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この異世界は悪意しかない!  作者: 浅見青松
第4章 ディーカイト・カゲ国編
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ヨキ達トリネコ軍は国境付近に陣取り、敵の襲来を迎え撃つ陣形をとった。


横に広く並び、善意の剣を持った者は検閲をするかの如く国境に沿って待機している。


国境先は湿地帯が広がっていた。歩くと足が沈むほどで、侵攻するには不利な立地であるが、飛ぶことの出来るドラゴン族ならば造作もない。


トリ族が空中を警戒し、ネコ族が地上を守る。


ヨキとカナ、ビョウブはトリ族に(また)がって空中で待機している。


ブヒゾウ、ブヒタロウ他ブタ族、ノモンとネコ族、ケージは地上を任された。


「やっぱり空を飛んでくるんだべか?」


不安そうなブヒタロウにブヒゾウは「おそらくな」と前を向きながら答えた。


「ヨキ様たちは大丈夫だべか?」


ブヒゾウは上空を見上げた。


「カナ殿とビョウブ殿がいるんだ。問題ない。むしろ我々のほうが肉弾戦になるぞ」


「ひやぁ、大変だべ」

ブヒタロウは身震いした。


「オイラ達は他の者より実戦の経験がある。引っ張っていかないと」


(そば)で待機するブタ族は初陣のために手が震えている。

ブヒタロウは自分が怯えながらも、その者に近寄って肩を叩いた。


「大丈夫だべ。いざとなったらオイラがヒールで治してやるから、安心してぶつかっていくべ」


新兵くんは緊張が(ほぐ)れて表情を明るくさせた。


「わかりました、ブヒタロウさん!」


ブヒゾウはそのやりとりに笑みをこぼした。


「鼓舞する能力もヨキ様から盗んだようだな……」




ヨキ達は上空から隣国の様子を(うかが)っていた。まだ相手はこちらに向かってきていない。


本来ならば、こうして相手の出所を待たず、王手をかけにいったほうがいいのだが、結局ネコ族の情報を聞く限り、ドラゴン族の大将イデヨの所在が分からなかった。


巨大な体をしているのに見つけられないことがヨキには不可解だったが、ネコ族やビョウブの話を聞くことで納得は出来た。


『引きこもり?』


『最近のイデヨは随分とマイナス思考になったそうニャ。「どうせオレなんて」が口癖で、全然外に出なくなったらしいニャ』


『酒癖が悪い方向に行ってるな……』


『なので早めに冬眠に入った可能性があるニャ』


『ドラゴンって冬眠するの?』


その場にいたビョウブが補足した。

『するわよ。寒いのが苦手だから』


『土の中とか? デカいなら掘るの大変だろうなぁ』


『いや、だからそういう部屋があるのよ。冬眠用のぬくぬくの部屋。そこに閉じ(こも)っているわけね。そうなると厄介よ。内側から鍵を掛けて誰も入れない』


『………迷惑な話だ』


『しかもそういう施設が国中にたくさんあるのよね。イデヨが入れる大きい施設が』


『 てことは、外からじゃどこにいるか分からないじゃないか。手当たり次第施設を壊すわけにもいかないし』


『でも万一の場合、それも辞さなくなるわよ』


『…………いや、それは最終手段だ。最善手ではない』


ビョウブはパタパタと扇子をあおいでヨキを眺めた。

『ヨキちゃんって、誰も傷つけたくないのね』


ヨキは少し口ごもった。


『…………僕がここにいるのはみんなの平和のためだと思ってるから』


『時には冷淡にならないといけない場合もあるのよ』


『……分かってる……つもり』


『誰かを守るために、誰かに手を下す。それを躊躇(ちゅうちょ)したら、手遅れになることもあるわよ』



ヨキは上空でそんな会話を思い出しながら待機していた。ドラゴン族を味方につければ、イデヨの情報も得られるだろう。


「カナは体調万全か?」


カナは両手を曲げて力を込めた。


「しっかり寝たよ。だいぶ魔法の配分もコントロール出来るようになったから、以前よりは長く体力は持つと思う」


「鍛錬の賜物(たまもの)だな」


ヨキは頼もしく感じた。


「ブヒゾウやブヒタロウが頑張ってたからね、触発されて」


「確かに。特にブヒゾウはブタ族部隊の隊長に任命してから鬼気迫る感じだった」


「うん、きっと嬉しかったんだよ」


「ブヒタロウにはブーブー言われたけどね、副隊長という肩書きが不満なようで。でも最近は満更(まんざら)でもないみたいだ」


「隊員に結構頼られてるみたいだから」



そんな話をしている時、ネコ族の新たな諜報員がトリ族に(また)がってヨキの元へ息()き切りながらやって来た。


「号外ニャ! 号外ニャ!」


ネコ族は呼吸を必死で整えながら叫んだ。


「ドラゴン族を仕切っていた亜人バックが既に死亡していることが判明ニャ!」


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