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ホイホイ達の情報を待つ間、国境には善意の剣を持った3,000人とその後ろに仲間になった15万の半分ほどのドラゴン族を配備させた。
ドラゴン族はビョウブが言うように、どちらかというと爬虫類や両生類系が多く、背中に甲羅があったり、尻尾が切れていたり、くねくねと長い体をしていたりする。
皆一様に戦闘力は高そうで、彼らが防衛してくれることは頼もしい。
この加わった仲間に善意の剣を配りたいところだが、とにかく生産が間に合わない。
剣を作る工程で出る屑でペンダントを作れればいいのだけれど、中が空洞になったものでないと善意の力は外へ逃げてしまう。
小さいアクセサリーを作る繊細な技術というものはこの国にはなく、結局、剣を作るほうが生産効率が良いのである。
彼らドラゴン族は火を吐ける。体から放出する炎は生命エネルギーであり、ペンダントを持っていれば、善意の力を含ませることが出来るのだが。
ただ注意すべきは相手を火傷させてしまうことで、悪意を治したとしても相手の命を奪いかねない。
悪意を治してからヒールを放つという二度手間を要する。
その点、善意の力を含んだヒール魔法は優れていた。
そして善意の剣も同様、相手を傷つける目的ではないので、その観点からしても重宝するのである。
相手の命を奪うことが目的でないヨキにとってはそこが重要であって、そして常に悩ましい部分でもある。
『亜人の国……』
ヨキは作戦準備のために方々を歩きながらビョウブとの会話を思い出していた。
『そう、我が故郷アルージ国』
『その国もゲームに参加してるのか?』
『勿論……と言いたいところだけど、ほぼ名目上というべきかしら』
『名目上?』
『だって圧倒的に強い反則級の国だもの』
『魔法、か』
『そう、既にこの世界は亜人が支配していて、その中でこのゲームは行われている。ゲーム開始前から国取りゲームの勝者なわけよ。その国が参加したら、そりゃあ、亜人の国が勝つに決まってるわ』
ビョウブの口調には亜人たる自負が込められているようにヨキには感じた。
『だからわざわざ他国を攻める手間はせず、どっかり玉座に腰を下ろして戦況を見守っている』
『鼻につくくらい余裕だな』
『実際それくらい魔法は無敵なのよ。魔法の効かないヨキちゃんには分からないだろうけど』
ビョウブはヨキの横顔を見つめた。
『ヨキちゃんって……、アルージ国出身じゃないわよね?』
ヨキはどう答えるべきか迷った。
『今まであまり詳しい素性は聞かなかったけど、きっとアルージ国のことすら知らない……わよね?』
沈黙するヨキをビョウブは眺めた。
『あまりにもイレギュラーで、あまりにも突然現れた』
ヨキはどう答えるべきか迷ったが、口元に笑いを含ませた。
『外来種……みたいなものかな。宇宙人みたいな』
『ウチュウジン?』
ヨキはビョウブの反応に驚いた。宇宙という概念がここにはないのか。太陽や月や星は存在するのに。
ヨキは言葉を取り繕って懸命に説明した。
『えっと……、どうしてここに来たのか僕にも分からないけど、でもこの世界で生まれ育ったわけじゃないってことは、明らかだっていうか……』
ビョウブは説明に手間取るヨキの姿に口を押さえて笑った。
『やっぱりヨキちゃんって不思議』
『そう……かな?』
『だって……』
ビョウブは扇子を広げた。
『そんな特別な能力を持って、突然現れるなんて。それじゃまるで、ヨキちゃんのためにこの世界があるみたいじゃない』




