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この異世界は悪意しかない!  作者: 浅見青松
第4章 ディーカイト・カゲ国編
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30


ホイホイやブヒタロウ()が偵察から帰ってきた。


ヨキの前に現れた時にホイホイは既に肩をすぼめてしょんぼりしていた。きっと通信の時の態度のせいでビョウブから説教を食らったのだろう。

さすがに往復ビンタはされなかったようだが。


「ご苦労さん、思ったより早く帰れたな。無事で良かった」


ブヒタロウは身震いした。


「途中でヘビの大群に出くわして、倍の速さで走ってきたでげす」


爬虫(はちゅう)類の国だからか。それは散々だったな」


ブヒタロウは心労が(たた)ったようにため息をついた。


「ところでヨキ様、ドラゴン族もムシ族も助けるって本当でげすか?」


ブヒタロウはヨキに尋ねた。


「ああ、本当だ。その前に……」


「はい?」


「擬態から戻れてるようだが……」


ブヒタロウは誇らしげに胸を張った。


「はいな、ちゃんと戻れるようになったでげすよ」


「でも耳が無くなってるぞ」


「えっ?」


ブヒタロウは焦って自分の耳を触った。


「あるじゃないでげすか! 驚かさないでくださいですよ」


「あるのか、見えないだけで。つまり……今度は耳だけ消えたままみたいだぞ」


「あれれ?」


相変わらず上手くいかないブヒタロウにヨキは失笑した。


「ただ擬態はここからは必要ないから安心しな。真っ向からドラゴン族とムシ族を止めにいく」


「ホッ、それは良かったでげす。……って、正面から戦うほうが危ねぇじゃないでげすか!」


「ブヒタロウ」とヨキは真顔になった。


「は、はい?」


「お前は魔法も使えるし、擬態も出来るし、ノリツッコミも出来る天才だ」


「て、天才……」


「そんなお前が何を恐れることがある?」


ブヒタロウは凛々(りり)しくなった。


「…………何もないでげす!」


「そうだ、お前が活躍すれば、こちらの勝利は朝飯前だ」


ヨキの言葉にブヒタロウは機関車のように鼻息を荒く吐いた。


「期待してるぞ」


「任せてくださいでげす!」


ブヒタロウは「おー!」と拳を天に突き上げた。



ブヒタロウは木にも登る勢いで駆けていったが、ヨキは口からでまかせで(おだ)てたわけではなかった。


本当にヨキはそう思っている。ブヒタロウには戦況を好転させる力を持っている。それは誰にも真似できない特別な能力である。


「ヨキくん」


「うわっ!」


急に間近でホイホイに話し掛けられてヨキは驚いた。


「な、何だよ、急に」


「ボクってそんなに感じ悪かった?」


ヨキは嘆息した。

今度はこっちのメンタル治療か。


「ビョウブに説教されたか?」


「…………うん」


「自信を持つのはいいが、不遜(ふそん)な物言いはダメだ。ホイホイは頭が良いんだから、相手を気遣うことが出来るはずだろ?」


「…………まぁ、そ、そうだね」


「丸々した体してるんだし、みんなに好かれるはずだよ」


「………そ、それってカワイイってこと?」

ホイホイは目を輝かせた。


「えっ…………、まぁ、広い意味ではそうかな……。ものすごい広い意味でだけど」


「そうか……。ボクはカワイイのか……」


「いや、広い意味でだぞ?」


「ありがとう、ヨキくん! ボク、カワイイ自分を自覚するよ!」


「…………直すの、そういうとこだぞ」


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