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地上から上空まで無数のドラゴン族が大群を成して襲来してきた。翼を持つ者は風と共に滑空し、持たぬ者は湿地を飛沫を撒き散らして駆けてくる。
トリ族ネコ族ブタ族はそれに善意の剣を構えて突進した。
悪意の体を持つノモンとブヒゾウが先頭に立ち、それらをバッタバッタと剣を振るって薙ぎ倒してゆく。
それをすり抜けたドラゴン族を後方の剣士たちが、ひとりひとり剣を当ててゆく。
それに見かねたドラゴン族は闇雲に炎を吐き始めた。
「ブリザード!」
ブヒタロウが氷の壁を作り、それを防御する。
しかしその氷も大群の炎の勢いですぐに溶けてしまう。
ブヒタロウは足元に向けてブリザードを放った。湿地が凍り、ドラゴン族の足が抜けずに固まった。その隙にブヒゾウがドラゴン族に向かい、善意の剣を振りかざす。
見事な連携だ。
しかしドラゴン族は立ち往生するかと思いきや、足元を固められないように倒れた味方を踏みつけて猛進してきた。
「なんて奴らだ! 味方を足場にして進んでくる!」
嵐の後の濁流の如く、斬っても斬っても押し寄せる敵軍、数の脅威をブヒゾウ達は目の当たりにした。
上空でもその脅威の襲来に応戦していた。カナとビョウブの魔法によってバタバタとドラゴン族が地上に落ちてゆく。
それでも強風に舞う木の葉の如く、大量のドラゴン族が迫り来る。
「大丈夫か、カナ、ビョウブ!」
「大丈夫! まだまだいける!」とカナ。
「スタミナには自信があるわ!」とビョウブ。
果てしなく押し寄せる敵陣、地上には大量のドラゴン族が倒れている。上からもどんどんと地上に落ちてくる。
「埒があかないよぉ」
ケージも疲労に満ちた声を漏らした。ケージは堪らず後ろで眠っていたお供を呼び起こした。
「イワンニコフちゃん、お願い!」
いびきをかいていたイワンニコフは鼻ちょうちんを弾けさせると、コロコロとした丸い体を起こした。
「うおおおおん!」
悪意の体になったイワンニコフは迫るドラゴン族を拳で叩きのめしてゆく。
「うーん、さすがイワンニコフちゃん!」
炎も効かず、暴れるイワンニコフはドラゴン族にとって驚異的だった。
倒れたドラゴン族は悪意のドラゴン族に踏まれ、救出する間もなくまた悪意に侵されてゆく。
「あ、悪意を取り除いても、み、味方に出来ないべ!」
ブヒタロウは押し寄せるドラゴン族に圧倒されていた。敵の猛撃に混乱し、魔法を放つタイミングに戸惑った。
「あわわわ……」
ブヒタロウは尻餅をつき、そこに敵の剣が襲いかかった。
「うわぁ!」
ブヒタロウに迫り来るその剣をブヒゾウが弾き返し、敵に善意の剣をぶつけた。
「ブ、ブヒゾウ……」
ブヒゾウはブヒタロウの手を取って起き上がらせた。
「オイラが守ると言っただろ?」
ブヒゾウに微笑まれ、ブヒタロウは凛と立ち上がった。
「ああ。ありがとうだべ、ブヒゾウ!」




