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32話 ヘブンバトル(最低)

「今度は、こちらから行きますよ」


タカアキが攻勢に出る。

相手が友であるコウイチロウであってもだ。


守ってばかりでは勝利に遠く。

これはルールのある試合ではない。

生き死にを掛けた真剣勝負。

勝てば生き、負ければ死ぬ。

情け無用の死闘デスマッチなのだ。


タカアキはゆらゆらと両手を正面で泳がせるかのような動きを見せた。

それは空を海と見立てて泳ぐ魚か。

しかし、タカアキがこの期に及んで、そのような遊戯を披露するはずも無く。


「頃合いですね」


やがて、空は高温で熱せられたかのような歪みを生じさせた。

タカアキは歪んだ虚空を素手で掴む。

非常識の塊であるクソデブ勇者はしかし、それこそが常識であるが故に躊躇い無し。


亜空間玉ディメンションボールです!」


片足を天高く上げ、そこから踏み込む。

時速500キロメートルの姿無き剛速球がコウイチロウに向かってゆく。


複雑に歪んだ空間は見えない牢獄に等しい。

これに囚われようなら脱出はほぼ不可能。

時の停止した無間地獄に囚われ続けることになる。


本来は不老不死の存在を封印するために用いるのであるが、タカアキは時間稼ぎの為に使用した。


「うぎっ! いぎぎぎぎぎぎぎっ!」


だが、コウイチロウはそれを輝く剣で打ち返した。

恐るべき動体視力。


「えっ?」


打ち返した亜空間玉の向かう場所には神の姿。

直撃。そして、そのまま消失。


「……まぁ、いいでしょう」


神は消失した。

ビックリするほど呆気なく。


実はタカアキは亜空間玉の無間地獄に少し細工を施していた。

それは、コウイチロウの毒の放出を促すために、時の牢獄にいろいろと映像化できないあれやこれを配備しておいたのである。


女体化しているコウイチロウならともかくとして、男の姿をしている神はそれに耐えられるか。

答えは否。快楽ではなく激痛をもたらすであろう地獄の責め苦が彼を待っている。


時の牢獄に置いて神の力は確かに通用する。

しかし、脱出ともなれば亜空間玉の理を正確に解き明かさなくてはならない。

外海と遮断されたそこでは神とて無尽蔵に力を放出することはできず、また、回復も絶望的。

唯一の回復手段はアレやコレの体液であるが、やはり男では毒にしかならない。


つまり、完全に積んでいる。

お手上げ、お終い、TheEnd、GameOverなのだ。


「さぁ、厄介者はいなくなりました。あとは、あなただけです」

「ふーっ! ふーっ!」


両肩を上下させ、息が荒いコウイチロウ。

変わらず粘液を至る所から撒き散らしている。

だが、これらはコウイチロウを狂わせる毒であり、その放出が止まった時こそ好機なのである。


タカアキは、それらを全て放出させるための刺激を与えることこそ肝要と定めた。


「では、いきますよ」


だが、それにはどうしても輝く刃をコウイチロウから切り離さなくてはならない。

それがある限り、タカアキは魂糸を使用できないからだ。

裏の力を使うにはどうしても魂糸を用いねばならない。


それは強大な力を操ることのできる特急券であるが、同時に自分の弱点を曝け出しているのと同義。

何故なら、魂糸とは己の魂で作り出しているからだ。


これが欠損した場合、タカアキという存在に大打撃を被ることになる。

常人であれば、魂に傷が入った場合、即座に発狂するだろう。

それほどまでに魂糸とはハイリスク・ハイリターンであるのだ。


タカアキは再び力強く踏み込んだ。

魂糸が使えない以上、物理的にコウイチロウをどうにかしなくてはいけないだろう。






そう考えていた時期が私にもありました。






「むんっ」


バリバリバリっ、という音がしてタカアキの服が裂ける。

筋肉を膨張させた結果、タカアキの衣服は全て吹き飛んでしまたのだ。


「アルティメットバトルモード、です」


何か決めポーズを取っているようだが、その姿は既に映像班によって荒いモザイクに置き換わっている。

わざわざ説明していないが、コウイチロウの方もしっかりとモザイク塗れだ。


「はっ!」

「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


モザイクとモザイクとがぶつかり合う。

ハッキリ言って、何がなんだかもう分らない。

視界一杯がモザイクオンリー。

そこから放たれる音も何やら危険極まりないので子犬や子猫の鳴き声、そしてちゅん子のちゅんちゅんボイスに置き換えている。


最終決戦がまさかの実況不能状態に草も生えない。

遂には【しばらくお待ちください】との表示がなされ、完全にカットされるという始末。

物語の最後の戦いがこれでいいのであろうか。


前代未聞の大珍事は、しかし、コウイチロウがメス堕ちするという結末で終わりを迎えた。






「なんとかなりましたね」

「しゅき」


第三の足を失ったコウイチロウはただの美少女へと成り果て、タカアキにぞっこんラブ。

完全に洗脳されてしまっている可能性が大レ存。

恐らくは筆舌にし難い犯罪行為が行われていたに違いない。

ある意味でゼステルはNTRされた可能性が無くもないが、割とどうでもいい。


尚、コウイチロウの第三の足は輝く刃で切り落とされていた。

アレは絶対に痛かっただろう。


「望んだ結果ではありませんが、取り敢えずはどうにかなりました」

「最後のアレは望んでなかったのかい?」

「どうしても、最後の毒が出なかったのですから仕方がない事だったのです」

「もう、男には戻れないのかな」

「転生すれば問題無いでしょう」

「転生は嫌だなぁ」


最後のアレとはいったい。


謎が謎を呼ぶが、この作品はあくまで健全な作品である。

どう見ても不健全だが健全なのである。


いまだに全てがモザイクのままという酷い状態であるが、どうやらこのまま最後まで突っ走るもよう。

タカアキが動くたびにモザイクが微妙に変化をする。

正直な話、もう画像はいらないと思うのだが。


「では、最後の仕上げと参りましょうか」

「この星の溜まり過ぎた魔力を解き放つんだね。でも、どうすれば……」


魔王トウキチロウですら完全に抜くことはできない膨大な魔力。

勇者タカアキは果たして、どのような方法でそれを解決するのか。


魔王トウキチロウは星の膨大な魔力を魔力を吸う魔物を用いて吸い出していた。

かなりの数を動員しての強引な手段はしかし、想定よりも効果が少ない。


他にも様々な試みを行ったが、やはり次々に転生者が送られてくれば焼け石に水。

既にお手上げの状態であったのだ。


「何もこちらで吸い出さなくてもいいのですよ。自分で出すよう促せばいいのです」

「どうやって?」

「地球にも便秘で困っている患者の治療法があるではないですか」

「えっ? ちょっ……まさか」


コウイチロウは自分の尻を押さえた。

そこは、まだ熱く火照っているように感じた。


「はい、あなたにも使った、この……ウルトラワンダフルグレーターご立派様を使います」

「歪みない再現度に、僕の雌が興奮を覚えるよ」


それはとてつもなく狂暴な何かだった。

しかし、画面全体は既にモザイク塗れであり、もう何を出そうが関係の無い状態。

今日ほどモザイク加工のありがたみを思い知った日はないであろう。


だが、あんな凶悪なものを穴という穴にぶち込まれたコウイチロウの心中はいかに。

早く転生して、まともな人生を送ってもらいたいものであろう。


「あ、使います?」

「……」


コウイチロウは恥じらいながら、そっと手を差し出した。


ダメだこいつ。もう雄の誇りが微塵も残っちゃいねぇ。


「では、これを星の穴にぶち込んで差し上げましょう」


尚、タカアキのセリフの途中に、子犬や子猫の鳴き声が混じっているのはそういうことだ。

最早、性欲を抑える事は難しいらしい。


元勇者ぇ。


タカアキは名を呼ぶのもおぞましい何かを掲げる。

すると、その凶悪な物体がどんどん巨大化してゆくではないか。

遂には星を貫けるほどの大きさへと至り、半分ほど宇宙空間に飛び出してしまっている。


「ふぅ……流石にこれほどまでに大きくすると疲れますね」

「流石にそれは僕に入らないかな」


入って堪るか、色ボケめ。


「それじゃ、いきますか。そぉれ」


あ――――――――――――!


星が野獣のような咆哮を上げた。

つまりはそういうことだ。


タカアキは更に凶悪な何かをピストン運動させる。

それに伴い、星は痙攣をし始め、それはやがて大地震のような規模へと移ってゆく。


「今ですっ!」


タカアキは頃合い、と凶悪な何かを引き抜いた。


ぬぽっ、という音。


ぬふぅ、という星の声。


そして――――――――――――――――。


ぶりゅりゅりゅりゅっ! びちびちびちびちびちっ!


汚い音が全世界に響き渡った。


星の中でぐるぐる渦巻く魔力が一気に穴から放出されているのである。

それは宇宙へと放出され、遥か遠くの若い星々にまで届けられた。


汚い魔力を受け取った若い星はその魔力を使用して、生命が住める星へと進化するだろう。

この過程さえなければ、命の循環として尊いものになったろうに。

実に残念である。


「魔力が順調に抜けてゆきますね。これなら、もう安心でしょう」

「いくっ、いくっ……あ――――」


どこも安心できない勇者たちの戦いは終わった。

それは、タカアキのひとつの物語の終結を意味する。


どんどんと魔力が抜け出てゆく星。

それは、ようやく安全圏へと到達する。


だが、その時の事だ。

時空が歪み、憤怒が形となったものがこの世に姿を現す。




お前だけは絶対に許さぬ―――――――。




勇者タカアキは己の使命を悟り、最後の戦いに身を置くだろう。




全裸で。




次回、勇者タカアキ最終回。


勇者タカアキ大勝利! 希望の未来へれっつらゴー!


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― 新着の感想 ―
[一言] 星の極地で糞まみれになろうや
[一言] 憤怒来る 憤怒「モザイクだらけにしよってゆるさんぞ」 タカアキ「やはり来たかなろうよ運営…」 NG「ネタにし辛いから止めて」
[一言] まさか! モザイクの音さえも!?
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