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「武器を捨てて降伏しろ」
ヨキは頭に手を添えながらビョウブに尋ねた。
「この声は?」
ビョウブは冷静に判断する。
「これは…………ホイホイね」
「ホイホイ! やはりそいつがドラゴン族を指揮してるのか!」
「そのようね。これは魔法の一種。特定の場所に電波を送ると、そこにいる人の骨を伝って声が聞こえるの。ホイホイはこんなものが使えるなんて」
声を耳にしたサントーリオはひどく動揺していた。
「王が捕まった!? まさか! クックル王は秘密の部屋に匿っていたはず! いったいなぜ?」
上空のビョウブは風で乱れた髪を掻き上げた。
「こちらが相手を探っていたように、向こうも間者をこの国に忍ばせていたのね」
サントーリオは驚いて羽ばたきを止めてしまって少し落下した。慌てて羽根を動かし、ビョウブの高さまで戻った。
「まさか! ドラゴン族を見掛けたことなどありませんよ?」
「気付かれないように動いているのよ、偵察なんだから」
声は一方的に話を続けた。
「トリ族よ、ケージという亜人の身柄を確保し、こちらに連れてこい。そうすれば王の命は保障しよう。ネコ族はビョウブという亜人を連れてこい」
ヨキは声に耳を澄ませながらため息をついた。
「なるほど、狡猾とはこういうことか……」
更に声は続いた。
「それからもうひとり、ヨキという亜人も一緒に連れてこい」
ホイホイの声にヨキは目を丸くした。ビョウブは感心するように頷いた。
「ちゃんと最大の敵が誰かを見抜いているようね」
ヨキは、跨がっていたサントーリオの肩を叩いた。
「僕を連れていってくれ」
「し、しかし……」
「いいんだ、君達の気持ちを尊重したい」
サントーリオは苦渋に顔を歪め、ヨキの言葉に文字通り背中を押された。
「すみません! 我々にとってクックル王は精神の拠りどころなのです。失うわけには……」
「分かっている。急ごう」
彼らトリ族にとってクックル王は、悪意に侵されていても守ろうとした存在、それはヨキも理解している。失わせるわけにはいかない。
ヨキはカナへと指示を出した。
「僕たちは行ってくる。無理だと感じたら、地上へ降りてみんなと行動してくれ」
カナは心配そうに表情を曇らせたが、ヨキの言葉に従った。
「うん、わかった」
ヨキとビョウブは一旦トリ族と共に地上へ降りた。
「ヨキ様!」
ブヒタロウやブヒゾウも頭に響く声を聞き、戸惑っているようだ。
ヨキは冷静に2人に指示を出した。
「今から指定された通りにクックル王の所へ行ってくる。みんなは変わらず応戦してくれ」
「分かったでげす!」
「分かりました!」
そしてヨキ達はケージにも声を掛けた。
「聞こえただろう? とにかく王の所へ向かおう」
ケージはだるそうに肩を落とした。
「えー、面倒くさいぃ。あんなヤツに従うなんて癪なんだけどぉ」
「仕方ない。様子を窺いに行こう」
ケージはふて腐れて口を尖らせた。
「分かったぁ。イワンニコフちゃん、ほどほどに蹴散らしておいて」
「ぐおおおん」
イワンニコフは返事をしたようだ。




