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木の枝で作られた民家の建ち並ぶ地区、中央に広場があり、その中心に噴水が設けられている。水飲み鳥が嘴で水を啄んでいる洒落たデザインだ。
サントーリオとネコ族のミャーサに連れられて、ヨキとビョウブ、ケージがそこへ到着した。
民家の前にクックル王が捕らえられ、その首に鋭い剣が突きつけられている。
「国王!」
サントーリオは思わず叫んだ。
クックルは幼いながらも怯えず凛と振る舞っている。ただ小さい拳は強く握られ、小刻みに震えていた。
剣を構えた亜人がじっとヨキ達が歩む姿を睨み見ている。
「来たか。賢明な判断だな」
ホイホイと思われるその亜人は、目が細く、顔はパンパンに膨れた顔をしていた。体も黒い服がはち切れそうな程に丸みを帯びている。
「言う通りにしたわよ」とビョウブ。
ホイホイに相対してヨキ達は立ち止まった。
「国王を解放しなさい。どうやって見つけ出したか知らないけど」
ビョウブの言葉にホイホイは横を向いて顎を動かした。
すると突然、ホイホイの横にドラゴン族が姿を現した。
「こいつはカメレオン型のドラゴンだ。こうして周囲の色に溶け込むことが出来る」
ホイホイはいやらしい笑いを浮かべた。
「最初からお前たちの動向など筒抜けだ」
そのドラゴン族は宣戦布告の前からこの国へ侵入し、ずっとこの国に留まって様子を窺っていたようだ。
そして伝令係に逐一報告を入れていた。
ただビョウブの言い回しは種明かしをさりげなくホイホイにさせることだったので、カメレオン型のドラゴン族の存在を明かさせたのは、ビョウブの巧みな誘導話術による手柄だ。
「そんなことが出来るんなら、なぜもっと前に王に手を掛けなかったのよ?」
ホイホイは愚問とばかりに即答した。
「そんなんで王を殺して何になる?」
小さい目を見開いてホイホイは怒りを露にしてビョウブ達を睥睨した。
「オレはお前たちに勝つためにゲームをしてるんだ!」
ホイホイの並々ならぬ勝利への執着がその眼力に垣間見えた。
「お前たちには分からんだろう。ムシ族なんて弱い種族を相手に国取りゲームだと? 強国に囲まれた逆境の中でどう抗おうかとオレがどれだけ頭を悩ましたことか」
ビョウブとケージが言い返した。
「知らないわよ」
「別にわたしたちが決めたわけじゃないしぃ」
「他人事だと思って!」
「他人事でしょ」
「あんたがキーモ・インデスケッドを選んだからこうなったんでしょ」
「うるさい!」
ホイホイは掻き消すように叫んだ。
「それで、私たちを呼び出したわけ? 何が目的なの?」
ビョウブは腕を組んで尋ねた。
「その前に……」
ホイホイは質問に答えず、ヨキに目を向けた。
「お前の存在だ」
ヨキはホイホイを睨み返した。
「ふん、どうせ僕の情報は大方得ているんだろ?」
ホイホイは少し自慢げに鼻を鳴らした。
「大半はな。まさか悪意を祓う能力とは正直驚いたぞ。実際にこの目で見るまでは信じられんかった。しかしここの人間は悪意を失い、ケージとビョウブまでこの有り様だ」
ホイホイは汚ないものでも見るようにヨキを見据えた。
「なんでお前みたいな者が存在するのか。しかしそんなことはどうでもいい。問題はどう対処するかだ」
ホイホイは弛んだ顎を擦った。
「お前の能力がある以上、我々は無闇にここの者に触れることが出来ないわけだ。しかも剣などを作りおって、それを振り回すときてる。悪意の塊だな」
「お前が言うな! こっちの台詞だ!」
「だからオレはイデヨを幽閉した」
「なに!?」
「これでイデヨに手出し出来んだろ?」
長イデヨから悪意を取り除けばドラゴン族は悪意を失う。その事も既にホイホイは情報を会得していた。
「なぜお前達に宣戦布告したのか分かるか?」
ホイホイはずる賢そうに笑った。
「大量の兵を送れば、お前たちはそれに引っ張られて集結する」
「なに? 15万人を囮に使ったのか?」
「何を驚く? 兵は消耗品だろ。囮とは尤もらしいから陽動になるんだよ」
ホイホイは冷淡に言ってのけた。ムシ族の時といい、この男は人を物としてしか見ていない。
「その甲斐あってオレは難なくここに侵入出来たわけだ。名案だろ?」




