35
血だらけのノモンは踏ん張っていたが、とうとう地に膝をついた。
相対するブルースは、大剣を撓らせるように振り回し、そしてノモンを威嚇するように喉元へ突き付けた。
「分かったか、トラよ。つまらぬ矜持などではこの世は動かぬということを」
ノモンは呼吸すら痛そうに口を歪め、答える気力も残っていなかった。
「貴様に必要なのは意地ではない。敗北を認めるという意気地だ」
ノモンは荒い息遣いを繰り返しながら、ブルースの言葉を受け入れようとせずにまんじりと睨んでいた。
ブルースは細くため息をついた。
「やれやれ。ここまで愚かだとは。死して生き様を突き通そうとしたところで、それもただの死だ」
ブルースは大剣を握る手に力を込めた。
「オレに屈した死を、死んだ後も後悔するがいい」
ブルースの剣先の冷たさを喉に感じてノモンは目を閉じた。
ズバーーン!!
その激しい音が自分の首から発したと思い、ノモンはじっと身を固めていた。
けれど意識が遠のかず、首からの痛みもない事実がノモンの目を開けさせた。
ノモンは目を見開いた。
目の前のブルースの体に巨大な剣が突き刺さっている。剣はブルースの背中を貫通し、地面に突き刺さっている。
ノモンは茫然とその不可思議な剣をしばらく見ていた。
そしてそれはどこかで見た光景であると思い出した。
ヨキ達と戦っている際にビョウブに突き刺さったあの剣と同じだ。
どこからともなく飛んできて、圧倒的な殺傷能力で一撃で仕留める。
いったいどこから……?
ノモンは辺りを揺らぐ視界で見回した。けれど探索する余力も残っておらず、ノモンはその場に仰向けに倒れた。
ブルースは既に息絶えていた。
兵士たちが救おうとしたが、回復魔法の使えないドラゴン族にはなす術がなかったのである。




