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この異世界は悪意しかない!  作者: 浅見青松
第4章 ディーカイト・カゲ国編
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26


ヨキは、木陰で休んでいたカナの元を訪れた。


「お疲れさん、怪我人は無事治ったようだね」


ヨキが笑顔で声を掛けると、カナも微笑み返した。


「さすがに数が多くて大変だった」


「ありがとう。ブヒタロウも残すべきだったな」


「ブヒタロウはこの前ヒール唱えてたら牛肉出してた」


「そりゃ『ビーフ』だろ。ははっ、あいつらしい」


2人して大笑いした。


カナは大勢の種族が行き交う姿を眺めた。


「すごいよね、この光景」


「ん?」


「だってわたしとヨキとブヒゾウ、ブヒタロウの4人だったんだよ? それが今ではこんなに仲間が増えて」


ヨキも風に吹かれてその光景を眺めた。


「うん、僕も信じられないよ。よくここまで辿(たど)り着いたなって思う」


「すごいね、善意の力って」


「そんなことないよ」


「やっぱりヨキって特別な存在だって思うもん」


ヨキは首を振った。


「カナの魔法のおかげだよ。僕ひとりだったらひとりひとり治すしかなかった。けどカナの魔法と組み合わせることで、大勢を治せるし、剣も作れた。僕の力だけじゃ到底無理だった」


「そう言ってくれると嬉しい。たまに自分が力不足だって思うんだ」


「そんなことないよ。こんなにみんなを癒してるんだから」


カナは疲れを忘れたように声をあげた。


「ねぇ、ヨキも魔法習ったら?」


「えっ、僕?」


「そう! そしたら自分で魔法放って悪意を治せるよ」


ヨキはがっくりと頭を垂れた。


「残念ながら僕には出せないんだよ」


「なんで?」


「とっくに試してみたんだよ。ビョウブやケージにも聞いて学んでみた」


「ダメだったの?」


「僕の体は魔法を無効化しちゃうから」


「あ、そうか」


「魔法の元となる生命エネルギーがさ、体から湧き上がる感覚はあるんだよ。でも体外に放出しようとすると、ヒュンって体が()き消しちゃうみたい」


「そっかぁ」

カナは膝を抱えて残念そうにした。


「だから僕は特別な存在じゃない。誰かの力を借りないと、能力も発揮できない」


カナは首を振ってすぐに否定した。


「そもそも善意の力なんてヨキしか出せないんだから、特別は特別だよ」


そう褒められて、ヨキははにかんだ。


「もっと使い勝手のいい能力を授けてくれればよかったのに」


カナもはにかんだ。

「それはわたしも同じ。回復魔法しか使えないんだもん」


互いを見て、2人は笑い合った。


「人には得手不得手があるってことか。天は二物を与えない」


「でも協力すれば有効な力になってるよ」



ヨキは天を見上げた。爽やかな風が溶けたような紺碧(こんぺき)が目に()みる。


ヨキは少しだけ自分の存在意義を理解できた気がした。



この力は、ひとりで使うものではない。

協力すると力を発揮する。



()えて僕たちを協力をさせようとしたのかい、神様……


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