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TSしたら女子高に通うことになった件  作者: cvおるたん塩
第二章 女子高に転校した件
19/25

18話 女子会

後編です

 午後五時過ぎ、合宿を終えた心春と綾音が帰ってきた。


「おかえり。合宿お疲れ様」

「ただいまー。お兄、大丈夫だった?」

「うん、由夏ちゃんがいたから」

「そっか、ならよかった」


 この日一日、佑月はずっと由夏と過ごしていた。

 二度寝の後朝食を取り、一穂がやっているゲームを一緒にやる為の練習をし、昼食は近くの店まで食べに行き、そして帰ってからまたゲーム三昧。二人で画面分割するなら大きい画面の方がいいとテレビに接続してプレイしていたのだが、その時ずっと佑月は由夏の太ももの間にちょこんと座っていた。


「汗かいてるだろうし風呂入って来たら? 荷物、持って行っとくよ」

「ありがとー」

「あや姉のも」

「ん、任せたー」


 リビングには行かず、二人は風呂に直行した。


「宮野さん、一緒に入らないの?」

「入らないよ! 心春だけならまだしも、流石にあや姉までいるとね……」

「まあ私の胸どころか下着もダメだもんねー」

「だって、その、慣れてないから……」


 佑月はまだ女子の裸どころか、下着姿さえまともにみられない。

 いろいろと興味のある思春期男子とはいえ、女子とは縁のない生活を心掛けて来たせいだ。

耐性がないせいで、自分の身体は見慣れていても、他人のものとなると罪悪感と羞恥心で爆発しそうになっまう。


「でも宮野さん、AVとかエッチな絵とか見るんでしょ?」

「そりゃ、まあ、見るけど……」

「でも生はダメなの?」

「だってなんか、みちゃダメな気がして……」

「いい子ちゃんだなー。まあそういう子だから好かれるんだろうね」


 佑月は頼まれれば基本引き受けるし、女子と接するのが苦手でも取り繕ってしっかり相手をするし、些細なことに気付いてそっとサポートしたりと、可愛いだけでなく気が利く優しい子とも認識されている。特に、生徒会長役員やクラスメイトからの人気と信頼は厚い。

 しかし、そんなことは無自覚な佑月はキョトンとしている。


「そんないい子には由夏ちゃんがいいものを食べさせてあげよう」

「お、なになに?」

「ほい、いちご」


 由夏は摘んだいちごを佑月の口に運ぶ。


「ん〜、甘い!」

(食べる顔可愛い……。宮野さんのお母さんも、こんな姿見たかっただろうな……)


 娘を見守る母親の気分ってこんななのかな。そう思うと、実の親の事がふと頭をよぎった。


「由夏ちゃん、どうかした?」

「ううん、なんでもない。それより、もう一個。あーん」

「あーんっ……んん~!」


 佑月の緩み切った顔を見ながら、由夏は夕飯の支度を始めた。


「あ、もしかして夕飯四人分いるかな?」


 二人分の荷物に気付いた由夏は、野菜を切りながら聞く。


「あー、どうだろ。ちょっと聞いてくるね」


 入浴シーンを除いてしまわないよう、脱衣所から扉越しに「あや姉、ご飯こっちで食べてく?」とと聞く。


「食べてくー」

「わかった。言っとくねー」

「あれ、誰かいるの?」

「うん。由夏ちゃんが来てる。ご飯作ってくれるって」

「あれ、由夏さんまだいるの?」

「心春を待ってたんだってさ」

「マジ? めっちゃ急いで風呂出る!」

「でも疲れてるんでしょ? ほどほどにね」

「わかってるー」


 帰った時はへとへとだった心春も、由夏が居ると知ったとたん元気になった。


「由夏ちゃん、四人分お願い」

「ほいほい、任せてー」


 由夏が料理を始めると、佑月はそれを隣から見守る。


(……お母さん、どんな人だったんだろ……)


 一穂の母がこうして料理していたのを横から見ていた時のことをふと思い出した。


(お母さんの味、どんななのかな……)


 佑月の父の微妙の味の料理はうっすらと記憶に残っているが、母の味は知らない。味どころか料理をする姿も、顔も、声も知らない。


「……ちょっと部屋いるね」

「わかった。できたら呼ぶよ」


 考えていたら無性に寂しくなってきて、寂しさを忘れるために寝ることにした。



『お兄ちゃんだから』

『ははっ、強くなったな。これなら、心春も安心だな』

『うん! 心春は僕がずっと守るから!』

『そうか。心春を、頼んだぞ』


 懐かしい夢を見ていた。

 佑月が心春をずっと守っていくと決めた日の——人生で父との最後の会話。


『じゃあ、行ってくる』

「まって、ダメ!」

「お兄……大丈夫? すごいうなされてたし、なんか涙出てんじゃん」

「え……あ、ああ、ほんとだ。前が、ちゃんと見えないね……。ごめん心春、先降りてて」

「わかった……」


 心春に涙なんて見せたくなくて、先にリビングに降りてもらう。心春もそれがわかっているようで、すぐに部屋を出た。


(やっぱり、頼ってはくれないんだね……)


 佑月は心春にあまり頼らない。もちろん分担すべきことはする。しかし、辛い時心春に頼ることは少ない。

 最近はたまに心春に頼ることはあるが、それでもほとんど自分一人で抱え込んでいる。


「お、いい匂い」


 心春がリビングに降りて少し、涙を拭いて表情を作って、いつもの佑月として降りてきた。


「おはよう佑月ちゃん。なんか目赤くない?」

「そう?」

「うん。もしかして泣いてた?」

「あや姉、そういうの鋭いね。でも何でもないから気にしないで」


 勘のいい綾音には嘘など通じないだろうと、佑月はあっさり認め、そしていつものように「なんでもない」と言う。


「ゆづ姉のなんでもないはなんかある時でしょ。まあ後で聞いてあげるから、とりあえず食べようよ」

「だね。いただきます」


 お腹が空いている心春たちよりも早く、佑月は肉を頬張る。


「んぅ~、最高!」

「由夏さん料理うますぎ。もう毎日食べたいくらい。あ、かず兄と結婚したら実質私のお姉ちゃんになるようなもんだしそれならいけるのでは?」

「結婚ねー。あと二年待てばできるね」

「七宮先輩が結婚とか想像できない」

「ねー。一穂はなんか一生ゲームしてるイメージしかない」

「確かに、かず兄ならやりそう」

「でも意外と生活力あるから意外と心配はないよね」

「ないねー。かず兄あれでも料理できるし掃除とかもするタイプだし。由夏さんほんといい男捕まえましたね」

「宮野さん……佑月ちゃんのおかげだけどね」

「感謝してもっといろいろ食べさせてくれてもいいよ?」

「じゃあ今度ケーキ作ってあげる」

「え、作れるの⁉」

「まあねー」

「楽しみー!」


 ご飯を食べて談笑していると、すぐに佑月にいつもの笑顔が戻った。


(家族ってこんな感じ……なのかな)



 夕食を食べ終わると、綾音は家に帰った。

 そして佑月は心春と由夏に挟まれて、三人でゲームをしている。

 ゲームセンス抜群な佑月がぶっちぎりで一位、そして心春と由夏がいい勝負と言った状況だ。 


「あああああああ待って待ってそれはダメあああああああ由夏さんひどい!」

「ふっふっふー、勝てばいいのだよ」


 由夏の妨害を受け、心春は一気に最下位まで落ちる。


「心春頑張れー」

「うわ、ゆづ姉ゴールして高みの見物じゃん」

「ちょ、早すぎでしょ。私たち初心者なんだから手加減してよー」

「勝負は全力でやる主義だからねー」


 いち早くレースを終えた佑月はコントローラーを置いて、盛り上がる二人のプレイを眺めながらローテーブルに置かれたコーヒーを啜る。


「ゆづ姉めっちゃ勝者って感じじゃん」

「一位だからね」

「……気になってたんだけど、心春ちゃんって宮野——佑月ちゃんのこと家でもゆづ姉って呼んでるの?」

「え、まあ……」

「あー、かくかくしかじかってことで男バレしてるからお兄でもいいよ」

「え、うそ、なんで……」

「いやー、一穂も来て修羅場ってねー」


 盛り上がっていた空気から一転、突然空気が重くなる。


「ごめん、ちゃんとお兄に言っとくべきだった……」

「気にしないで。あの後普通に和解して一緒に寝たから」

「……なんで?」

「いやー、その、一人で寝れなくて……」

「寝顔、可愛かったよ」

「……まあ、バレたのはアレだけど結果がこれならいいか……。でもその、ごめん」

「大丈夫。終わり良ければってやつだよ」

「うんうん。おかげで可愛い寝顔見れたんだから」

「それは忘れて……っていつも教室で見られてるか」


 重い空気もすぐになくなり、ゲームも第二ラウンドがスタートした。

 もう兄ということを隠す必要がなく、気を遣わなくてもいいのでさっきよりも素直に盛り上がっている。


「ふあー、やったやった。さすがに疲れちゃった」

「だねー。そろそろ風呂入る?」

「そうする。由夏ちゃん先入る?」

「えー、一緒に入らないの?」

「さすがにダメだよ。私思春期男子だよ一応」

「思春期男子は女子高にいません。ということで一緒に入ろ」

「えー。まあ、いいけど……その、あまり見ないでね?」

「お兄、そのセリフ言うの由夏さんのほうだと思う」

「そうそう。これでも私だって乙女なんだから」

「乙女は男ってわかったうえで一緒に風呂入ろうなんて言わないと思うんだけどな……」


 とは言いつつも、佑月は由夏と脱衣所に向かい、服を脱ぐ。

 佑月を元男子ではなく佑月という個人としてしか認識していない由夏は堂々と服を脱いでいるが、まだ見るのも見られるのも慣れていない佑月は胸を隠している。


「……由夏ちゃん恥ずかしくないの?」

「そりゃそうだよ。正直宮野さんは私にとっては女子だから」

「でも……」

「いいのいいの。ほら、早く入らないと風邪ひいちゃうよ。それに、風邪引いた時に見られちゃったんだし今更だよ。それに、話したいこともあるし」

「後じゃダメ?」

「今がいいな」


 少し悩んだ末に「じゃあ入る」と渋々承諾した。


「背中洗ってあげる」


 由夏はシャワーチェアに座る佑月の後ろで膝立ちして小さな背中を洗う。そのまま手を前に伸ばし、佑月の胸を鷲掴みにした。


「ひゃう!」

「ほうほう、生だとなお柔らかいですな。感度も良好と……」


 佑月の胸を揉みながら、冗談半分でそんな感想を言う。

 そして佑月はやり返すように後ろを向いて由夏の胸に手を沈ませるが、すぐ我に帰って顔を真っ赤に染め上げた。


「……その、一穂にも揉まれた?」


 流石に自分だけがこんなことをするのはまずいと思い、咄嗟に一穂のことを聞く。その意図を汲んだ由夏はあえて「どうだろ」と返す。


「由夏ちゃんいじわる……」

「あはは、ごめんね。でもあんまり聞きたくないでしょ?」

「それは、まあ……」


 佑月とて中身はまだまだ男。好きかはわからないが、それこそ恋人のような距離感の友人が彼氏である幼馴染と何をしているかなんてことは聞きたくない。


(……あれ、なんんだろ)


 なんとなくもやもやする。けれど、その理由はわからない。



 風呂を出ても、違和感は残っていた。

 由夏に対する感情が何なのか、経験不足な佑月にはまだわからないが、なんとなく経験したことがあるような、そんな気もしている。


「宴の始まりだー!」

「「「おー!」」」


 荷物をもって改めて泊まりに来た綾音を混ぜて、パジャマパーティーが始まった。

 心春の部屋でお菓子やジュースが置かれたローテーブルを囲み、さっそく定番の恋バナが始まる。

「由夏さん、かず兄とはどうです?」


「うーん、まあ健全な高校生の付き合いって感じかなー。放課後会って遊んで、休日はデート行ったりどっちかの家でダラダラしたり」

「二人きりの部屋……進展は⁈」

「ようやく一穂くんが手を繋いでくれるようになったくらいかなー」


 それほど関係が進展していなかったことに、佑月は一人胸をなでおろす。


(私が引っ付けたのに何で安心したんだろ……)

「じゃあキスはまだ先かー」

「まだまだ先だろうねー。私から積極的にいけばすぐなのかもしれないけど」

「かず兄奥手だから由夏さんから行くしかないですよ!」

「やっぱりそうなのかなぁ……ん、佑月ちゃん?」


 なんとなく、佑月は由夏にぴったりとくっついて座る。


「……お兄もしかして由夏さんのこと好きなの?」

「私は好きだよ?」

「すっ、すす、す、好きって……!」

「相変わらずお兄そういうこと言われるの苦手だよねー。さんざん告られてきたくせに」

「だってよく知らない女子だったからそもそもなんとも思わないし」

「やっぱ由夏さん好きじゃん」

「なんでそうなるの! まだそういうのよくわからないから……」

「由夏さんが取られるのが嫌とか?」

「んー、あー……」

「もしかして七宮先輩が取られるのも嫌だったりして」

「それも、あるかも……?」


 佑月にとって一穂は頼れる幼馴染で、唯一一緒にバカなことをできる相手だ。そして由夏は初めての友達で、一緒にいると安心できる存在。そんな二人がくっついて、自分のもとからいなくなってしまうのではないかと思ってしまう。

 けれど、「私のとこからいなくならない?」なんてセリフは心春の前でなくとも言えるはずがない。そして、由夏に対して「一穂を取らないで」なんてことも言えない。


「お兄、懐いたらとことん一緒に居たがるもんね。まあ気持ちはわかるけどさ」

「安心できる人からは離れたくないもんね」


 心春も綾音も、佑月の気持ちは理解できる。心春だって佑月が自分のもとから離れてしまうのは寂しいし、綾音もそういった経験がある。そして、由夏も同じだ。


「大丈夫、一穂くんは取らないよ」

「……うん」

「私も、一穂くんだけのになるわけじゃないから」

「……」


 無言で由夏の膝に頭を乗せる。

 そして、眠たいのを我慢していたのか心地よかったのか、佑月はそのままぐっすりと眠ってしまった。


「あら、寝ちゃってる。まあいっか」


 佑月の頭をぽんぽんしながら、由夏は心春たちと話を続ける。


「佑月ちゃん、家でもこんな感じなの?」

「ううん。いつもはもっと理想のお兄ちゃんって感じです」


 たまに綾音に甘えているところを見るものの、基本心春にとって佑月は常に自分のことを後回しにしてとにかく優しくしてくれて、頼れるけど我慢しすぎてどこか危なっかしくも見える最高のお兄ちゃんだ。そんな兄の、妹のような姿を見てようやく肩の荷が下りたように頬を緩ませる。


「由夏さんとあやちーの前でだけですよ、そんなの」


 自分には頼ってくれないのに友達には頼る。そのことにもどかしさを覚えつつも、「これからもいっぱい甘やかしてあげてください」と作り笑いをしながら言う。


「それで、お兄って学校じゃどんな感じなんですか?」

「授業はすっごい真面目で誰かに勉強教えてって言われたらちゃんと教えるし生徒会の仕事手伝ったりですごい人気だよ。でもしっかりものっぽくても朝に弱くて学校に来てすぐ寝てたり仲いい人たちに甘やかされて喜んでる姿が妹みたいで可愛いって今じゃアイドル扱い」

「佑月ちゃん、成長したんですね」

「成長って、いや、お兄……」


 無事女子と仲良くやれていることを喜ぶ綾音とは対照的に、心春は学校じゃ頼れる兄が見る影もないことを知ってしまい頭を抱える。


「いや、うん、まあお兄が楽しいならそれが一番か」


 考えたらダメな気がして、そうやって無理やり納得する。


(でもほんと、楽しそうでよかった……)


 女子になってクラスメイトに襲われて、そのせいで男子ともうまく付き合えなくなってしまった佑月も今では転校先の女子高でうまくやれている。それを知って思うところはあるものの、心配事は確かに一つ減った。そのおかげか、心春はいつもよりも少しテンションが高くなっていた。

由夏ちゃん積みゲーならめちゃくちゃうまいです

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