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この異世界は悪意しかない!  作者: 浅見青松
第4章 ディーカイト・カゲ国編
132/161

36


焦土と化した平原に一陣の風が吹いた。剣を交える音はもうこの地には響いていない。


西側のドラゴン族は軍部長ブルースを失い、総崩れを起こし、形勢は一気にヨキ軍に傾いた。


東側では統率の取れたヨキ軍の戦力が激流のようにドラゴン族陣営になだれ込み、勝負はあっさりと決着がついたのである。


特に上空からのトリ族の魔法散布は効果覿面(てきめん)で、一度に大量の戦力を喪失させる格好の手段であった。


いかに魔法が最強かを思い知らされる。


最後まで(あらが)っていたのは副長フジナミで、魔法を(ことごと)(かわ)していたが、擬態して姿を消したブヒタロウの奇襲魔法には成す術もなく、悪意を(はら)われ、地面へと倒れた。


30万と言われていたドラゴン族であったが、ムシ族との抗争によって、だいぶ数は減らされていたようである。


怪我人も多数おり、満身創痍(そうい)で戦う者も少なくなかった。

そう、すでにドラゴン族は疲弊していたのである。



勝利をおさめた形となったヨキ軍だが、喜ぶ者はいない。


ムシ族は壊滅し、ドラゴン族も(おさ)のイデヨと軍部長ブルースを失った。


亡くなった者を(とむら)い、土に(かえ)す。

それは生き残った者には(つら)い別れであることは間違いない。


熾烈(しれつ)な戦場を目の当たりにし、戦いの悲惨さを痛感する。





地面に並ぶ土山を眺め、ヨキは物思いに(ふけ)っていた。


「ここにいたの?」

カナがヨキに声を掛けた。


「大丈夫?」


ヨキはゆっくりと(うなず)いた。


「大丈夫だよ」


救えなかった命の多さに直面し、ヨキの心に重く()し掛かっている。


「本当はさ……」


ヨキは躊躇(ためら)いながらも心情を吐露した。


「フジナミの言葉に打ちのめされそうになったんだ。強い意志を持つってのはそう簡単じゃない……」


カナは優しく同意した。


「そうだね。状況は思った以上にひどい方向へ進んでるみたい」


「うん……、僕らが解放したのはまだ4つ。9つあるのならまだ半分も達してない」


「長い道のりになりそう……」


「でも悠長にしていられない」


「そうだよね」


ヨキはそう言って立ち上がった。


「だから僕は次の国を決めた」


「どこ?」


カナに尋ねられ、ヨキは固い決意ある眼差しで答えた。


「亜人の国、アルージだ」



(第4章 ディーカイト・カゲ国編 完)


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