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六花立花巫女日記 外伝  作者: あんころもち
42.氷解
432/952

『トゥリア』悔恨⑪



 ”想い”、魔法を使おうとしても……私の脳は、理解しています。私が持つ魔法では、この状況を打破出来ないと。それでも藻掻き、考えて、考えて、考えて――マクゼルトの拳が振るわれるのを、見る事しか、出来ませんでした。


『死ねない……!』

「巫女さン……!」

(私達の事なんかどうでも良いから、リツカお姉さんを――)


 ゆっくり、見えたのです。”想い”、リッカさまを助けようとした私の目は……リッカさまの目の前を通るマクゼルトの拳を、見ていました。()()()()が迸り、あの時を幻視した私の脳とは裏腹に――私の魂は、別のものを、感じていたのです。


「…………」

「巫女、さン?」

「おい、様子が……」

「また……」

(あの、赤い……)


 魔力を鎮め、再び()()に、移ります。マクゼルトはまだ、約束を反故に、していません。シーアさん達は無事です。ならば――()()、しましょう。


「また、同じ……」

(赤い、閃光が――)


 戦いはまだ――終わって、いません。赤いもの……()()()()が、私を、()()()()()()()()


(手前ぇを蔑む連中を助けて死ぬたぁ、つまらねぇ最期だ。巫女らしいと言やそれまでか)


 小さく嘆息したマクゼルトが、刀に手を伸ばしました。抜く為でしょう。リッカさまへの興味を失くし、次はこちらと言わんばかりに……殺気を、私に向けています。ですが――。


(何で、こいつ――剣を握って)

「――っ!!」

「ッ!」


 腕に衝撃が加わり、ぎょっとしたマクゼルトは咄嗟に下がりました。ですが――既に、()()がマクゼルトの目の前に迫っています。


「コ、ノ……ッ!」


 上体を逸らし、それを避けたマクゼルトが数歩下がりました。その頬は、薄く切れています。指で血を拭い、傷の深さを確かめたマクゼルトは、引き攣った表情を浮かべていました。


「おいおい……」

(確かに当たったよな)


 拳は避けていましたが……拳圧に、曝されたはずです。


(チッ……。アイツの言うとおり、か)


 ですが――()()()()()()()()()()()()。ゆらりと、力を感じさせず……それでも、闘志と魔力を輝かせ、刀を強く握っているのです。リッカさまが、戦っている以上……私も、私の戦いを、続けます……っ。


(油断なんざしとらん。疲弊しきったコイツの弱点を突いただけだからな。だから万全のコイツとやり合いたかった)


 涙で、前が見えなくなりそうですが……そんな事で、リッカさまの姿を見失う訳には、いきません。リッカさまの戦意は衰えておらず――むしろ高まってすらいるのだと、感じました。涙を拭い、私も……戦いに、集中します。


「何をした?」

「……」


 構え直しながら、マクゼルトは()()()()()()()()


 額から血を流し……目から、血の涙を、流し……けほっと、掠れた咳をすると……ごぼっと、口の端から血が流れ出てきて、います。あの時と、同じように……赤く、染まっているのです。ですが、あの時と決定的なまでに……違う事が、あります。


「何で立っとる」


 リッカさまは立ち、刀を握る手には力があり、そして……まだ、戦えるという事です。


「さぁ」


 力のある声で、リッカさまは――宣言、しました。


「第二ラウンドと、いきましょうか」


 魔力を輝かせ、瞳に力を籠め――刀を、突き付けたのです。


「あなたじゃ、私を殺せない」

「……チッ」


 議論の余地なく、どちらが有利なのか……断言出来ます。ですが、マクゼルトは――攻撃を躊躇しているようです。確固たる”想い”……世界を変える力を持ったリッカさまの気迫に、気圧されています。


「リツカお姉さんは、大丈夫なんです?」

「怪我は、しています。それでも……死ぬような怪我は、していません」


 リッカさまが再び、死闘を始めようとしているのに……私は話す事しか、出来ません。しかし……リッカさまの状態を告げる事で、シーアさん達を安心させるのは、必要な事でしょう。揺れた心では……その時が来ても、動けません。


「何をしたってんだ……?」

「……メルクで魔王と戦った時も、同じ状況になりました」


 拳圧を、何らかの方法で回避しているという事は、分かります。


「どうやっテ……」

「私にも、何が……起きているのか……」


 ですが、その方法が、分かりません。赤い閃光が関係している事は、間違いないのです。


(ですが……あれは、新しい、魔法――?)

「……おい、阿呆」

「……!?」


 腰が抜けていたのか、へたり込んでいた村人に、レイメイさんが声を掛けました。


「さっさとどっか行け」

「……ッ…………」


 あのような仕打ちを受けても、マクゼルトが気になるようです。何度もマクゼルトに視線を向けた後――村人は漸く駆け出しました。これでリッカさまが……戦いに集中出来ます。


「申し訳ございません。レイメイさん」

「あ? ……てめぇは赤いのだけ心配してろ」

「……ありがとうございます」


 本来は私が、村人に声を掛け……遠ざけるべき、なのでしょう。会話だけは、許されているのですから。ですが、私は……リッカさまから意識を外したく、ありません。刹那の時を見逃す訳には、いかないのです。


『血が流れすぎてる。長くは、戦えない』


 大量の血で、地面を赤く染めても……リッカさまの”抱擁強化”は強固に、リッカさまを覆っています。心が折れない限り、リッカさまの魔法は……解けません。


『……まだ、()()

「っ」


 余りにも無造作に、マクゼルトの攻撃範囲に飛び込んだリッカさまに……息を、呑んでしまいました。


「……ッ!」


 飛び込んで来たリッカさまに突き出された正拳は、正確に顔を捉えています。すぐに回避行動を取らなければいけません。なのにリッカさまは――そのまま更に、踏み込みました。間違いなく拳圧が届き……更には拳が当たるでしょう。


「――シッ!!」


 しかし――拳圧が無かったかのように軽々と、拳を()()()()()()()()リッカさまは……今まで拳圧の所為で踏み込む事が出来なかった、マクゼルトの懐まで深く入り込みました。


「何だってんだ……!」


 大きく避ける必要がなくなった事で強く地面を踏む事が出来るようになり、震脚が最大の効果を発揮しています。体捌きのキレが増し、斬撃に命が吹き込まれたかのようです。


『――浅い。もっと深く』


 マクゼルトの腹が、薄く斬られています。まだ、一歩……深く踏み込めていません。怪我の影響です……自身の震脚で、骨が、軋みを上げています。しかもリッカさまの額から、血が……吹き出しました。完全に拳圧を突破出来ている訳では、ないようです。致命傷は避けられていても……削られて、います。


(落ち着け……。俺は、これを望んどったはずだ……!)


 落ち着きを取り戻していくマクゼルトに、リッカさまが顔を顰めました。相手が動揺している間に勝負を決めたいと、リッカさまは速度を……上げています。


「――シッ!!」

「チッ……!」


 裏拳を最小の動きで避けたリッカさまに、マクゼルトは胴を目掛けて後ろ回し蹴りを放ちました。しかしリッカさまは軽く跳び上がり、体を回して避けています。


(水を、蹴っとるみてぇだな……ッ!!)


 マクゼルトの足の上を転がるように避け……回転の勢いそのままに袈裟斬りを放ちました。鎖骨から鳩尾まで、骨まで達する傷です。人間であれば致命傷ですが……マクゼルトは、気にしていません。


 その傷を含んでも尚……リッカさまの方が、重傷です。なのに――リッカさまの方が、速くなっているように感じました。


(我慢比べをする必要が、なくなり……首だけを狙えるように、なったからでしょうか)


 手数が増え、お互いの攻撃が交錯していく中で……リッカさまが傷ついていく回数だけが、減っています。


「――っ――シッ!」


 正拳突きを回転で避け、そのまま胴への横薙ぎ……いつもの、動きです。


「ゥグ……ッ」


 今度こそ、マクゼルトが顔を歪めました。恐らく内蔵まで届いています。ここに至り、リッカさまが何をしているのか……私は、気付きました。


(あの赤い閃光は……)

「まさカ……魔力ヲ……?」


 魔力色が見えるシーアさんも、気付いたようです。


「マクゼルトの拳圧が当たる瞬間、リッカさまは……その拳圧と同等の勢いで、魔力を打ち出しています」

「相殺してるんですカ……?」

「はい」


 マクゼルトの拳圧が届く寸前……肌に、触れた瞬間。リッカさまは魔力を打ち出し、拳圧を相殺していました。赤い閃光の正体は……リッカさまの魔力が拳圧を吹き飛ばしていた、()()()()なのです。


「頭に当たりそうな時は頭から……頬ならば頬から」

「そんな事出来るのかよ」

「リツカお姉さんがいつもやっている事でス。魔力を体内で高密度に練り上ゲ、打ち込ム」


 魔力運用の一種だから誰にでも出来ると、言っていましたが……あれだけの密度を、全身から打ち出すなんて……()()()()です……っ!


「初めは拳圧と放出する魔力の差で傷ついてしまっていました……。でも、完全に読みきりました」


 杖を握る手に、力が、入ります。


「もう、マクゼルトの拳は……リッカさまに届きません」


 確かにマクゼルトは、達人です。ですが――拳圧という優位性を失えば、リッカさまの方が上でしょう。このまま攻めていけば負けはないと、確信に至りました。

 

(今ならば、マクゼルトも……。私も急がなければいけません。あの回避方法は……そんなに長く……っ!)


 魔力を、練り始めます。まず使うのは、”拒絶”です。マクゼルトはこちらに意識を割く事が出来なくなっています。リッカさまの、魔力砲と仮称しますが、それにより状況は五分……いえ、リッカさま有利に変わりました。


(機会は来ます……。リッカさま、どうかそれまで……)


 魔力を直接打ち込む事自体、消耗が激しいのです。それを……マクゼルトの拳圧を吹き飛ばせるくらい高密度に撃ち出せば、リッカさまの魔力量であろうとも一瞬で枯渇します。それでも……隙が生まれるなら、今でしょう。


(まだ、祈る事しか出来ませんが……っ)

『アリスさんが、狙ってる……! 悟られないように……私が惹きつける……!』


 リッカさまとの戦いを渇望していたマクゼルトです。現状に苛立つ事はありません。むしろ――燃えるはずです。そう遠くない内に……注意が、リッカさまに集中するでしょう。しかし私が気取られてしまったら……シーアさんとレイメイさんが、死ぬことになります。


『考えさせる暇なんて、与えない……!』


 更に激しく、鋭く深く、リッカさまが攻め立てました。リッカさまに集中しなければ死ぬと、マクゼルトに感じさせるため……っリッカさまも、命を、燃やしています。


『魔法を使わせる前に――』

(【ヴァンテ】)(=【リトン】)(・オルイグナス)!!!」

「っ……!」


 順調にマクゼルトはリッカさまに集中していって、いるのでしょう。魔法まで解禁しました。あれが……シーアさんが言っていた、”風”の防御魔法です。分厚い風が、マクゼルトの周りで渦巻いています。


『甘くみてた……っ』

(高速詠唱……っ)


 リッカさまが踏み込むよりも早く、マクゼルトは詠唱を完了しました。これもまた……人には、出来ないものです。


「ライゼには、餞別として見せただけだったがな」

「……」

「あんさん相手に、使わんままってのは、愚かだった」


 体術に拘りを見せていましたが……魔法も、力の一つであるという意識は持っていたのでしょう。あれがどんな魔法なのか、分かりません。ただ防ぐだけなのか……それとも――どちらにしろ、ここからが本番とでも言いたいのか、マクゼルトが真剣な表情になっています。軽薄で歪な、醜悪な嗤いが――無くなりました。


『防御? 攻防一体……?』


 全てを考慮して、リッカさまが考えを修正していきます。マクゼルトの意識など関係ありません。リッカさまは初めから真剣でしたし――魔法はいつ使われてもおかしくないと思っていたのですから。だから……焦らず、戦いを再開させました。


(焦りは、ありません。しかし……っ)


 血を流しすぎている事は、自覚しています。時間がありません。魔力を直接放出している事に加え……あの、出血です。命は確実に、削れています。魔力砲を見て、私の魂がざわついている理由はすぐに分かりました。リッカさまはすでに――生命力で魔力を、補っています。


『今までの行動からして、私が約束を守ってる間は、良い。でも、破ったら……!』

「――シッ!!」

「ソォラ!!」

「……!?」


 斬撃に、マクゼルトが拳を突き出し――刀と拳がぶつかり合う、はずでした。しかしマクゼルトの拳に当たる事なく、刀が……大きく、弾かれてしまったのです。リッカさまにもそれは予想外だったのでしょう。危うく刀を、手放してしまうところでした。


「フンッ!」


 刀を弾かれ、正面ががら空きになってしまったリッカさまの顔に――マクゼルトの拳が、迫っています。それを転がりながら避け、リッカさまは地面に手を着きながら力を込めて立ち上がりました。


(流麗な、リッカさまの動きに……翳りが……体力が、もう……っ)

『血が、目を……』


 左目が、閉じています。血が……入ったのでしょう。拭ってもすぐに、流れ落ちてきて、視界を奪っていきます。


「はぁ……はっ……ぅ…………」

「限界か」

「まさ、か」


 戦闘中の会話をしないリッカさまだからこそ、その返事には意味が、あります。時間稼ぎは、ありえません。リッカさまには時間が、ありません。怒りと反骨心を抱き、マクゼルトを敵として認識し……闘志を、燃やす為です。もはや体力ではなく、気力でしか……動けません。


『アリス、さん……』


 心配そうに見てしまって、申し訳ございません……。貴女さまの勝利を、私だけは……信じています。


(ですが……観るだけは、もう嫌なのです)


 ふらふらと、真っすぐ立つ事すら難しくなっていくリッカさまを、支える事すら出来ないのは――嫌、なのです。


『大丈夫。絶対、そこに……帰るから』


 私の目を見て、戦闘中に笑顔を見せないリッカさまが……微笑みました。儚く、マクゼルトの”風”で簡単に、吹き消えそうな炎ですが……私はしっかりと、その笑みを、刻み付けます。


『だから、信じて』

(信じて、います。その時は必ず――やって、来ると……っ!)

 

 気力だけで、立っているのでしょう。でも、だからこそ……リッカさまは、倒れません。リッカさまの気力が……想いが、尽きる事はないのですから……っ。


「――シッ!!」

「ソラァッ!!」


 刀と拳がぶつかり合い、森が……揺れています。落ち葉の絨毯はすでに無く、剥き出しになった地面は血で、染め上げられ……でこぼこに、なっていました。


「はぁっ……ケホッ……くっ……」


 リッカさまの消耗が、激しいです。流血が止まりません。額の傷は浅くとも血が噴き出しますし……何より、内臓も、傷ついているはずです。そんな激痛の中、リッカさまの瞳は……煌々と、光っています。斬撃も鋭く、速度は衰えません。


「ハァ……ハァ……そうか、魔力で……!!」

「っ……シッ!!」

「ヌゥッ……!」


 マクゼルトが、魔力砲に気付きました。しかしリッカさまの動きは止まりません。”抱擁強化”が、リッカさまの動きを助けています。リッカさまの”想い”を受け、リッカさまの体を……強引に、動かしているのです。


 自身の”想い”とはいえ、他者に動かされているような感覚があるでしょう。しかしリッカさまは――”想い”に全てを、委ねています。一厘の不信もなく”想い”に身を任せ、マクゼルトの連携を避けきり……拳を刀の峰で受け――加速、させました。


「シッ!!」

「な――グッ……!!」


 マクゼルトの”風”を突破し、首筋を浅く斬りつけています。マクゼルトの力さえも利用し、斬撃を叩き込むリッカさまに――マクゼルトの防御行動が、増えてきたようです。


(何だ、コイツ……! ライゼの半分くれぇのガキが……何で……ッ!)

「――シッ!!」

「――ッ!?」


 防御が増えてきたマクゼルトの足元の隙を、リッカさまは見逃しません。渾身の震脚が、地面に――風穴を、開けました。足場を奪い、マクゼルトの選択肢を削ったのです。


 震脚の勢いで移動し、リッカさまはマクゼルトの背後を取っています。マクゼルトに出来るのは、”疾風”で逃げるか、反撃するか、です。


「チッ――!」


 反撃はリッカさまに当たりません。宙に浮いて、殆ど行動出来ないマクゼルトが放つ適当な拳が、リッカさまに当たるはずがないのです。そして、”疾風”を選んだとしても――。


(”疾風”で逃げ――いや、コイツは……ッ!!)

「ゴルァ……ッ!!」


 裏拳を選択したようですが、リッカさまは分かっていたように避け――回転斬りに、移行しようとしています。


「――ッ!!」


 避けられる事はマクゼルトも織り込み済みだったのでしょう。回転を始めようとしているリッカさまに、蹴りを放ちました――が、リッカさまは手で、()()()()()()()()


(馬鹿が――ッ!)


 斬撃、魔力砲、感知。それらがリッカさまの戦いを支えています。ですが――もう一つ。


「――ッ!?」


 手で蹴りを受けたはずですが、リッカさまに損傷はありません。何故なら、蹴りの威力を下に流し――蹴りの勢いを利用して、回転の速度を上げたからです。


「クソ、がッ……アァッ!!」


 ”風”を再び突破し、リッカさまの斬撃がマクゼルトの腕に入りました。腕を十字にし、耐えていますが――もう少しで、斬り落とせるでしょう。


「――シッ!」


 しかし――リッカさまに油断は、ありません。


「はぁ……は、ぁ……ふっ」


 マクゼルトの腕を蹴り、距離を開けたリッカさまが、呼吸を整えています。もしも、マクゼルトの腕を斬り落としていたら……マクゼルトの拳が、リッカさまに突き刺さっていたでしょう。腕一本を犠牲にして、リッカさまを殺そうとしたマクゼルトの意図を、リッカさまは感じ取ったのです。


「化けもんが……」

「けほっ……どっちが……」


 鋭く、睨み合っていますが……リッカさまの声から、力が感じられません。傷だけ見れば、マクゼルトも致命傷を受けています。しかし……リッカさまとマクゼルトでは、消耗に差がありすぎるのです。


(人と、マリスタザリアの差……)

「俺と、あんさん……何が違ぇ……同じだろうが……ッ」

「……」


 マクゼルトが激昂しています。自分も化け物だが、その化け物を倒そうとしているリッカさまはどうなのかと、言いたいのでしょう。ですが――そんな事、応えるまでもないのです。リッカさまとマクゼルトは、違います。


「人間で」

「あ゛……?」

「人間で在る事を、諦めた……あなたと、一緒にしないで……下さい」

「ッ……!」


 大きくフラつきながらも、リッカさま……毅然と、応えました。リッカさまは、”人”の弱さを知っています。それでも尚……”人”の強さを信じているのです。リッカさまは誰よりも、”人”として輝いています。


「私は、人として……生きる……っ! 人を、辞めない……」

(リッカさま……っ)

「どんなに、それが難しい世界でも……私は人として……守りきる……っ!!」


 フッと、リッカさまが消えました。人外であるマクゼルトの動体視力ですら追えない程の――活歩です。


「まだ、そんな……ッ!!」


 完全に見失ったマクゼルトが、襲撃に備えて構えました。それに対し、今日一番の速度で駆けたリッカさまは――。


『鋭く……速く……鮮烈に……苛烈に……っ!!』


 想いを込め――止めの一撃を、高めています。


「そこか――ッ!!」


 右目に映った影に、マクゼルトは拳を揮いました。完璧な一撃だったと思います。ですが――。


「――――!?」


 そこにリッカさまは、居ません。


(鞘……だと……)

(あれは、俺の時にも使った――)


 止めの一撃はマクゼルトも同じでした。完全に伸び切り、勝利を確信したマクゼルトの腕の死角に――リッカさまは、居ます。


「迸――るっ!!」


 リッカさまの止めの一撃が、マクゼルトの首に吸い込まれて――私は勝利を、確信しました。



ブクマ評価誤字報告ありがとうございます!

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