20.マジックショー終演!
そして高円寺はマジックショーそっちのけで、弟君が横になっているベッドの方へと勢い良く飛び込んだ。
「せっ、誠也っ!! お姉ちゃんのことが1番好きって本当なのぉ!!??」
「うっ……く、苦しいよ、お姉ちゃん……」
どうやら抱きついて、頬をスリスリしているらしい……高円寺ってここまで弟君のこと好きだったんだね。驚いたよ。
「……」
うん……それはいいんだけどさ。これ、マジックの続きはどうするんだ……? ショーが崩壊しちゃってないか……?
そうやって顔を伏せて悩んでいると、俺の肩をポンと叩く少女が1人。
「シュン君!」
「ヒナノ?」
「ショーはこの辺で終わっておかない? だって何だか……今の心美ちゃんと誠也くん、とっても幸せそうなんだもん! ほら!」
そして俺の顔がヒナノ手によってグイッと持ち上げられると……そこには。
「ほんとに誠也は可愛いなぁー! お姉ちゃんは嬉しいよ!!」
「も、もう、お姉ちゃんってばぁ……!」
写真にしたらきっと映えるような、絵画にしたらきっと足を止めてしまいそうな。そんなとっても素敵で仲のいい、姉弟の姿が俺の目に入ってきたのだ。
そして俺はヒナノと顔を見合わせる。そしたらヒナノは無邪気に笑って。
「ふふっ! ねっ?」
「……ああ、そうだな」
確かに、無理に続ける必要も無いかもな。
ヒナノの言葉に納得した俺は、本当に最後のマジックで使おうとした道具を片付けて……そして俺たちは帽子を外すのだった。
「それじゃあこれでマジックショーを終わることにするよ。お相手はマジシャン藍野と」
「助手のヒナノでしたー!」
そう別れの挨拶をして「後は2人でごゆっくり」と俺達は病室から去って行こうとした……その時に弟君に引き止められた。
「あっ、まって、あいのーん!」
「ん、どうした?」
俺は足を止めて振り返る。そしたら弟君は、高円寺によしよしと撫でられたままだが、とっても真剣な顔をして。
「あいのーんたちは本当に……ホントに未来が見える人たちなの?」
そうやって俺達に問いかけてきたんだ。
「……」
一瞬だけ俺は迷ったが、自信満々に
「ああ! マジシャンだからな!」
と答えてやったんだ。そしたら弟君はまた不安そうな顔をして。
「なら…………ならぼくはこの先どうなるの? あいのーんなら分かるよね?」
と。そしてそれを聞いた高円寺の撫でる動きが、凍ったようにビタっと止まった……何だこのプレッシャーは。
俺はヒナノに視線を向けてみる。そしたらヒナノは1回だけこくりと頷き、また俺から視線を逸らした。
多分だけどヒナノは「シュン君が言うべきだよ」って伝えたかったんだと思う……うん。そうだよな。分かったよ。
俺は道を引き返して、弟君の前に立つ。そして……ヒナノみたいに、不安をぶち壊すかのように、元気いっぱいに言ってあげたんだ。
「それは大丈夫だ! 君の未来はとっても明るいものになっているよ!」
「ほんと?」
「ああ! 今は少し辛いかもしれないけど……絶対に元気になるハズだよ!」
そしたら弟君の曇っていた表情は、一気にに晴れ晴れとしたものへと変わっていったんだ。
……俺は医者でも未来視が出来る人でもない、ただのマジシャンだ。だから本当に未来がどうなるかなんて何も分からない。
でも。弟君を勇気付けられたのは確かだ。夢を与える職の……悪く言えば大嘘つきの俺だからこそ、言えたセリフだと思うんだ。
「うん! あいのーんのこと、信じるよ!」
「ああ! 次はもっと大きなステージで会おう! 最高にいい席を確保しておくよ!」
「うんっ!」
そして最後に俺と弟君は握手をした。
そのほんのり暖かい手の平は、俺も応援されているような……そんな感じがしたんだ。
──
「シュン君、お疲れ様!」
「ああ、ヒナノもお疲れ様!」
ここは近所のファミレス。俺とヒナノは打ち上げを兼ねて、マジックショーの後にやって来ていたのだ。
「でも本当に大変だったよな? 慣れないことを沢山させたからさ」
そう言うとヒナノは「ふふっ!」と笑って。
「それは否定しないよ。だって絶対に、今までで1番大変だったもん!」
「あははっ……だよな。ホント無理させて悪かったよ。ごめんな?」
そしたらヒナノは首を横に振って。
「ううん、いいの。それ以上に得たものの方が多かったもん!」
「そっか。本当にありがとうね」
「えへへっ、どういたしまして!」
そしてお互いに汲んできたドリンクをグビっと飲んで、一息ついた後に。
「それで……シュン君、久しぶりにしっかりとしたマジックショーをやって、どんな気持ちになったの?」
「えっ?」
何だか急にヒナノから面接官みたいな質問が飛んできてビックリした。答えるけども。
「えっと……やっぱり楽しかったよ。マジシャンの頃を鮮明に思い出したし、ヒナノとも一緒にマジックをやれたからさ」
「うんうん、他には?」
「他は……他はさ。嬉しかったんだ。俺の……俺達のマジックで、見た人が驚いた顔に、笑顔になるのがとっても嬉しくて。俺達にこんな力があったんだって思えて。思い出せてさ」
「うんうん、そっか! 私もシュン君と同じ気持ちだよ!」
ヒナノは大きく首を動かして同意する……何か赤べこみたいだな。
「それで……シュン君。私は今からシュン君に、とあるお願いをしようと思うんだ」
「ん? お願い?」
「うん、ずっと前にしたお願い。きっと今なら、その答えも変わるかなって思ったから」
前にしたお願い……? えっと確か文化祭の時に言われたような気が……
と考えを巡らせている俺に向かって、ヒナノは真っ直ぐな視線を向けて。こう言った。
「私はね、またシュン君に大きなステージに立って欲しいんだ! かっこよくて輝いているシュン君が、大勢の人を驚いた顔に、笑顔にしているのを……この目で見てみたいの!」
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次回最終話です。




