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カナは森の中で魔法の訓練をしていた。
「スロー!」
「ストップ!」
ウサギや小鳥に向かい、魔法を何度も発動させた。
「はぁ、はぁ」
カナは膝に手をついて呼吸を整える。魔法は生命エネルギーを放つため、体力消費が激しい。特に慣れない魔法を繰り出すと、その消費配分がまだ体に馴染んでいないため、余計に消耗する。
カナは体を起こし、再び魔法を放った。
「スロー!」
「だいぶ早く出せるようになったわね」
背中から声がして、カナは振り返った。
ビョウブが閉じた扇子を手のひらに当てて、カナの様子を見つめていた。
「ホント? でも、まだまだだよ」
「熱心ね。ヨキちゃんの影響かしら」
ヨキの意識の変化をカナは隣で見てきた。それがカナの意識を変えるきっかけになったのは間違いない。
「そうだね。ヨキがあれだけ信念を持って世界を救おうとしてるんだもん。わたしも頑張らなくちゃ」
カナの意欲を見つめながら、ビョウブは言葉を噛みしめるように呟いた。
「2人は良いコンビね」
「そう? ……なんか嬉しい」
カナははにかんで微笑んだ。
「ヨキちゃんが肩に手を置くのはカナ以外にいないもの。嫉妬しちゃうわ」
冗談っぽくビョウブは言ったが、本心をのぞかせたような言い方であった。
カナは再び魔法の練習を続ける。
その姿をビョウブは見つめた。
回復魔法だけではいけないと、カナがビョウブに他の魔法を教えてほしいと直談判してきた。
その真剣な眼差し、そして練習に余念がない直向きな姿勢、ビョウブは素直にカナを評価していた。
「ホント、あなたは頑張ってるわ」
ビョウブはそう言いながら、練習に勤しむカナに指をパチンと打った。
カナの法衣が白からピンクへ変わった。
「えっ」とカナは驚いて、自分の法衣に触れた。
ビョウブは微笑んだ。
「魔法使いは先輩から昇級を授与されるのよ。あなたはもう見習いじゃないわ。立派な魔法使いよ」
「ビョウブ……」
ビョウブは自分の赤い法衣を翻した。
「もちろん、まだ上級ではないけどね。ピンクは一般魔法使い。それをわたしが認めるわ」
カナはビョウブに抱きついた。
「ありがとう! わたし、もっと頑張るからね! この法衣に見合う魔法使いになるから!」
喜んでカナは駆け出した。
「ヨキに見せてくる!」
そうはしゃいで去ってゆくカナの背中をビョウブは見つめた。
「ホント……嫉妬しちゃうわね……」




