太もも(上)
そいつは足が長かった。
これでもか、ってぐらい長かった。
そいつの名は荒滝 貴久。
*
「たか〜、たか〜 、あんた遅刻するわよ‼︎
早く起きなさい」
貴久が母の声にのそりのそりと
面倒くさそうにスラッとした体を起こす。
そのまま眠たげな顔で、ベットの上でぼ〜としながら
ちらりと視線を時計の針に投げかける。
「くぁwせdrftgyふじこlp⁉︎」
おっと、驚き過ぎて声が裏返ったようだ。
貴久はふぅと息を一つ吐き、
「ああ、もう朝八時か」
女子から致死量の黄色い声が上がりそうな、キリッとしたキメ顔で言い直しても、事態が好転するわけでもない。
その事に気付いたのか慌ててベットを飛び降り、
高校の制服を引っ掴み階段を駆け下りる。
「あんた!朝飯は食べて行きなさい‼︎」
その言葉と同時に居間と玄関の間のドアを切り裂き飛んできたパンを口で華麗にキャッチすると、
「ふってははふ」
と元気な声で玄関を飛び出す。
すると待っていたのは
プゥと頬をふくらました幼馴染。
「もう、遅い‼︎」
「ごめんごめん、寝坊しちまった」
「もう私が待ってるってのに〜」
「悪いな、もう長年の付き合いだからつい忘れちまう」
そんなゲロ甘な会話を交わしながら、通学路を歩く貴久。
軽く8頭身はありそうな貴久には
周りから憧れと嫉妬の目が向けられ…………。
二人……絵……幸セ…………。
*
「たか〜、たか〜 、あんた遅刻するわよ‼︎
早く起きなさい」
貴久が母の声にのそりのそりと
面倒くさそうに大きな大きな体を起こす。
「ハァ、今日の夢は最高だったのに…… なんで母ちゃんはいつもいつも良い所で起こすんだよ。あーあ、正夢になってくんねーかな〜」
そのままぶつくさ言いながら眠たげな顔で、
ちらりと視線を時計の針に投げかける。
「くぁwせdrftgyふじこlp⁉︎」
おっと、しっかりと正夢になったようだ。
よかったね貴久。
貴久はふぅと息を一つ吐き、
「ああ、もう朝八時か」
キリッとしたキメ顔で言い直しても、事態が好転するわけでもない。 というか、貴久は良く言って中の中の顔なのでキメ顔をしたところで周りから奇異の目でみられるだけだ。
その事に気付いたのか慌ててベットを飛び降り、
高校の制服を引っ掴み階段を駆け下りる。
「あんた!朝飯は食べて行きなさい‼︎」
その言葉と同時に居間と玄関の間のドアを切り裂き飛んできたパンを口で華麗にキャッチ……出来るはずもなく、血濡れた口で、
「ふってははふ」
と痛々しい声で玄関を飛び出す。
すると待っていたのは電柱の陰で血濡れた口に驚きつつもシャッターをきる国から貴久の監視を依頼された幼馴染。
「今日は遅かったな」
ボソッと呟いた声は風に乗って貴久の耳まで届いていたが、貴久は気にしない。
なんせ長年の付き合いだ。
いちいち気にしていると精神が病んでしまうことはもう知っている。
ただ心の中では、もうやだと泣き言を吐いている。
そんな悲しき人生と通学路を歩く貴久。
うん、どんまい(笑)。
軽く18頭身はありそうな貴久には
周りから遠巻きに奇異の目が向けられる。
なんせ23㎝程の平均的なサイズの頭が、70㎝程の平均的なサイズの胴体が、三メートル越えの足に乗っかっているのだ。
な、ヤバさがわかっただろう?
存在だけで3つのギネス記録持ってるんだぜ。
バスケなんて上から覆い被さるだけでシュート阻止。
バレーなんて立ってるだけでガードになる。
徒競走ではそもそも歩幅がちげぇから速いのなんのって。
まぁそんな異常なスピードで歩く貴久と、必死で追いかける監視のヒト。その二人の光景はまさに怪獣に立ち向かう人類!
おおっと、寝坊のせいで時間が無い怪獣貴久がスピードをあげた‼︎ただでさえ速かったスピードが一気に跳ね上がり、世界に通用するスピードになる。
それに対して走る、そしてダッシュする監視のヒト。必死に貴久についていく。監視のヒトはもう汗だくだ。ダクダクのダクだ。
さぁ、はたして監視のヒトは貴久についていくことが出来るのか⁉︎
次回、監視のヒトの運命はいかに!




