19.好きな人を当てよう
「まぁトランプもジョーカーを除いて52枚。52分の1の確率だから、たまたま当たってしまうこともあるよね」
「え、いやそれはないんじゃ……?」
高円寺がボソッと何か言ったみたいだが、聞こえなかったことにして話を進める。
「だから次は、たまたまじゃ当てられないような物を予言してみせるよ」
そう言って俺はスケッチブックとペンを取り出し、それを弟君に手渡した。
「今回はテーマに沿った答えを、そこのスケッチブックに書いてもらうよ。テーマは好きな食べ物とか好きな音楽とか……何でもいい。それを確実に的中させる、そんな予言マジックだよ」
「そしてこれも私が当てまーす! だから答えが見えないように、またアイマスクして後ろを向いておくね!」
そしてヒナノはまた目隠しをして待機をする……その間に俺は弟君に聞いた。
「じゃあテーマを決めようか。何がいい?」
「え? えっと……」
弟君は困ってるみたいだった。まぁ急に言われてもそうなるよな。なら、こういう時は臨機応変に。
「じゃあ……高円寺。お前が何かテーマを決めてやってくれ」
「えっ、ウチが? そうだなぁ……」
どうしようかなと高円寺は顔に手を当て、グルグルと考えた後に「じゃあ誠也の好きな人が知りたいな」と呟いた。
うーん、それは……
「それは止めといた方がいいんじゃないか? 誰にだって知られたくないことはあるだろうし……いやまぁ弟君がいいのなら、別に良いんだけども」
好きな人の名前を書くだけでも、相当恥ずかしいことだからな……それに弟君位の年齢だと尚更だし。
それに俺だって小学生の頃、好きな人教えてってい言われた時「べっ、べつにそんなのいねーし!!」って強がってたもんな。
だから厳しんじゃないかな……と思っていたのだが。弟君は悩んだ末に「お姉ちゃんに書いたのを見せないのならいいよ」と言ってくれたのだ。マジか、すげぇな。
そしたら高円寺は不満そうに。
「えー何でウチには見せてくれないのー?」
「誰だってそう言うモノはあるんだよ、分かってやってくれ。でもまぁそれも……あそこで目隠ししてるヒナノがズバリと当てちゃうけど、大丈夫か?」
そうやって弟君に聞いてみると。
「うん。だってぜったいにあてられないと思うもん」
と。余程の自信だ。多分弟君しか知らない人、同級生とかの名前を書くつもりなんだろうけど……俺らの予言マジックの前では無意味なのだよ。ガハハ。
そうやって思いながら、弟君の動かすペンとスケッチブックを眺めていたら……
「……!」
書かれた答えに驚いた。その文字は確かに……『ここみおねえちゃん』と書かれてあったのだから。
……っ、やべ、何か泣きそうになってしまう……でもでも、今の俺はただのマジシャンだ。落ち着けー。
出てきそうになってきた涙をギュイーンと引っ込めて、俺は冷静に言う。
「書けたかな? そしたらペンを置いて、スケッチブックを俺に渡してね」
「うん」
そしてスケッチブックを受け取り、書かれている文字を一瞬確認した後に、それを折りたたんで誰からも見えないようにした。
「じゃあヒナノ、アイマスクを外して」
そう言って俺はスケッチブックを机に置き、ヒナノを連れて来た。そしてヒナノは弟君の目の前に立って、顔を近づけて。
「じゃあ今から当てるよ! 心の中を読み取るから、私の目をよーく見てね?」
「うん」
そしてヒナノと弟君は見つめ合って……
「はいはい……何となく分かってきたよ?」
「ほんとに?」
そしてヒナノ指で視線を合わせるような仕草をして「もう少し……もう少し」と念じるように呟く。
そして遂に……!
「はいっ! 完全に読み取れたよ! 誠也くんの好きな人は……心美お姉ちゃんだね!」
と人差し指をビシッと指して、そう言い放ったんだ。
「えっ! なんでわかったのっ!?」
弟君は過去一、目を見開いて驚いている。一方で高円寺は……
「……!!!!」
驚きのゲージがMAXを突破しているのか、手で口を塞いでジタバタさせている。何か謎の生き物みたいで怖いってば。
──
藍野の簡単脳内解説。
これも最初にやった予言マジックと似たようなモノで、俺が答えを見るのは絶対に必要な過程なのだ。
答えを見たらサッとスケッチブックを閉じて、誰からも見えないようにしておく。
そしてヒナノの目隠しを取り「今から心の中を読み取る」と宣言して時間を作る。
その時にヒナノの目を見させるのがポイントだ。これもミスディレクション……視線誘導を使うのだ。
ヒナノが目を合わせてうんたらかんたら言っている間に、俺はこっそりヒナノの後ろに立って文字を書いて、答えを伝えるのだ。
ヒナノの背中に自分の指を使ってね……そう、友達と授業中にこっそりやるアレだよ。
こうすれば何も喋らなくても伝えられるから、予言マジック出来るってワケ……ね、本当に簡単でしょ?




