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30.愛の告白

「……」


 ……さて。


 鈍感系主人公の素質がある俺ですら、しっかりとヒナノの想いに気付いてしまったので……俺はヒナノに返答しなきゃいけないんだけど。


 どどどどうしよう。マジでどうしよう。いや、凄く嬉しいし、めちゃくちゃ幸せなんだけどさ……!!


 俺はなんて返事をすればいいんだよ!? こんな面と向かって好きだなんて言われたことないし、何もわかんないよ!


 とにかく落ち着いて考えろ……考えろ俺っ!


 そんな過去にないレベルで頭をフル回転させていたら……幾つか案が浮かんできた。1個ずつ挙げていこう。


  まず1つは「えー嘘ー? 冗談だろー?」と少し茶化したような感じで言うこと。


 次に1つ。「ありがとう、嬉しいよ」とお礼を言うが、これ以上は何も言わないこと。


 その次に1つ。「俺も好きだよ」とガチめのトーンで答えること。


 最後に1つ。「俺も大好きだ。付き合おう」位まで言ってしまうことだ。


 ……ここ択だな。


 どうもこの返答次第で、俺の人生が大きく変わりそうな気しかしないよ。だからマジで真剣に考えなくちゃいけないな。


 まぁ……まず最初に言った『茶化したように言う』のはかなり駄目な返答だと思う。


 これはヒナノの想いを踏みにじる行為になってしまうからな。


 多分ヒナノは俺が気が付かないと踏んだ上で、俺の名前を書いたんだと思うが……反応を見る限り、想いは冗談ではなく本物だと思うんだ。


 自分でこんな分析するのは、本当に恥ずかしいんだけど……そんな分析されているヒナノの方が恥ずかしいだろうからな……なんかややこしいな。


 そして次の『お礼を言う』という選択は、一見悪くない行動かもしれないが……これもあまり良い選択ではないと思うんだ。


 思い返してみてくれ。俺がヒナノにプレゼントを渡した時を。あの後、お互いに恥ずかしくなっちゃってしばらくの間、まともに会話が出来なかったんだよ。


 だからお礼だけ言ってこのまま会話を終えてしまうと、また恥ずかしがって、会話が少なくなって変な感じになってしまうと思うから……もっと明確な返事をしなくてはならないんだ。


 それで次の「俺も好きだ」と伝えるのは、まぁ今までの選択肢の中では正解に近いのかもしれない。ただそれだと……些か返事が足りない気がする。


「好きだよ」「俺も好きだ」「……」「……」


 これで会話が終わってしまったら、返事をしたにはしただろうが……さっき言ったみたいにまたお互い恥ずかしがって、会話がたどたどしくなってしまうかもしれないからな。


 ……で。最後の選択肢の「俺も大好きだ、付き合おう」と、ヒナノ以上の返事をすること。


 もしかしてこれが…………正解なのか?


 これならヒナノの想いをしっかり受け止めているし、返事もしっかりしている。ただ問題なのは……


 これが『告白』ということであり、失敗する可能性が含まれているということだ。


「えっ? 好かれているのなら、普通に告白成功するでしょ?」 とお思いの頭スカスカヒューマン共。それは違う……!


 まず一般に『好き』というモノは『like』と『love』に分類されるのはご存知だろう。


 このヒナノの言った『好き』は多分ラブの意味であると信じたいが……ライクの可能性だって消えた訳ではないのだ。


 それにっ! ラブだからといっても、その人と付き合いたいかと問われれば、スグに「はい」と答える人はあまりいないんじゃないか!?


「我は恐れ多くて推しとは付き合えませんぞwwwドゥフコポォwww」みたいなこと、草刈言ってたし!!


 それに!! 最近ではおじいちゃんとか、オタクとかを可愛いと持て囃す風潮だってあるし!! キモカワとか流行ってたから、そういうのにも平気で「好き」と言える社会が形成されてしまったんだ!!


 それでいざこっちが本気にしたら、「本気にするとかありえないんですけど(笑)」みたいに、俺らを奈落に突き飛ばすんだろ!? 俺そういうのネットで沢山見たてきた────


「…………シュン君?」


「……あっ」


 ヒナノの言葉で一気に正気に戻る。


 目の前には……真っ暗な川辺をバックに、リンゴのほっぺをしたヒナノが突っ立っていた。


 あっ……そっか。ヒナノだってきっと、この待っている時間がとても辛いんだ。


 意図しない形とは言え、ヒナノはこうやって俺に想いを伝えてくれたんだ。


 それなのに俺は必死に言い訳を探して……その想いから逃げようとしていたんだ。ただ、自分が傷付きたくないから……!


 ああ。本当に俺は愚かだな。


「……」


 それならもう……こうやって逃げ続けるのは。取り繕って自分の心を守るのは。止めにしよう。


 傷付くことを恐れちゃ、何も出来ないんだから。


 覚悟を決めた俺は全ての考えを一切忘れて……今思っていること。言いたいことを全て、ヒナノに伝えるのだった。


「ヒナノ……俺。俺っ! とっても嬉しいよ! 俺もヒナノのことが、とってもとっても大好きだ!」


「し、シュン君……!」


「でも……何でこんなに可愛いヒナノが、俺みたいなのを好きでいてくれるのかが分からない!」


「……えっ、えっ?」


「知ってるだろうけど……俺は陰キャだし、マジックしか取り柄がないような男だ! それでいて停学喰らうような問題児でもあるし! 今までロクに人と関わってこなかったから……下手な言葉で人を傷付けてしまうことだってある!」


「……」


 ヒナノは途中で口を挟もうとしてきたけど……俺の真剣な目を見たのか、また口を閉じてくれた。


「そんな俺をどうして好きでいてくれるのが、分からないけど……それでもやっぱり俺もヒナノが好きなんだ!」


「……」


「だから……こんな俺でもいいのなら。おっ、俺と付き合ってほしいんだ! 誰よりも近くに……俺はヒナノの傍に居たいんだ!!」


 ……言った。全て。俺の思ってることを。


 心臓の音がバカくそうるさくて、未だにビビっているけど。それでも。これでどんな返事が来ようと、玉砕しようと。悔いは残らないよ。


 そしてヒナノの方を見てみると。


「……え、え、えっと、わっ、わたわた私……!」


 分かりやすいくらいに、とっても動揺していた。


 とりあえず俺は……ヒナノが落ち着くまで、黙って待っていたんだ。


 そしたらヒナノは。目をつぶって、顔を真っ赤にしたまま……頑張って口を開いてくれたんだ。


「わっ……私は!シュン君がいいの! シュン君じゃないと嫌なの! とっても優しくて、私のことを大切にして……ちゃんと私を女の子として見てくれるシュン君がいいのっ!」


「……えっ、それって!」


「だから私で良ければ……シュン君のかっ、か、か、彼女……になりたいなって。おっ、おも……思います……!」


 その返答に、俺は目を見開く。


「ほっ、本当に!?」


「うん……!」


「やっ…………やったー!!」


 俺の人生最高の叫びは、静かな川全体に響き渡ったのだ。そして俺達を祝福するかのように、俺の声を合図に虫たちの合唱が始まったのだった……


 ……あまりロマンチックとは言えないけども。これも俺ららしくて、何だか良いかもしれない。

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