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この異世界は悪意しかない!  作者: 浅見青松
第4章 ディーカイト・カゲ国編
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10


「武器を捨てて降伏しろ」


ヨキは頭に手を添えながらビョウブに尋ねた。

「この声は?」


ビョウブは冷静に判断する。

「これは…………ホイホイね」


「ホイホイ! やはりそいつがドラゴン族を指揮してるのか!」


「そのようね。これは魔法の一種。特定の場所に電波を送ると、そこにいる人の骨を伝って声が聞こえるの。ホイホイはこんなものが使えるなんて」


声を耳にしたサントーリオはひどく動揺していた。


「王が捕まった!? まさか! クックル王は秘密の部屋に(かくま)っていたはず! いったいなぜ?」


上空のビョウブは風で乱れた髪を()き上げた。


「こちらが相手を探っていたように、向こうも間者をこの国に忍ばせていたのね」


サントーリオは驚いて羽ばたきを止めてしまって少し落下した。慌てて羽根を動かし、ビョウブの高さまで戻った。


「まさか! ドラゴン族を見掛けたことなどありませんよ?」


「気付かれないように動いているのよ、偵察なんだから」


声は一方的に話を続けた。


「トリ族よ、ケージという亜人の身柄を確保し、こちらに連れてこい。そうすれば王の命は保障しよう。ネコ族はビョウブという亜人を連れてこい」


ヨキは声に耳を澄ませながらため息をついた。


「なるほど、狡猾(こうかつ)とはこういうことか……」


更に声は続いた。


「それからもうひとり、ヨキという亜人も一緒に連れてこい」


ホイホイの声にヨキは目を丸くした。ビョウブは感心するように(うなず)いた。


「ちゃんと最大の敵が誰かを見抜いているようね」


ヨキは、(また)がっていたサントーリオの肩を叩いた。


「僕を連れていってくれ」


「し、しかし……」


「いいんだ、君達の気持ちを尊重したい」


サントーリオは苦渋に顔を歪め、ヨキの言葉に文字通り背中を押された。


「すみません! 我々にとってクックル王は精神の()りどころなのです。失うわけには……」


「分かっている。急ごう」


彼らトリ族にとってクックル王は、悪意に侵されていても守ろうとした存在、それはヨキも理解している。失わせるわけにはいかない。


ヨキはカナへと指示を出した。


「僕たちは行ってくる。無理だと感じたら、地上へ降りてみんなと行動してくれ」


カナは心配そうに表情を曇らせたが、ヨキの言葉に従った。

「うん、わかった」



ヨキとビョウブは一旦トリ族と共に地上へ降りた。


「ヨキ様!」


ブヒタロウやブヒゾウも頭に響く声を聞き、戸惑っているようだ。

ヨキは冷静に2人に指示を出した。


「今から指定された通りにクックル王の所へ行ってくる。みんなは変わらず応戦してくれ」


「分かったでげす!」

「分かりました!」


そしてヨキ達はケージにも声を掛けた。


「聞こえただろう? とにかく王の所へ向かおう」


ケージはだるそうに肩を落とした。


「えー、面倒くさいぃ。あんなヤツに従うなんて(しゃく)なんだけどぉ」


「仕方ない。様子を(うかが)いに行こう」


ケージはふて腐れて口を尖らせた。


「分かったぁ。イワンニコフちゃん、ほどほどに蹴散らしておいて」


「ぐおおおん」


イワンニコフは返事をしたようだ。


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