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33話 勇者の帰還

星を救い、世界を護った勇者タカアキ。

しかし、そんな偉業を成し遂げた彼を祝福する者は極僅かだ。


これは知られざる物語。

知られることはないであろう物語なのだ。


「さて、これで終わりましたね」

「うん。僕らのやるべきことは終った。そう考えても良いと思う」


いまだモザイクの取れないこの光景で二人は笑い合ったが、当然、そんなものは見えるはずもなく。

もじょもじょとモザイクの色が変化し続けているだけだ。

これほど酷いラストが果たしてあっただろうか。いや無い。あってたまるか。


何でもいいから、こいつらは早く服を着るべきである。というか着ろ。


「私たちは、これからどうなるのでしょうか。どうすべきなのか」

「役目が終わった存在はどうなるんだろうね」


強大な力を持つ者の末路。

それは自ら歴史の中に埋もれるか、それとも新たなる世界へと羽ばたくかの二択となろう。


この二人の性格上、民を率いて国を興す、という野心は持たず。

名声を得て民の羨望となることも良しとはしない。

それ故の二択なのだ。


「取り敢えず、服を着ましょうか」

「うん、そうだね」


ここでようやく二人の勇者は服を着ることにしたようだ。

これで映像班も一息吐けるというもの。


タカアキはいつもの服を瞬着した。

原理は不明だが、こいつは服が破れても瞬きした瞬間には服が直っているという怪現象を引き起こせる。

なので、原理がどうこう考察すると頭がおかしくなって死ぬ。

決して、こいつの謎には触れてはいけないのだ。


勇者コウイチロウはアイテムボックスなる無限に物を出し入れできる箱を虚空から呼び寄せた。

大きさ的には成人男性がすっぽり収まるほどの大きさがある。

そして、それは虹色であり刻々と色を変化させ続けていた。


コウイチロウはアイテムボックスに触れる、とそのまま、するり、と中へと入り込んだ。

この中は異次元空間になっており、彼女が今まで収納したものが浮かんでいるのだ。

それらを手に取り、コウイチロウは着替えを始める。


異次元空間では時間が止まっており収納した品々は劣化しない。

そして、アイテムボックスの所有者以外は時間停止の影響を受ける。

したがって所有者以外がこの中に入りこんでの窃盗は事実上不可能なのだ。


「お待たせ」

「待ってはいませんよ……おや、大胆な姿ですね」

「折角、女の子になったのだから、身に着けるのを躊躇われた品々を、ってね」


コウイチロウが着たのは【紐】であった。

そうとしか表現ができないアレなアレだった。

少しでもダイナミックに動けばポロリするし、くぱぁ、する。

ハッキリ言って全裸となんら変わりない。

だというのに頭部には何故かうさ耳のヘアバンド。

まさかとは思うが、これはバニーガールのつもりなのであろうか。

そうであるなら、これはバニーガールへの冒涜といえよう。

というか尻尾を付ける位置が明らかにおかしい。

そこは【ピー】の穴だ。


スタッフーっ、取り敢えずモザイクなっ。


二人の着替えを待っていたかのように天界に異変が生じる。

RPGのラストでお決まりの崩壊イベントだ。


「おやおや、忙しない事で」

「神の魔力で保持していたと考えれば妥当だよ」


天界の高さは常人が昇ってこられるようなものではない。

ここから転落すれば勇者たる二人であっても落下死は免れないであろう。

だが、彼らは変態である。


「じゃあ、階段を作っておりますか」

「そうだね。あぁ、でも僕は普通に飛べるから」


タカアキは魂糸で階段を生成。

コウイチロウは浮遊魔法を発動させ落下死を免れる。

もうなんでもありの二名であるが、しかし、運命から逃れる事は出来ない。


「(む……やはり、これは確定事項だったようですね)」


ありとあらゆる存在には必ず終着点がある。

良いことも、悪い事も、その全てにだ。


「おや? これはいったい?」


空間に突如として黒く歪んだ大穴が出現し、タカアキ、コウイチロウを吸い寄せ始める。

その吸引力はとてつもなく強力であり、この二名であっても抗う事は困難であった。


「な、なんだっ!?」

「来るべき結末が来た。そういうことです。ちゅん子」

「ご、ごしゅじんっ」

「お別れです。あなたはゼステル君の下にお行きなさい」


タカアキは知っている。

吸い込まれた先がどこであるかを。

そして、その先ではちゅん子は異端であることを。

まず確実に不幸になることは明白。


であるなら、幸福に暮らせるであろうこの世界で天寿を全うすべきであると。


「で、ですがっ」

「あなたは十分にがんばりました。これ以上は私に付き合わなくともよいのです」

「それはエゴですっ」

「この世界での存在が持たん時が来ているのです」


そう、この黒い大穴はタカアキを物理的に吸い込んでいるのではなく、タカアキ、コウイチロウという存在自体を、その概念をも吸い込んでいるのだ。


したがって、幾ら頑張ろうとも両名はこの世界より消失する定め。

だが、ちゅん子は違った。

この両名よりも格段に能力が劣るため、脅威とみなされていないのである。


神より解き放たれし世界はようやく、自らの足で立った。

これは、その最初の仕事。

二人の勇者には感謝しかないが、この両名がいては世界のバランスが崩れてしまう。

それでは本末転倒。

だからこその返還。


「さぁ、お行きなさい。いままで尽してくださって感謝しかありません」

「ごしゅじんっ」


ちゅん子はタカアキの頭部の感触が消失したことに驚き羽ばたいた。

そこに確かにあるはずなのに触れる事が叶わない。

それはタカアキとの別れが確実であることを認識させてしまう。


「そんな……ちゅんっ、ちゅんっ!」


ちゅん子は鳴いた。

どうしようもない出来事に。

どうしようもない別れに。


「では、さらばです。どうか息災で」

「じゃあね。タカアキの事は任せて」


かくして勇者たちはこの世界より姿を消した――――――――。






二人が放り出された先は懐かしき臭いがする世界。

穢れしも美しい彼らの故郷だ。


「ここは……おぉ、地球」

「うん……何もかも懐かしい」


ざわ……ざわ……。


二人の勇者が放り出されたのはとあるスクランブル交差点。

そこには大勢の通行人の姿。

騒めく理由は突如としてタカアキたちが姿を現したから。


だが、真に騒めく理由はそこではない。

コウイチロウに姿だ。


今の彼女はモザイクが必要なくらいに酷い姿。

一言でいえば痴女である。

わいせつ物陳列罪が適用されるであろう。


「ちょっと君たち」

「「えっ?」」


二人の勇者は警察官に逮捕された。

驚くことに、この物語の終着点は【逮捕END】だったのである。


だが、この両名は裁判を受けることなく姿を消す。

そう、彼らは再び異世界へと召喚されることとなったのだ。


そこで、二人は運命的な再会をするのだが、それはまた別の物語となる。





勇者タカアキ――――――――おしまい。


勇者タカアキっ、完っ!

ここまで読んでくださって感謝ですっ!


転職で執筆時間が確保できなくなったのは痛手。

これからはちまちまと執筆活動する程度になるかもです。

早く年金生活してぇなぁ(あと20年以上)。


それでは、また何かの作品でお会いできればっ(サラダバー)。

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― 新着の感想 ―
[良い点] まずは完結おめでとう!(白目痙攣) [気になる点] こうしてタカアキはありとあらゆる世界の留置所を体験するのであった(めでたしめでたし) [一言] それではまた次の作品でお会いしましょう
[一言] 意外!それは逮捕エンド! 今までの作品が割と真面目なエンディングだったのに草生えますよヤバイヤバイ…。 執筆履歴的には大ベテランですからね…ご自愛ください。 食いしん坊エルフ連載開始からもう…
[一言] お疲れ様でした。楽しかったです。ぐちょぐちょでしたが。 タカアキ次はどんな世界に行くのか楽しみです。ではまたー。
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