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TSしたら女子高に通うことになった件  作者: cvおるたん塩
第二章 女子高に転校した件
9/25

8話 転校二日目の事件

「宮野さんおはよー」

「由夏ちゃん、おはよう」


 女子高生活二日目の朝。佑月が教室に入ると、真っ先に由夏が声をかけた。


「ゆかちー、仲良くなるの早くない?」

「私コミュ力最強だからね」


 そんな会話を聞き流しつつ、佑月は席に着いて机に突っ伏した。


(一穂のやつ、遅くまでやらせやがって……)


 昨日一穂が連れていた女子——燈梨は、一穂の彼女というわけではなく、合コンで知り合った友達で、佑月もやっているFPSバトルロワイアルのプレイヤーだったのだ。そして、一穂が佑月も誘い、三人でやっていたのだ。その結果、佑月は日付が変わるまで拘束されて寝不足だ。


「宮野さんおねむ?」

「うん、幼馴染が寝かせてくれなかった……」

「えっ、マジ……?」


 佑月の語弊のある言い方に、由夏も、由夏の友人の茜も驚いた。しかし、まだいまいち頭が回っていない佑月は自分が誤解を招くような発言をしたことに気づいていない。


「うん。久々に誘われたしまあやっとこうかなって思ってみんなでゲームしてたら日付変わっててね~。いっつも早起きだから寝る時間が十二時になるだけでもほんと……ふあぁぁぁ」

「なんだ、そういうこと……」


 が、普通に「ゲーム」という単語が出てきたので、気づかないうちに誤解も解けた。


「とりあえずホームルームまで時間あるし寝ときなよ」

「うん、そうする」


 由夏にそう言われ、佑月はそのまま机で眠った。


「宮野さんってどんな人なの?」


 由夏の前の席に座っていた茜がそう聞いた。


「うーん、めっちゃ頭よくて教え方もうまいし、それに優しい子だけど人見知り」

「へー。どんくらい頭いいの?」

「私が数学を理解できるくらい」

「うわっ、それめっちゃすごそう」

「……なんか自分で言っておきながらあーちゃんに言われたらちょっと傷つくね」


 数学が大の苦手で、いつも赤点ギリギリの由夏は、誰に教えてもらっても結局理解できていなかった。しかし、そんな由夏にしっかりと理解させるというのは、由夏に数学を教えたことのある人間からしたらすごいことなのだ。

 そして、この会話がきっかけで「宮野さんは頭がいい」という噂が一瞬にして広まったことなど、佑月は知る由もなかった。



「宮野さん、先生来たよ」

「あ、うん」


 由夏に軽く肩をつつかれ、佑月は目を覚ました。


「寝言、かわいかったよ」

「んなっ——」


 やってしまったと、佑月は顔を真っ赤に染めた。


「なんて、冗談。静かに可愛い寝息で寝てたよ」

「やめてよもー。死ぬかと思ったじゃん」

「大袈裟だなー。それに、宮野さん可愛いからむしろポイント上がるよ!」

「わけわかんないから……」

 

 いつも通り「かわいい」と言われたことに喜びながらも、到底理解できない理論に呆れながら冷たくそう返す。

 このクラスの担任の秋葉の「それじゃあはじめまー」というとても緩い声とともに、ホームルームが始まった。

 いつも通り連絡事項とこのクラスでは恒例の前日の秋葉が何をしていたかということを伝え、数分でホームルームが終わった。


 合間の休憩時間、今日の時点ですでに佑月に群がる女子はいなくなった。昨日で満足したからだ。おかげで、佑月はゆっくりと休憩時間を満喫できている。友達の多い由夏も、今は別の場所で雑談中だ。

 スマホの持ち込みがOKな星女では、休憩中にスマホでゲームをしたり、SNSを見ている生徒は珍しくない。そして、佑月もそのうちの一人だ。

 同じくスマホの持ち込みがOKである前通っていた男子校にいる一穂とLINEでやり取りしている。


『女子高どう?』

『女子がいっぱいいる』

『そりゃ当たり前だろww そういうことじゃなくてだな』

『空間にいるだけですっげー疲れるけど、まあ何とかなりそうかな』

『そうか、そりゃよかった。あと、もしいい女子見つけたら紹介してな』

『死ねヤリチン』

『だから俺は童貞だっちゅーに』

『発言がヤリチン』

『泣いちゃうぞほんと』


 一穂に対し、なかなかに刺のあるメッセージを飛ばす佑月だが、お互い「そういうものだ」と理解しているので、どちらが傷つくということも特にない。逆に一穂が「ちっこい体に似合わない乳もぐぞ」なんて言うこともあるが、二人の関係が悪化することはない。知り合って十二年程度、もはやその程度ではないということだ。

 こうして一穂とやりとりしている時の佑月は、はたから見ると恋する乙女のようで——


「彼氏?」


 と、指の動きでLINEでやり取りでもしているのだろうと察した由夏にそう言われた。


「違うよ。普通に幼馴染。あんなのが彼氏はさすがに嫌かな」


 認識をしっかりと訂正させ、流れるように一穂をディスる。


「でもなんか、幸せオーラ出てたよ」

「そう? まあ気楽に話せるからじゃないかな」

「へー、いいね、幼馴染」


 由夏は幸せそうな佑月を茶化すことなく会話を進めていく。


「私も幼馴染ほしかったなー」

「いたらいたで楽しいけど、たぶん今くらいの年になったら昔ほど一緒にいることとかないと思うよ。一緒にゲームすることはあるけど、直接会って遊ぶこととかほぼないし」

「そんなもんなんだ。一緒に買い物に行ったりとかもないの?」

「最近はいかないかな。なんか仲いい女子と行ってるみたい」

「モテるのかー」


 モてる男子ってそんなもんだよねと勝手に納得し、由夏は一穂の話を切り上げた。そして、「そういえば」と気づかぬうちにまた一穂の話を始めた。


「昨日前合コンで合った七宮一穂って男子から『明日どっか遊びに行こうぜー』って連絡来てさ。その人めっちゃイケメンなの! しかも声もいいし結構頭いいし運動もできるしで完璧なんだよねー。ワンチャン、あると思う?」

「うーん……」


 一穂の話をされ、何と答えるか言葉が詰まった。

 長いこと一緒にいる佑月だからこそわかることが、由夏にとっていい話とも限らない。佑月から見てほんの少し心春のことを意識しているのだろうということや、よく女子と遊んでいるが、本当に「友達」としてしか見ていないということ。

 そんなこと言えるわけもなく、佑月は適当に嘘を言った。


「向こうから誘ってきたんならワンチャンあるんじゃないかな」

「ホント? まあやるだけやってみるね!」


 授業開始間際だったので、由夏はそういうとすぐ席に着いて教科書を出した。


『お前マジ女子誘いすぎ』

『女友達のほうが多いし家居てもやることないからなー。どうせならだれかと遊び行ったほうが楽しいし』

『そういうことしてたら勘違いされるぞクソ女たらし』

『ひっどw まあわかってはいるんだけどな。昨日も告白されたし。一晩だけ満足させるとかそういうのもやだからもう明日で最後かなとは思ってる』

『ちゃんと向き合ってあげてね じゃあ授業始まるからまた』


 昨日少し話して勉強を教えただけの仲だが、由夏が傷つく姿をあまり見たくなかった佑月は、しっかりとLINEで釘を刺しておいた。

 それから少しして一時間目の世界史の授業が始まった。

 世界史は由夏も得意な分野で、これと言って質問されることもなく終始無言のまま授業が終わり、休憩時間。

 佑月は、これから数分のことを考えて悩んでいた。それもそのはず、次の授業は体育で、となれば当然着替える必要があるからだ。


「宮野さん?」

「なに?」

「早く着替えなきゃ遅れちゃうよ」

「うん……そうだね」


 男子がおらず、さらに男性教員もほとんどいないので、佑月以外は特に躊躇うこともなく着替えている。そんな教室でまともに目を開けることもできず、そして自分自身も着替えを見られるのが恥ずかしく、佑月は俯いたまま動けずにいた。

 しかし、さすがに着替えないと遅れてしまうので、しぶしぶ佑月はブラウスのボタンをはずしていき、ゆっくりと服を脱いだ。


「うわお、結構おっきいね」

「あっ、あんまり見ないで……」


 身内以外に下着姿を見られることには慣れていないので、とっさに胸を隠す

 よく心春に「私より背低いくせに胸はおっきいのずる過ぎるからホント!」と言われながら揉まれてはいるが、さすがに他人に見られるとなると別問題だ。心春に言われるときは別段何も思わないが、佑月自身まだ自分の身体に馴染み切れていないというのもあって、さすがに他人に見られると気にしてしまうのだ。

 まじまじと身体を見る由夏を無視して、急いで体操服を着てその上からジャージを羽織った。


「宮野さん結構胸大きいね」

「薄着だとなんか視線感じるし肩凝るし寝っ転がるとき邪魔だしで大変だけどね」

「あー、それわかる。あと夏場とか汗ヤバいよね」

「夏は家にいる間は上着てなかったよ」

「私も一人の時はそうだったー」

「妹はすごいうらやましいって言ってくるけど、正直貧乳でよかったなって思うよ」

「それ私もたまに思うー」


 身体にはなかなかなれない佑月だが、こんな話ができるくらいには慣れてきていた。

 同じような話をしながらグラウンドに出て、先に軽く体を動かしていると、授業が始まった。


「宮野さんテニスできる?」

「うん、妹の練習に付き合ってたからそれなりにできるよ」

「へー、じゃあよかった。一緒にやってみない?」

「うん、やろう。練習に付き合ってただけだからあまり期待はしないでね」


 授業内容はテニスだ。真っ先に由夏が佑月に声をかけ、興味本位で「一緒にやろう」と言ってくる人が来る前に、佑月はペアを組むことができた。しかも、由夏は現役テニス部員で、佑月は県大会にも出場するほどの実力を持つ心春の練習相手をしていてそれなりに上手いという経験者ペアだ。


「じゃ、いくよー」


 コートに一番乗りした佑月と由夏はさっそくラリーを始めた。


(この身体じゃ前ほど動けないし、軽めにやろうかな)


 運動神経が悪くなったというほどではないが、体形の差で前ほどの実力を発揮できないとわかっている佑月は、軽めに球を返していく。


「あれ、テニス部員的にはどう?」

「宮野さん? 結構きれいな動きだと思うよ」

「頭がよくて運動もできてかわいい……なるほど」


 それを見ていた女子たちが佑月のことを話し始めた。

 そのことに全く気付かず、二人はラリーを続ける。


「疲れたー」

「ほれゆかちー、スポーツドリンク。宮野さんもどうぞ」

「あ、ありがと……」


 ラリーを終えてコートから出ると、ドリンクを持って待っていた茜がそれを二人に渡した。


「宮野さん、運動もできるんだね」

「まあ、昔からやってたし、テニスは妹とも結構してるから……」


 初めて会話する茜に少しひるみ、言葉に詰まりながらもしっかりと返す。


「妹さんもテニスしてるんだ」

「妹、テニス部だから……」

「へー。宮野さんはテニス部とかはいんないの? 結構いい線行けると思うけど」

「私はいいかな……。家に親がいないから、その、家事やんないとだし……」

「そっか、それなら仕方ないね。でも、私たちはいつでも歓迎だからね!」

「うん、機会があればよろしくね……」


(行ってくれた……)


 何とか最後まで会話ができたと、佑月は安堵した。

 試合と会話で疲れ、茜とラリーしている由夏を見ながらフェンスにもたれかかってドリンクを飲んでいる佑月のもとに、今度はまた別の女子が来た。


「ねえ宮野さん、今暇?」

「暇……だけど、なに?」

「昨日全然話せなかったからちょっと話したいなって。今は私も順番待ちで暇だし」

「そう……なんだ。いいよ、全然」

「ほんとー? さっそく聞きたいんだけどさ、宮野さんって頭いいの?」

「頭いい……どうだろ? まあ、人並みには、できると思う……けど……」

「じゃあさ、ゆかちーに勉強教えた時のことって、マジ?」

「うん、一応ね。結構吞み込み早くて、早く終わったよ……」


 所々で呼吸を挟んで休憩しながら、茜に聞かれたことにこたえていった。しかし、話が進むにつれ、緊張のあまり佑月の呼吸がだんだんと荒くなっていた。


「宮野さん?」

「ごめんね、何でもないから……」


 茹で上がったタコのように顔を真っ赤にしながらも、何とか耐える——というよりも、無理をしていた。


(慣れなきゃ……)


「宮野さん——」

「宮野さん、大丈夫⁉」


 よっぽど緊張していたのか、少し体が震えていた佑月を見て、コートにいた由夏が急いで駆けつけてきた。


「ちょっと保健室連れて行ってくるね」

「うわっ、ちょ——」

「はいはい、暴れないのー」


 佑月を軽々と抱きかかえ、由夏は保健室まで歩いて行った。


「これ、恥ずかしいから……」

「えー、宮野さんお姫様みたいにかわいいから大丈夫だよ」

「そうじゃなくて……」

「まあ私もやられるとなると恥ずかしいけどね」


 と言いつつも、由夏はお姫様抱っこを辞めず、そのまま保健室に運んだ。そして、佑月をベッドに下すと、その隣に座って、頭を撫でた。


「頑張ったね、宮野さん」

「うん。その、助けてくれてありがとね」

「遠目に見てしんどそうなのわかるくらいだったから。それに、協力するって約束したしね。でも、今日みたいに無理しちゃダメだよ」


 さながら妹に諭すように、佑月に優しく言った。


「私も昔人見知りでさ。クラスでも全然馴染めないし、友達もほとんどいなかったの。それで、親に『頑張ってみろ。由夏なら何とかなる』なんていわれてその通りにやって失敗したことがあるんだ」


 どうしても佑月に無理してほしくない由夏は、自身の過去を語った。

 失敗して馬鹿にされ続けたこと、そのせいで人と関わるのが怖くなったこと。


「転校早々あんなことになってほしくないしね。ま、状況はちょっと違うけど」


 まだ知り合って数時間程度の二人だが、由夏としては無理に友達を作ろうとして失敗してほしくなかったのだ。


「やっぱり、由夏ちゃんって優しいんだね」

「それほどでもないよ~。でも、そう思ってもらえてるならうれしいな。ま、この優しさも受け売りみたいなものだけどね」

「そうなんだ。でもさ、受け売りでもなんでも、人にやさしくできるって、素敵だと思うよ。そうやって優しさが伝染していけば……そんな優しい世界になればいいのにね」


 副委員長との一件、そして、副委員長の境遇を思い出しながら佑月は言った。

 周りに優しくされてきた佑月が、同じように周りにしていたら、少なくとも、心春や一穂はそういう人間になった。逆に、妹からぞんざいに扱われてきた副委員長はああだ。


「ひゅ~、いいこと言うね」

「……やっぱなし。ちょっと恥ずかしいこと言った」


 柄にもなく恥ずかしいことを言ってしまって、佑月は頬をほんのり赤らめる。


「……私、宮野さんの隣の席でよかったって思ったよ」

「私も、最初に由夏ちゃんと仲良くなれてよかった」


 お互い目を見て微笑みあい、再び由夏は佑月の頭を撫でた。


「それじゃ、また授業終わりに来るから」

「うん」


 普段子ども扱いされると怒る佑月も、今回ばかりは何も言わなかった。

 由夏が保健室から出るのを確認して、佑月は布団を深くかぶり、そのまま目を瞑る。


(無理しちゃダメって、久しぶりに言われたかも……)


 静かな保健室で一人、佑月は女の子になってからのことを振り返る。

 最初はただ心春に言われるがまま、衣類を徐々に女物にチェンジしていった。そして家事をはじめ、女の子らしい口調を心掛け、女子と話せるように心春や一穂の友人たちと会話の練習をした。

 いろいろと変えていく時多少無理したことはあったが、どれも案外あっさり身についたので特に心配されることはなく、そんなものだと思っていたが、実はそうでもないのかもしれない。


(心配、してくれてるんだよね……)


 今までは頑張るのは当たり前だし、できないのなら多少は無理をする気でやってきて、そして周囲も佑月はそんなものだと応援してくれていた。

 しかし、由夏に「無理しちゃダメ」と言われ、心配されるのも悪くないと思った。


(頑張りすぎも、よくないよね)


 由夏ああ言われて少し肩の荷が下りた気がした。

 そのおかげか、佑月は授業が終わるまで、会話に使った体力を回復すべく保健室でぐっすり眠ったのだった。


 授業が終わって迎えに来た由夏曰、その時の寝顔はとてもかわいかったらしい。

佑月は大体身長147cmスリーサイズ82/55/79のCカップくらいです

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