15
対峙するホイホイとビョウブ。ビョウブは鉄製の剣を構えている。
ヨキは戦況を眺めながらケージに耳打ちした。
「ビョウブは僕らに不意打ちを期待しているのか?」
ケージは首を振った。
「えー、違うと思うよぉ」
「じゃあ、ひとりで大丈夫なのか?」
ケージは淡泊に答えた。
「大丈夫じゃないねぇ」
「えっ?」
ビョウブは足で地面を摺り、ホイホイにじりじりと寄った。ホイホイは間合いを取って、いつでも魔法が出せる体勢で構えた。
ビョウブは右足を強く踏み込み、ホイホイへと突進した。ホイホイは振るわれる剣から間合いを取り、バックステップで避けた。丸い体の割に素早い。
ケージは傍観しながらヨキに語る。
「上級魔法使いは剣を振るのと同じ速度で魔法を打てるんだよねぇ。そうなったら手数の多い魔法のほうが強いんだよ」
「じゃあ、ヤバいじゃないか」
「でもホイホイは今、魔法を打たなかった」
ホイホイは魔法を放つ体勢のまま、ビョウブの攻撃を避けている。
「……確かに」
「ビョウブはホイホイのことを褒めて持ち上げる言い方をしてたからねぇ」
ケージは2人の対戦を食い入るように見つめた。
「人は圧倒的勝利を確信すると遊びたがる」
ヨキは2人の戦いをじっと見つめた。ホイホイは戦いながら笑っていた。
ホイホイは剣の届かない間合いを取り続ける。余裕を見せていたが、段々とビョウブの剣の勢いが増し、体重のせいもあってか間合いが際どくなってきた。ホイホイの顔から笑みが消えた。
ホイホイは避けながら両手に力を溜めた。そしてその塊をビョウブに向けて放った。
「魔法使ったぞ!」とヨキは叫んだ。
ケージもそれを見つめる。
「でも、速度が遅い」
「ほらほら、どうした?」
ホイホイは笑いながら魔法を放ち続ける。
ビョウブは剣でそれを素早く弾いた。
確かにビョウブに避けさせるために魔法の速度を調節しているようだ。
ホイホイは自らの頭上に幾つもの魔法の渦を浮かべさせ、そこから次々と稲妻の矢を飛ばした。
ビョウブは体を横や前へ回転させて、それらを避けた。
「ひゃはは、まだまだいくぞ!」
ホイホイは立て続けに魔法をビョウブへ浴びせる。
端から見ているヨキは目まぐるしい攻防に圧倒された。
「あいつ、口だけじゃなかったんだな」
「腐っても上級魔法使いだからねぇ」
なかなか近寄れないビョウブは、剣を構えて防戦一方になっている。
「ビョウブ様ともあろうお方が、攻撃魔法を使えないなんて無様だな」
ホイホイは楽しくて仕方ない様子で笑った。そして手を広げて新たな魔法を唱える。
「バックがどう死んだか教えてやろうか?」
広げた手を前方で重ね、人差し指をビョウブに向けた。
「オレ様のこの魔法でバックは死に至った」
「なにする気だろう?」とヨキは呟いた。
ケージは首を傾げた。
「何だろう? 見たことない」
ビョウブも何が飛び出すか分からないように身構えていた。
ビョウブやケージも見たことのない格好で、ホイホイはビョウブに照準を絞る。
「これを食らうとな、体がぶくぶくと太り、血流が悪くなり、心臓が止まる。名付けて……」
ホイホイは魔法を放った。
「悪玉コレステロール弾だ!!」
「なにそれぇ!?」
ヨキもビョウブもケージも叫んだ。




