表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この異世界は悪意しかない!  作者: 浅見青松
第4章 ディーカイト・カゲ国編
128/161

32


キーモ・インデスケッド国は国土の半分が湿地に覆われ、喬木(きょうぼく)(背の高い木)もなく、一面が広く見渡せる。


その国を制圧し、(くつろ)いでいたドラゴン族たちは遠方からバシャバシャという湿原を掛ける音を聞いた。


その音は段々と近づき、激しくなってゆく。(かす)んだその視線の先に、押し寄せてくる大群を見た。


「うおおお!!」


ヨキ軍は喊声(かんせい)をあげ、波のうねりとなってドラゴン族へと向かっていった。


ドラゴンは奇襲され、混乱を極めた。


統制されていない者たちに善意の力が不意に襲ってくる状況、ドラゴン族は対処に遅れて、なす術もなくその場に倒れ込んだ。


ヨキ軍側のドラゴン族たちは悪意に侵された同胞と対峙(たいじ)し、

「今、楽にしてやるぞ」

と善意の剣を振りかざしていった。




横長に広がる湿地帯のキーモ・インデスケッドの国土を北に向かって侵攻していったが、ムシ族の生き残りに出会うことはなかった。


ただ(むくろ)が所々に散乱し、無惨な戦況だったことを物語っていた。


その間を歩く度にヨキ以上にホイホイが胸を痛めていた。悪意の体をし、威勢の良かったホイホイだったが、その顔を青褪(あおざ)めさせた。


自らがムシ族を壊滅に追いやった負い目が心に突き刺さっているようだ。


ヨキは()えてホイホイに声を掛けなかった。彼の悲痛な表情を見ていれば、何も言わずともいかに悪意がこの世に不要か、愚かしいものかを知るだろう。


廃墟の片隅で小さい子を抱えながら息絶えるムシ族の姿があった。


ホイホイはそれを見た時、膝から崩れ落ち、抱きかかえながら嗚咽(おえつ)を漏らした。


「ごめんなさい……ごめんなさい……」


何度も何度もホイホイの懺悔(ざんげ)がその場に響いた。




ムシ族の国を北上し、ヨキ軍の波はディーカイト・カゲ国の国境へと近づいた。

横長の国土を攻め入っていくうちに、ヨキ軍自体も横長の陣形となり、次第にヨキ軍は東西へと分断していった。

ノモン率いるネコ族とケージは西に、その他は東に分かれていく。



ひた走る西側の軍は地響きと共に立ちはだかる群れを前方に見た。甲冑(かっちゅう)を身に(まと)い、ヨキ軍の侵攻を察知したドラゴン族の精鋭隊が待ち構えている。


ヨキ軍側のドラゴン族はその姿を見て、一瞬のうちに(ひる)んだ。


「ブルース軍部長!」


屈強な体つきをしたドラゴンが大剣を構え、西軍に目を向けた。頬に深い傷を持っている。


「まさかこれほどの人数が謀叛(むほん)を起こすとはな」


ヨキ軍のドラゴン族たちは善意の剣を下げ、まともにやり合う意志はないことを主張した。


「軍部長! これは謀叛などではございません。我々は……」


そう訴えるドラゴン族にブルースの剣が無下に迫ってきた。

それをネコ族のトラ、ノモンがその腕を制した。


ノモンの手に力が入る。


「おい、大将。部下が説明しようとしてるんだぜ?」


ノモンはブルースの手首を掴みながら(にら)んだ。


ブルースは怪力によって阻まれた手を、これまた怪力で振りほどいた。

そしてノモンの後ろに控えるドラゴン族に向かって叫んだ。


「恥を知れ、貴様ら! ネコ族に手を借りるほど落ちぶれたか」


ノモンは顳顬(こめかみ)に青筋を立てた。


「あん!?」


「最強種族の名折れだ」


ノモンは拳をポキポキと鳴らし、前へ進み出た。


「なら、試してみろ」


そしてニヤリと笑う。


「ネコの手が恥に値するかどうか!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ