下に断ることも出来ない。


「どうする?」

「本人達がいいって言うなら、問題ないんじゃない?」


ヨキ達は話し合って、その想いを()み取って了承した。


「分かった。ではその形見の剣をドラゴン族へ配ろう。全員分のは無理だろうが、フジナミの選ぶ精鋭部隊にそれを持たせてくれ」


フジナミは喜びと共に深く礼をした。


「かたじけのうございます」



去り際にヨキはフジナミに尋ねた。


「これからは君が(おさ)か軍部長になるのか?」


フジナミは立ち止まり、ゆっくりと振り返った。


「長はイデヨ様ですし、軍部長はブルースです。それはこの先も変わりません」


そう言って再び頭を下げて出ていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ