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この異世界は悪意しかない!  作者: 浅見青松
第4章 ディーカイト・カゲ国編
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19


「ここにいるのか?」


「さっきからそう言ってるでげす! まったくもう!」


「どうして体が消えてるんだ?」


耳がピョコピョコ動く。


「オイラも分かんないでげす。急に誰もオイラが見えなくなって」


「これって、まさか擬態?」

ビョウブも驚きを隠せない。


「そんなこと出来たのか?」

ヨキは信じられない思いで尋ねた。


「出来ないでげす。突然こうなったでげすよ」


擬態といえば、先ほど正体を現したカメレオン型のドラゴン族である。


ヨキは倒れているドラゴン族を指差した。


「ブヒタロウ、あいつのこと知ってるか?」


肌色の耳がドラゴン族のほうへと向いた。

ブヒタロウは目を凝らして眺めているようだ。


「うーん、あのドラゴン族かどうか分からねぇでげすけど、数日前から変なものが見えてたでげす」


「変なもの?」


「景色の中にボーッと浮かんでる人の形みたいなものでげす。他の人は見えないみたいで、オイラも見間違えかなって思ってたでげす」




国境付近では、戦いを終えてブヒゾウとカナが腰を下ろして体を休めていた。


「しかし驚いちゃった。ブヒタロウが姿まで消せるなんて」


「おそらくドラゴン族にそのような能力の持ち主がいるのでしょう。昔ブタ族の行商に聞いたことがあることを思い出しました」


「ブヒタロウにはそれが見えたってこと?」


剣戟(けんげき)訓練の時も、何度も目を(こす)って遠くを見てましたし、参謀会議の時もずっとよそ見していてヨキ様に怒られてました。

あの時からブヒタロウには見えていたんでしょう」


「すごいね、ブヒタロウって。やっぱり見た能力が出来るようになっちゃうんだ」


「魔法が使えるようになったのも、カナ殿が村で使ったのを見てたからでしょう。まさか魔法まで盗むとは思いませんでしたが」


ブヒゾウはため息をついた。


「そのくせ、畑の耕し方や魚の捕り方は全然上手くならない。魔法も失敗ばかり。能力を盗むのは得意でも、うまくそれを()かせないみたいです」


「ふふっ、そこらへんはブヒタロウらしいね」




(いま)だに驚いているヨキとビョウブ。


「じゃあ、お前がクックル王を担いだのか?」


「はい。なんか危なそうだったんで」


サントーリオはそれを聞きつけて涙ぐんだ。


「ありがとうございます! ブヒタロウ殿!」


「どういたしましてだべ」


サントーリオはブヒタロウと握手したがっていたが、姿が見えないので、とりあえず耳を(つか)んだ。


「い、痛いでげす!」


「おっと、これはすみません!」


サントーリオなりの感謝の意だったが、恩を仇で返すような形になってヨキは笑った。


しかしヨキはそんなブヒタロウの耳をまじまじと見つめた。


「お前はホント、凄い才能の持ち主かもしれないな」


「ホントでげすか!?」


姿は見えないが、どうやら褒められて嬉しいらしい。


「ところで……」


ヨキはピクピク動いている物体を見つめた。


「なんで耳だけ見えるんだ?」


「えっ? ……そうなんでげすか?」


自分の耳を触れて確かめるブヒタロウ。


「そんなんじゃ敵にバレるぞ」


「そんなこと言われても……」


「バレて耳だけ喰われるぞ」


「えっ、そんなのイヤでげす!」


ブヒタロウは手で必死に耳を隠そうとジタバタしていた。


「全然隠れてないな。それにもう、姿を現していいんだぞ」


耳は力なく項垂(うなだ)れた。


「それが……戻り方が分からねぇでげす」


ヨキは思わず苦笑した。


「また中途半端な能力だこと……」


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