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トンディーク国の鍛冶屋では、クジラや他の獣の骨から善意の剣を休みなく作っていた。
新たに仲間に加わった者たち用の骨を掻き集めることは困難を極めていた。
いくらクジラが大きかろうと、1頭から精製される剣は50~70本ほどであって、全員に行き渡らせるには素材が足りない。
そんな職人のもとへ、ドラゴン族の副長フジナミが訪れた。ヨキやビョウブが善意の力を武器に込めるためにその場にいた時である。
「どうした、フジナミ。わざわざここまで来て」
フジナミは頭を軽く下げて会釈した。
「お忙しいところをすみません」
体は小さくなったが、逞しい体つきはそのままで、顔つきも変わらず精悍さがある。
褐色の肌に銀の甲冑が映えている。
フジナミは手に白い物体を持っていた。
「実はこれを見て頂きたいのです」
ヨキがそれを受け取り、様々な方向から眺めた。
「見たところ骨のようだが?」
「はい、イデヨ様の骨です」
「えっ?」とヨキは驚いて骨を落としそうになった。
フジナミは神妙な表情を浮かべた。
「実はこれを剣に利用して頂けないかと」
突然の申し出にヨキは驚いた。
「いや、ちょっとそれは……」とヨキは困惑した。
フジナミはヨキの反応を予想していたのか、冷静に答えた。
「仰りたいことは分かります。しかし我々ドラゴン族としては、イデヨ様のお骨を武器として利用して頂きたいのです」
懇願するフジナミだったが、ヨキは渋った。
「しかしそれは我々としては素直に了承できることではないよ」
フジナミはそれもまた承知であるように頷いた。
「お気持ちは分かりますが、理由があるのです」
フジナミはヨキから骨を受け取って、指の間接で叩いてみせた。骨からはコンコンと高い音がする。
「我々ドラゴン族というのは傍目には強靭な体をしているように見えましょう。しかしそれは鱗に覆われた筋肉のせいであって、骨は意外と脆いのです」
フジナミは翼を広げてみせた。
「我々のほとんどは空を飛びます。この大きな体を浮かせるためには極力体重を軽くせねばならない。そのため我々の骨は中身が詰まっていないのです」
鳥類やトリ族もそういった体の構造をしているそうだ。
「善意の剣は骨を加工して中を空洞化すると聞きました。我々ドラゴン族の骨の性質からも加工しやすいかと」
ヨキはビョウブと顔を見合わせた。
「確かドラゴン族は先祖の骨を身に付ける風習があるのよね?」
ビョウブの問いにフジナミは頷いた。
「偉大なる先祖の骨を形見として身に付けることで、その遺志を受け継ぐのです。そして共にあることで邪気を払ってくれるという謂われがあります」
フジナミは真っ直ぐな目でヨキを見つめた。
「どうかイデヨ様の遺志を形見として我々に携えさせてください」
そう言われると無下に断ることも出来ない。
「どうする?」
「本人達がいいって言うなら、問題ないんじゃない?」
ヨキ達は話し合って、その想いを汲み取って了承した。
「分かった。ではその形見の剣をドラゴン族へ配ろう。全員分のは無理だろうが、フジナミの選ぶ精鋭部隊にそれを持たせてくれ」
フジナミは喜びと共に深く礼をした。
「かたじけのうございます」
去り際にヨキはフジナミに尋ねた。
「これからは君が長か軍部長になるのか?」
フジナミは立ち止まり、ゆっくりと振り返った。
「長はイデヨ様ですし、軍部長はブルースです。それはこの先も変わりません」
そう言って再び頭を下げて出ていった。




