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ドラゴン族は留まることを知らずに次々と押し寄せてくる。
剣を振り続ける者は、次第に腕が上がらなくなってきていた。そしてちょっとした隙に剣を落とし、ドラゴン族に襲われていった。
ブタ族部隊も息を切らし、次第に動きが遅くなる。そこへ新たにやって来る敵が炎を吐いてくる。
ブヒタロウはハァハァと荒く呼吸をしながら、懸命に魔法を唱えた。
「ブリザード!」
すると目の前に黒い壁が現れ、所々に黄色い塊が埋め込まれている。
ブタ族の兵が突っ込んだ。
「これ、『栗ようかん』じゃないですか!」
「あ、あれ……?」
栗ようかん、ブリザード……。
全然違うけれど、思わぬ栗ようかんの壁の出現で、ドラゴン族は立て続けにそれに衝突し、後から迫る者も玉突き事故のように追突し、混乱を招いていた。
「さ、さすがブヒタロウさん!」
「ふっ、け、計算通りだべ」
それでも壁をすり抜けブタ族に迫ってくる。疲弊したブタ族は片目を瞑りながら、剣で応戦しようとするが腕が上がらない。
そのドラゴン族は突然動きを緩めたかと思うと、ブヒタロウが疾風の如きスピードで斬りつけた。
「あ、ありがとうございます、ブヒタロウさん」
「頑張るべ! オイラがついてるべ!」
この国境ぎわの合戦は、熾烈を極めていた。
トリ族やネコ族は複数のドラゴン族に挟まれ、悪意に侵される者も多数あった。炎によって火傷を負う者や鋭い爪に倒れた者もいる。
しかし剣先を当てるだけでいいヨキ達の軍に分があることも事実で、圧倒的大差の兵力を相手に善戦していた。
陽が西へ傾き始めた頃、無限に湧くと思えたドラゴン族も、底を尽き始めていた。
地面に倒れたドラゴン族、悪意に侵されていようがいまいが、戦意は喪失している状態で、新たに迫り来る数は次第に減ってきていたのだ。
迎え撃つ側としては気の遠くなるような長い時間に思えただろうが、戦いは意外に早く決着がつきそうであった。
「勝てる! 勝てるぞ!」
ヨキは上空から敵軍の途切れを見た。川の流れの途絶え、舞う木の葉の終焉を見た。
止めどない襲撃は、ぽつりぽつりと間隔が空き、こちらも一息つける時間が増えてきた。
大群を迎え撃ち、それを撃ちきれる確信があった。
「えー、トリ族ネコ族よ、聞こえるか?」
突然、その声はヨキ達に聞こえてきた。
「な、なんだ?」
それは直接脳に響くように届いてきた。
その声は抑揚のない声で淡々と語った。
「たった今、トリ族の国王を捕らえた」




