15.謎の少女、ココミちゃん!
予想外の言葉に俺は、一瞬だけ呼吸を忘れる。
「……いっ、今。何て?」
「だから。辞めちゃったの。2人とも」
「はっ……はぁ!?」
意味が分からなかった……分かってたまるかよ。
アイツらが学校を辞めた?
あんなクソで図太いヤツらが……自らそんなことをするとは思えない。退学なら有り得るかもしれないが……この俺でも停学処分だ。それは考えにくい。
やっぱりおかしい。何か……何か不思議な力が働いているような。そんな気しかしていなかった。
────そんな中。突然。ドンドンと屋上の扉を叩く音と一緒に。
「そう! 全てはウチの力なんだよ、あいのーん!」
扉の向こうから、女の子の声が聞こえてきたのだった。
「わあっ!?」
「えっ、なっ、何!? 誰!?」
俺はヒナノより驚き騒ぎつつ、向こうにいる人物の正体を探った……そしたら返事が。
「誰とは失礼だなぁ! 同じクラスじゃんか、あいのーん!」
「えっ……同じクラス……?」
本当に分からないんだけど……同じクラスにこんなキテレツなヤツいたっけ……?
とか考えていると。
「あっ、もしかして心美ちゃん?」
ヒナノはハッと思い出したかのようにそう言って、扉の方へ走っていくのだった。
「ちょ、ちょっと! ヒナノ!?」
「大丈夫大丈夫! この子は変わっているけど、面白い子なんだよ!」
そう言いつつヒナノの開いた扉の先には……
薄い金髪のポニーテールで、エメラルド色の瞳。そして首にピンク色のバンダナを巻いた、制服姿の色白の少女が……サッカーボールを持って立っていた。
何を言っているかが分からないと思うが……安心してくれ。俺が1番分からない。
「よ! あいのーん! サッカーやろうぜ?」
「……」
オンラインゲームで運営から配られたアイテムを、適当に装備したような格好の少女を前に……俺は何も発することが出来なかったのだ。
──
「えっと……紹介するね? この子は高円寺心美ちゃん。不思議な子だけど、とっても面白いんだよ!」
「……」
いやあの……面白いとかそんなのはどうでもいいから……本当に何者なんだよこの子は。絶対に教室で見たことないんですけど。
そんな疑いの目を彼女に向けていると……その視線に気が付いたのか、ヘラヘラ笑って。
「あ、どもっす、あいのーん。心美ちゃんです。気軽にCCって呼んじゃってもいいからね?」
「……」
何だ……何だコイツは……キャラが濃すぎる……! そう、例えるならまるで……!
「ソースを一気飲みしている気分だ……」
「ふふーん。やっぱあいのーんは面白いねぇ!」
「いや絶対思ってないだろ!?」
そんな会話を続けていると……「ふふっ!」っとヒナノが笑い出した。それは久しぶりに見た……彼女の笑顔だった。
「あはははっ! シュン君もそんなに明るく喋ることあるんだねっ!」
「え、いや……これは違くて!」
すると高円寺も続けて言う。
「ホントホント! 教室の端で1人でニヤニヤマジックをやっている人とは思えないよー?」
「……」
ヒナノによって浄化されていた心が……一瞬にして破壊された。つーか何でバレてんだよ。俺の正体を必死に隠している努力は無駄だったの?
イラッとした俺は高円寺を睨み付ける……
「ひっ! さ、サーセン!」
「それはビビるのか……」
というか本当に何者なんだ? 気になった俺は、おふざけ無しで正体を聞いてみた。
「あの……高円寺? だっけ。本当に誰なんだ?」
そしたら……
「だから言ってるじゃんかー。ウチはあいのーんと同じクラスの生徒だってー」
「いや、君みたいな人は見たことないって」
「まぁーウチ、あんまり学校行ってないからね」
「えっ? もしかして病気なのか?」
俺がそう聞くと、高円寺は前に……後ろにステップをしだした。
「……」
「……は?」
「だからー。違うってこと」
「えっ? …………いや伝わるかぁ!!」
違う→首を振る→格ゲーのレバーで再現→前後にステップってことだろう……いやいや、このボケに気付く方が頭おかしいって。
それで分かってくれたのが嬉しいのか、高円寺はケラケラ笑いつつ、学校にあまり来ない理由を語った。
「だってー毎日行くのなんてダルいしさー。だからウチは、進級出来るギリギリのラインを狙って登校してるんだよ? 賢いでしょ?」
「……マジかコイツ」
そんなことある? いや普通考え付いたとしても、やろうと思うか……!?
「それでー。普通に欠席するよりは、ホントに一瞬だけ顔を出して早退か、午後から遅刻して来る方がめっちゃお得でさー」
「いや、そんな詳しく聞いてないって……」
「まー。文化祭とか、修学旅行とか。楽しそうなモノはちゃーんと来るけどねー?」
「そう……」
何か……疲れた。会話でこんなに疲れたの初めてなんだけど……というか忘れてたけど。さっき言ってたことを詳しく聞かないと。
力を振り絞って、俺は高円寺に尋ねた。
「……それより高円寺。本当にお前がアイツらを辞めさせたのか?」
すると、少しだけ真剣な顔付きになった高円寺は。
「そうだねー。『辞めさせた』というよりは……あの2人がイケないことをやってたから、辞めさせてあげる手伝いをしてあげただけなんだ」
そう答えた。手伝い……? ますます分からない。
「詳しく教えてくれないか?」
「いいよー? いいけど……」
そう言いつつ高円寺はヒナノに近付いて。
「ヒナヒナにはすこーし刺激が強い話かも。だから聞きたくないと思うから、耳を塞いでいるのをオススメするよ?」
「あっ、うん。分かった!」
そう言われたヒナノは、キュッと自分の耳を塞いだ。本当にこの子は素直で可愛いな……
「よし、あいのーん。今ならエロいこと言い放題だよ!!! さぁ!!!」
「…………は?」
「ひゃー! ごめんって!!」




