28
「どうしましょうか?」
ドラゴン族を含めた皆が集結し、これからの対策をヨキは尋ねられた。皆が注目し、ヨキの言葉を待っている。
ヨキは考えを巡らせた。ドラゴン族ゲキリンの言葉が脳裏を掠め、こびりついて離れない。
ヨキは決意を目に浮かばせ、皆に顔を向けた。
「ドラゴン族に半分の剣を貸してやってくれ」
ヨキの発言に一同は驚いた様子だった。
ヨキは静かな口調で皆に語った。
「この一連の戦いは亜人による国取りゲームだ」
そこにいる者達はどよめいた。その事実を知らない者がほとんどだった。何も知らされずに種族間の戦いに赴き、そんな無益な理由で仲間や大事な人を失ったのである。
「亜人として恥ずべき行為だ。申し訳ない」
ヨキは深く頭を下げた。
一同は静かに聞いていた。皆、思うところがあるだろう。複雑な表情を浮かべている。
「僕は正直、ドラゴン族とムシ族の抗争を傍観しようとした。争っている間に他の国へと侵入するほうが得策だと考えたからだ。
けど、それは……やめる」
ヨキは拳を固く握った。
「いつの間にか僕も効率良く事を運ばせることばかり考えていた。
それじゃ僕も勝つことしか考えない憎き亜人の侵略と考え方は一緒だ」
ヨキは体中に湧き上がる意欲を噛みしめ、一同に目を向けた。
「僕の目標はすべての種族から悪意を取り除くことだ」
ヨキはドラゴン族へ目を向けた。
「我々には15万ものドラゴン族の仲間がいる。もう彼らは僕らの仲間なのだ。彼らのためにも我々はドラゴン族を解放する。そして敵対するムシ族も助ける」
「そんなこと可能でしょうか?」
そんな声が上がったが、ヨキの想いは揺るがなかった。
「出来る限りだ。出来得る限りだ。
すべての命を救うことは不可能かもしれない。それでも僕は最善を尽くしたい。
出来る限り、出来得る限り」
ヨキは皆の顔を見渡した。
「力を貸してほしい」
ヨキは拳を強く握り、皆の前に突き上げた。
「彼らを救うぞ!」
一同は士気が高まり、渦のような鬨の声をあげた。特に15万人のドラゴン族はヨキの言葉に甚く感動し、その歓声にも似た雄叫びは地上を揺るがすほどの轟きとなった。
「相変わらず素晴らしい演説だったわ」
ビョウブが演説を終えたヨキの傍でそう言った。
ヨキは表情を変えずに答えた。恥じらったり、はにかんだりはもうしていない。
「もう身の丈に合わない演説じゃないよ。僕の本心を皆に伝えただけだ」
凛としたヨキの表情に、ビョウブはヨキの逞しさを感じた。
去りゆくヨキの背中をビョウブは見つめた。
「大人びてたら、いつの間にか本当に大人になってた、ってことね……。この短期間であなたは正真正銘のリーダーになったのね」




