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ヨキは、木陰で休んでいたカナの元を訪れた。
「お疲れさん、怪我人は無事治ったようだね」
ヨキが笑顔で声を掛けると、カナも微笑み返した。
「さすがに数が多くて大変だった」
「ありがとう。ブヒタロウも残すべきだったな」
「ブヒタロウはこの前ヒール唱えてたら牛肉出してた」
「そりゃ『ビーフ』だろ。ははっ、あいつらしい」
2人して大笑いした。
カナは大勢の種族が行き交う姿を眺めた。
「すごいよね、この光景」
「ん?」
「だってわたしとヨキとブヒゾウ、ブヒタロウの4人だったんだよ? それが今ではこんなに仲間が増えて」
ヨキも風に吹かれてその光景を眺めた。
「うん、僕も信じられないよ。よくここまで辿り着いたなって思う」
「すごいね、善意の力って」
「そんなことないよ」
「やっぱりヨキって特別な存在だって思うもん」
ヨキは首を振った。
「カナの魔法のおかげだよ。僕ひとりだったらひとりひとり治すしかなかった。けどカナの魔法と組み合わせることで、大勢を治せるし、剣も作れた。僕の力だけじゃ到底無理だった」
「そう言ってくれると嬉しい。たまに自分が力不足だって思うんだ」
「そんなことないよ。こんなにみんなを癒してるんだから」
カナは疲れを忘れたように声をあげた。
「ねぇ、ヨキも魔法習ったら?」
「えっ、僕?」
「そう! そしたら自分で魔法放って悪意を治せるよ」
ヨキはがっくりと頭を垂れた。
「残念ながら僕には出せないんだよ」
「なんで?」
「とっくに試してみたんだよ。ビョウブやケージにも聞いて学んでみた」
「ダメだったの?」
「僕の体は魔法を無効化しちゃうから」
「あ、そうか」
「魔法の元となる生命エネルギーがさ、体から湧き上がる感覚はあるんだよ。でも体外に放出しようとすると、ヒュンって体が掻き消しちゃうみたい」
「そっかぁ」
カナは膝を抱えて残念そうにした。
「だから僕は特別な存在じゃない。誰かの力を借りないと、能力も発揮できない」
カナは首を振ってすぐに否定した。
「そもそも善意の力なんてヨキしか出せないんだから、特別は特別だよ」
そう褒められて、ヨキははにかんだ。
「もっと使い勝手のいい能力を授けてくれればよかったのに」
カナもはにかんだ。
「それはわたしも同じ。回復魔法しか使えないんだもん」
互いを見て、2人は笑い合った。
「人には得手不得手があるってことか。天は二物を与えない」
「でも協力すれば有効な力になってるよ」
ヨキは天を見上げた。爽やかな風が溶けたような紺碧が目に浸みる。
ヨキは少しだけ自分の存在意義を理解できた気がした。
この力は、ひとりで使うものではない。
協力すると力を発揮する。
敢えて僕たちを協力をさせようとしたのかい、神様……




