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この異世界は悪意しかない!  作者: 浅見青松
第5章 アルージ国編
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カナは森の中で魔法の訓練をしていた。


「スロー!」


「ストップ!」


ウサギや小鳥に向かい、魔法を何度も発動させた。


「はぁ、はぁ」


カナは膝に手をついて呼吸を整える。魔法は生命エネルギーを放つため、体力消費が激しい。特に慣れない魔法を繰り出すと、その消費配分がまだ体に馴染(なじ)んでいないため、余計に消耗する。


カナは体を起こし、再び魔法を放った。


「スロー!」


「だいぶ早く出せるようになったわね」

背中から声がして、カナは振り返った。


ビョウブが閉じた扇子を手のひらに当てて、カナの様子を見つめていた。


「ホント? でも、まだまだだよ」


「熱心ね。ヨキちゃんの影響かしら」


ヨキの意識の変化をカナは隣で見てきた。それがカナの意識を変えるきっかけになったのは間違いない。


「そうだね。ヨキがあれだけ信念を持って世界を救おうとしてるんだもん。わたしも頑張らなくちゃ」


カナの意欲を見つめながら、ビョウブは言葉を噛みしめるように(つぶや)いた。


「2人は良いコンビね」


「そう? ……なんか嬉しい」


カナははにかんで微笑んだ。


「ヨキちゃんが肩に手を置くのはカナ以外にいないもの。嫉妬しちゃうわ」


冗談っぽくビョウブは言ったが、本心をのぞかせたような言い方であった。


カナは再び魔法の練習を続ける。

その姿をビョウブは見つめた。


回復魔法だけではいけないと、カナがビョウブに他の魔法を教えてほしいと直談判してきた。


その真剣な眼差し、そして練習に余念がない直向(ひたむ)きな姿勢、ビョウブは素直にカナを評価していた。


「ホント、あなたは頑張ってるわ」


ビョウブはそう言いながら、練習に勤しむカナに指をパチンと打った。


カナの法衣が白からピンクへ変わった。


「えっ」とカナは驚いて、自分の法衣に触れた。


ビョウブは微笑んだ。


「魔法使いは先輩から昇級を授与されるのよ。あなたはもう見習いじゃないわ。立派な魔法使いよ」


「ビョウブ……」


ビョウブは自分の赤い法衣を(ひるがえ)した。


「もちろん、まだ上級ではないけどね。ピンクは一般魔法使い。それをわたしが認めるわ」


カナはビョウブに抱きついた。


「ありがとう! わたし、もっと頑張るからね! この法衣に見合う魔法使いになるから!」


喜んでカナは駆け出した。


「ヨキに見せてくる!」


そうはしゃいで去ってゆくカナの背中をビョウブは見つめた。




「ホント……嫉妬しちゃうわね……」


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